特別永住者に対する強制送還の手続きとは

事例

特別永住者であるAさんは、スーパーで買い物をしている際、ふと魔が差してしまい、商品を万引きしてしまいました。
しかし、Aさんがスーパーを出ようとした瞬間、後ろから保安員の人に声をかけられ、万引きを指摘されたので、Aさんは認めるしかありませんでした。
Aさんは、半年前も同じような万引きをした結果、罰金を支払っています。
Aさんはこの後日本に残ることができるのでしょうか。

解説

1 Aさんに予想される刑罰

窃盗罪は刑法235条に定めがある罪で、その法定刑は10年以下の懲役又は50万円以下の罰金となっています。
10年以下と極めて重い罪になっていますが、これは被害額によって法定刑の区分がないからです。1000円から1万円位の万引きであれば、10年の懲役等を受けることは通常
考えられません。

窃盗罪の具体的な刑罰を決める際には、①被害額がいくらであるか②どのような目的で盗んだか③被害回復がなされているか④何回目の検挙であるかが大きな考慮要素となります。
①まず被害額ですが、これは単純に多ければ多いほど重くなるということになります。ただ、1000円と1万円で比較すると1万円のほうが10倍悪いという単純なものではありません。
②目的ですが、自分で使用する目的などが通常だと思われますが、転売目的や組織的な窃盗だと重く見られます。
③窃盗罪は財産に関する犯罪です。ですので、財産的な補填が被害者になされているかどうかも重要です。
④最後に、万引きのような事件の場合これが大きな問題となってくるのですが、何回目の検挙であるかも重要です。いくら被害額が少なく、被害回復がなされていたとしても、何度も何度も
検挙されているような状況では、処分を軽減することにも限度が生じます。一般的な感覚の通りですが、通常は1回目より2回目が、2回目より3回目が、3回目より4回目が重い処分となります。
また、前回と今回の間隔(何年程度空いているか)も重要です。これがあまりに近いということになると、常習性が疑われて、より重い処分となります。

そこでAさんの刑事罰ですが、1年前に罰金を支払っているということは、今回は罰金では済まず、裁判を受けることになる可能性が高いと言えます。
ただ、すぐに刑務所に行く実刑判決ではなく、執行猶予付きの判決となることが予想されます。

窃盗罪に対する弁護についてはこちらのページでも解説しています。

事件別:財産:窃盗

2 特別永住者とは

特別永住者とは「日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法」(入管特例法)という法律に基づいて日本に在留する外国人です。
第二次世界大戦中、日本国民として扱われていた在日朝鮮、韓国、台湾人らについて、戦後もその永住を許可するとともに、すでに日本国との関係性が深いことからその子孫らにも永住を許可する制度です。
ただ、単なる永住許可とこの特別永住許可には大きな違いがあります。
たとえば、永住許可には法務大臣の裁量がありますが、特別永住許可は一定の身分に基づき与えられるものですから、出入国在留管理庁長官の許可は必要であるものの、その許可の際に裁量はありません。
また、在留カードの携帯義務などもありません。

通常の永住者についてはこちらで解説をしています。

永住者ビザ(永住許可)

3 退去強制

特別永住者の場合、退去強制事由も限定されています。入管特例法22条に退去強制中が定められていますが
1号 内乱・外患に関する罪で実刑になった者
2号 国交に関する罪で禁錮以上の刑に処せられた者
3号 外国厳守等に対する犯罪行為で禁錮以上の刑に処せられ、日本国の外交上重大な利益が害されたもの
4号 無期又は7年を超える懲役又は禁錮に処せえられ、日本国の外交上重大な利益が害されたもの
このように、特別永住者の退去強制は、日本国の存立や日本の外交に影響を与えるものに限定されています。

Aさんの場合、単なる万引き事件であり、執行猶予事件ですから退去強制事由には該当しません。
ただ、仮にAさんが別表第1の資格に基づいて在留したような場合であれば、窃盗による禁錮以上の判決(執行猶予付きも含む)は退去強制事由に該当してしまいます。

今回のAさんの場合には退去強制されることもありませんし、在留ができなくなることはありません。
ただ、刑事事件としては次に再犯をしてしまうと実刑の判決となりますから、そうならないように今の内から再犯に及ばない具体的な方法を検討しておく必要があります。

在留資格と刑事事件でお困りのこと、心配なことがある方は弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

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