外国人の方が日本で罪を犯してしまい,有罪の判決を受けてしまった場合にはどうなるのでしょうか。また,その家族に何か影響はあるのでしょうか。
在留資格や,どんな判決を受けるのかによって,扱いが異なってきますので,よくある質問について解説します。
このページの目次
在留資格別の区別
有罪の判決を受けた方が外国人であった場合,まずは,在留資格によって強制送還されるのかどうかが変わってきます。
大きく分けると,①「日本人の配偶者等,永住者,永住者の配偶者等,定住者」の在留資格と,②それ以外の在留資格(特別永住者を除く)があります。
①の在留資格の方が,②の在留資格よりも日本に残れる場合が多くなっています。
例えば,窃盗罪(万引き)等で有罪の判決を受けた場合,①の在留資格の方は1年を超える懲役刑の実刑判決でなければ強制送還されませんが,②の在留資格の方は執行猶予付きの判決であっても強制送還されてしまいます。
罪名別の区別
在留資格の他に,どのような罪名で有罪判決を受けるのかによって,強制送還されるのかどうかが変わります。
日本の法律は,薬物法関連の違反や出入国管理法違反(不法滞在,不法入国等)に対しては特に厳しい態度をとっており,これらについては,軽い刑であっても有罪の判決を受けただけで強制送還される可能性があります。一方,交通事故(自動車過失運転致傷等)のような場合には,実刑判決とならない限り強制送還されないということもあります。
なお,よくある勘違いとして,スピード違反や駐車禁止などの交通違反(青キップ)の場合には,有罪の判決を受けているわけではありませんので,このような交通違反で強制送還されてしまうことはありません。ただし,強制送還されないとしても,その後の在留資格の延長の手続きであるとか,永住許可の申請の時にはマイナスの事情となってしまうことがあります。当たり前のことですが,自分のためにも日本の交通ルールを守って生活することが大切です。
判決の内容の区別
有罪の判決の場合には,罰金刑,執行猶予付き判決,実刑と,いくつか刑のパターンがあります。
売春防止法違反や出入国管理法違反の場合には,どのような刑であっても強制送還されてしまうのですが,罪名によってはそうではないことがあります。
同じ罪名で有罪判決だったとしても,強制送還される場合とされない場合があるということです。
最も代表的な例でいうと,窃盗罪があります。
上記の①の在留資格の方の場合,
・罰金,執行猶予付きの判決,1年以内の実刑⇒日本に残れる
・1年を超える実刑⇒強制送還
となり,②の在留資格の場合,
・罰金⇒日本に残れる
・執行猶予付きの判決,実刑⇒強制送還
となります。
有罪判決と強制送還の関係
今回紹介した例は,有罪の判決を受けた場合と強制送還されるのかどうかについて,質問の多い代表的なものを上げました。このほかにも,在留資格/罪名/判決の内容によって,さまざまなバリエーションが考えられます。
ここで上げた例以外に,「これって強制送還されるのだろうか」と不安のある方は早めに専門の弁護士にご相談ください。在留資格によっては心配しなくてよい場合もありますし,早期に対応して適切な弁護活動ができることで,日本に在留し続ける道が開けることもあります。
家族に影響はあるのか
家族の誰かが有罪の判決を受けた場合,外国人の家族の在留には何か影響があるのでしょうか。
基本的には,自分自身が有罪の判決を受けない限り,影響はありません。家族に前科があるからと言って在留期間の延長が認められなかったり,永住許可が得られないということはありません。
気を付けるべきなのは,「家族滞在」の在留資格の方です。家族滞在の在留資格で日本に在留している場合,例えば就労系の在留資格によって日本に在留している家族が有罪の判決を受けて強制送還されてしまった場合には,家族滞在の方も日本に在留し続けることができなくなります。この場合には一旦日本から出国するか,別の在留資格を取得する必要があります。