このページでは,経営・管理の在留資格で日本に入国する際の,上陸許可基準について解説します。
経営・管理は,日本で事業を経営したり管理業務につく場合に認められる在留資格です。多くの企業や事業主さんにとって,経営・管理で入国する外国人の方には,即戦力として働いてもらう事を期待されていると思います。そのため,外国人の方が入国審査で引っかかってしまうと,事業にも打撃が出かねません。
経営者や,事業の管理部門を任せるために外国人を招聘される際には,外国人の方ともコミュニケーションをよく取った上で,入念に準備をしておきましょう。
このページの目次
経営・管理の入国審査
経営・管理の在留資格で日本に入国しようとする外国人の方は,日本に到着した空港又は港で,「上陸審査」を受けなければなりません。
上陸審査とは,
①在留資格に該当する活動を行うと認められること
②上陸許可基準に適合すること
③パスポートや査証が偽造されたものではないことや上陸拒否事由がないこと
を審査するものです。
「①と②は何が違うの?」と思われるかもしれませんが,
①は「外国人が日本で行うとする活動そのものに対する審査
②はその外国人を日本で活動させていいかどうかという審査
と言い換えてもよいかもしれません。
ですので,経営・管理の在留資格で入国する外国人の方に対しては,
①経営・管理の在留資格に該当する活動か
②経営・管理の在留資格で入国する方として,活動させて良い人か
という点を審査することになります。
なお,経営・管理の在留資格該当性についてはこちらのページでも解説しています。
また,出入国管理局のHPでは,在留資格基準について公表している文書もあります。
出入国管理局HP:外国人経営者の在留資格基準の明確化について
経営・管理の上陸許可基準
経営・管理の上陸許可基準は,「出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の基準を定める省令」という政令で定められています。
申請人が次のいずれにも該当していること。
一 申請に係る事業を営むための事業所が本邦に存在すること。ただし、当該事業が開始されていない場合にあっては、当該事業を営むための事業所として使用する施設が本邦に確保されていること。
二 申請に係る事業の規模が次のいずれかに該当していること。
イ その経営又は管理に従事する者以外に本邦に居住する二人以上の常勤の職員(法別表第一の上欄の在留資格をもって在留する者を除く。)が従事して営まれるものであること。
ロ 資本金の額又は出資の総額が五百万円以上であること。
ハ イ又はロに準ずる規模であると認められるものであること。
三 申請人が事業の管理に従事しようとする場合は、事業の経営又は管理について三年以上の経験(大学院において経営又は管理に係る科目を専攻した期間を含む。)を有し、かつ、日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること。
経営・管理の上陸審査のポイント
政令にある経営・管理の上陸許可基準について,入管の内部の審査要領などからさらにポイントを見ていきます。
一 事業所が日本国内にあることについて
事業所が日本にあるというためには,経済活動を行うための場所が,継続して存在していなければなりません。
賃借物件で全く問題はありませんが,住居用の物件であったり,他人の名義(事業を行う個人や法人以外の名義)で借りたものでは「事業所がある」とは認められないことがあります。
また,経済活動の拠点となっている場所でなければなりませんので,電話やパソコン,OA機器等,事業を行うために必要な最低限の什器も整っていなければなりません。
いわゆる「バーチャルオフィス」という形態では,「事業所」と認められない可能性があります。
最近,「シェアオフィス」で事業を立ち上げる方もいらっしゃいます。その場合,事業のための設備に加えて,他の利用者との間で利用空間が区別されているかどうか等と言った点から,事業所として認められるかどうかが審査されます。
二 事業の規模について
事業の規模については,イ,ロ,ハの基準のどれか一つを満たしていればOKということになります。
常勤の職員といえるためには,その事業について週5日以上,30時間以上の労働をしていなければなりません。パートタイム労働やアルバイト勤務では常勤と言えません。
資本金については,お金の出どころはどこであっても構いませんが,申請の際には出入国管理局から説明を求められる可能性があります。
三 管理業務の経験,報酬額について
事業の管理の業務につく場合には,相応の経験が求められます。
冒頭でも書いた通り,経営・管理の外国人の方に対しては即戦力であることが求められていることから,「全く経験のない人を呼んでも仕方ない」ということです。
まとめ
外国人経営者,管理者として,多角的な知見を事業に取り入れたいという方も多くいらっしゃると思います。
入国の手続きで余計な時間をとられてしまうことがないよう,手続に不明点のある方は事前に弁護士などとよく相談しておきましょう。