名誉毀損罪で逮捕された場合,ビザの更新ができなくなる?

事案

外国籍のAさんは,技術・人文知識・国際業務の在留資格で日本に在留していました。
Aさんはいつも行く飲食店の接客態度に腹が立ってしまい,クチコミサイトでその飲食店の誹謗中傷を書き込んでしまいました。
その結果,Aさんは警視庁麹町警察署名誉毀損罪として逮捕されてしまいました。

Aさんの家族はその後の在留資格がどのようになるか不安に思い,弁護士に相談することにしました。

名誉毀損罪で逮捕されたときの弁護活動

名誉毀損罪は刑法の第34章に定められている犯罪で,刑法230条に該当する犯罪です。
名誉毀損罪に対しては3年以下の懲役又は50万円以下の罰金が定められています。

Aさんの事例のようにインターネット上で誹謗中傷をする行為は、侮辱罪や名誉毀損罪に該当する可能性があります。また、個人に対してのみならず、店舗や事業者(会社など)に対して誹謗中傷をした場合、例えば「あそこの店では安物の肉をA5ランクと偽って出している」等といったデマを流した場合、信用毀損罪偽計業務妨害罪という犯罪に該当する可能性もあります。

たとえ憂さ晴らし程度のつもりでインターネットに書き込んだとしても、名誉毀損罪や侮辱罪として被害届を出された場合には逮捕されてしまう可能性が十分にあります。
初犯の場合であっても、名誉毀損罪に対しては罰金が科されるかもしれないのみならず、昨今の誹謗中傷が社会問題化していることも考慮すると、いきなり裁判にかけられて懲役刑が科されてしまう可能性もあります。

外国人の方の場合、1年を超える懲役刑が科された場合には、上陸拒否事由に該当してしまいます。つまり、一時帰国したあと、改めて日本に再入国しようとしても再入国を拒否されることがあるのです。

名誉毀損罪で逮捕されてしまったという場合には、速やかに刑事事件、外国人事件に強い弁護士に相談する必要があります。
早期の身柄解放に向けた活動と、被害者がいる場合には示談交渉、取り調べへのアドバイスなど、弁護士からのサポート・助言を受けるべき場面は多岐にわたります。

以下では、名誉毀損罪で逮捕されてしまった場合のビザへの影響も解説します。

在留期間の更新への影響は?

永住許可を受けている人でない限り、日本での在留には期間の制限があります。
Aさんも、技術・人文知識・国際業務の在留資格で在留しているようですから、1年、3年、5年のいずれかの期間を指定されているものと思われます。

名誉毀損罪で逮捕されてしまったあと、さらに日本での生活を続けようと思った場合には、在留期間の更新申請をしなければなりません。そこで、名誉毀損罪による逮捕という事実はどのように影響するでしょうか。

まず、逮捕されたという事実自体では、在留期間の更新に大きな影響を与えることは少ないでしょう。逮捕されただけであれば推定無罪の原則が働きますし、犯罪歴や前科がついているというわけでもありません。

しかし、罰金を払った場合裁判で執行猶予付きの懲役刑を言い渡されたという場合には注意が必要です。これらはどちらも前科であり、日本での犯罪歴となります。

在留期間の更新許可を受けるためには、ビザを更新するのが相当であること、つまり、「この人は日本に居続けてもらっても大丈夫だな/日本にいても問題はないな」と思えなければなりません。
前科があるということは、日本で犯罪歴があるということであり、在留状況が悪い・素行が不良であるという判断をされてしまう可能性が高いです。

一度前科がついてしまうと、日本でそれを取り消すことはできません。ですから、前科がつかないようにするというのは非常に重要になるのです。

在留期間の更新を確実なものにするために、逮捕されたあとすぐに対応をして前科がついてしまわないための活動を依頼する必要があります。

退去強制とは

日本から外国人の方を強制送還する手続きのことを,正式には「退去強制」と言います。

退去強制手続きは主に

  1. 理由となる事実の発生(例:オーバーステイ,不法就労,虚偽の申請,犯罪歴などなど)
  2. 入国警備員による調査
  3. 入国審査官による審査
  4. (場合によっては)法務大臣による裁決

という4つの段階を踏まえて進められていくことになります。

退去強制の理由になる事実

入管法上,刑事事件と関連して強制送還される場合というのは,次のような場合です。

  • 一定の入管法によって処罰された場合
  • 一定の旅券法に違反して懲役,禁錮刑に処せられた場合(資格外活動の場合,罰金だけでもアウト!)
  • 麻薬取締法,覚醒剤取締法,大麻取締法などの薬物事件で有罪判決を受けた場合
  • 別表1の在留資格の人が一定の刑法犯で懲役,禁錮刑に処せられた場合(執行猶予がついてもアウト!)
  • どの法律違反であっても,「1年を超える実刑判決」を受けた場合

入管法の別表1に該当する在留資格とは,こちらのページで列挙されています

在留資格の一覧についてはこちらです。

在留資格の種類

Aさんの事例で言うと,名誉毀損で逮捕されたことによって直ちに強制送還されるというわけではありませんが,その後の裁判の結果次第では強制送還の手続きが始まる可能性はあります。

まとめ

Aさんの事例のように名誉毀損で逮捕されてしまった場合のビザの影響としては

・前科がついてしまった場合には在留期間の更新が認められない可能性がある

・1年を超える懲役刑だった場合には強制送還されてしまう可能性がある

というものがあります。

いずれについても、前科がつかないように逮捕後早期に対応することが非常に重要です。

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