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在留期間の延長が認められなくなる!? 特別措置の終了について
「新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響による帰国困難者に対する 在留資格上の特例措置の終了」について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
コロナ禍の拡大により、在留期限が経過した後も帰国できない等の事情に鑑みて、新型コロナウイルス感染症による帰国困難者に対する特例措置が取られてきました。
出国者が増加している状況等を踏まえ、特例的な在留を認めている外国人の方について、現に有する在留資格の在留期限に応じ、以下のとおり帰国に向けた措置がなされてきましたが、令和4年11月1日を持って、コロナウイルス感染症の影響によるすべての特例措置が全て終了しましたので、ここで在留期限ごとに特例措置終了について解説いたします。
① 在留期限が令和4年6月29日までの方
以下のとおり在留期間の更新を許可します。 a)「特定活動(6か月)」等で在留している方:「特定活動(4か月)」 b)「短期滞在(90日)」で在留している方 :「短期滞在(90日)」 注1)現在許可されている範囲において引き続き就労できます。 注2)次回更新時には「特定活動(4か月)」又は「短期滞在(90日)」を「今回限り」として許可します。
現在、この在留期限における特例措置は全て終了し、特例による在留更新に該当する方はいません。
② 在留期限が令和6月30日以降の方
「今回限り」として、以下のとおり在留期間の更新を許可します。 a)「特定活動(6か月)」等で在留している方:「特定活動(4か月)」 b)「短期滞在(90日)」で在留している方 :「短期滞在(90日)」 注1)現在許可されている範囲において引き続き就労できます。 注2)帰国困難を理由とする在留許可は今回限りとなります。今回許可された期間内に帰国準備を進めてください。 注3)上記の許可に係る在留期間を満了した場合には、在留期間の更新は認められません。
現在、この在留期限における特例措置は全て終了し、特例による在留更新に該当する方はいません。
③ 新たに帰国困難を理由として在留を希望する方
令和4年11月1日までに現に有する在留資格の在留期限が満了する場合に限り、上記②の「今回限り」の措置 を認めます。 注)「特定活動(雇用維持支援)」については最大1年(※「今回限り」)を許可します。
現在、この在留期限における特例措置は全て終了し、特例措置による在留更新に該当する方はいません。
④ 在留期限が令和4年11月2日以降の方
コロナ帰国困難を理由とした「特定活動」又は「短期滞在」への変更は認められません。
(令和4年11月2日以降に在留期限を迎える方はコロナ特例措置の対象外です)
①~④に該当するすべての在留期限において、新型コロナによる特例措置が終了したことで、
これらの期限以後の新型コロナウイルスの影響による在留期限の延長は認められません。
在留期間更新の際は、オーバーステイにならないよう注意しましょう。
参考;「新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響による帰国困難者に対する在留資格上の特例措置の終了について」 (出入国在留管理局HP)
裁判中に在留期間が切れそうになったらどうしたらいいのか
(次の事例はフィクションです)
Aさんは,日本の企業に勤める外国籍の人で,「技術,人文知識・国際業務」の在留資格で「5年」の在留期間をもらっていました。
ある日,Aさんは会社のお金を横領した疑いをもたれ,警察の取調べを受けました。
Aさんは身に覚えがなかったため否認していましたが,検察官はAさんを「業務上横領罪」で在宅起訴しました。
この裁判期間中に,Aさんの在留期間の更新の期限が迫ってきたため,Aさんは在留期間について弁護士と相談することにしました。
在留期間の更新申請
Aさんのように,「永住者」の在留資格以外の外国人の人が,在留期間の後も日本で生活することを希望する場合,在留期間の更新申請をしなければなりません。
在留期間の更新申請は,最寄りの入管(出張所でも手続きができる場合があります)に,「在留期間更新許可申請書」を提出して,審査を受けます。
最新の統計によると,在留期間更新申請については,申請をしてから審査が終わるまでにかかる期間は,平均して約20日程度です(2022年1月1日~2022年3月31日までに処理された申請に関する統計001371836.pdf (moj.go.jp))。
在留期間の更新申請の時に審査の対象となるのは,
- 在留資格に適合した活動をしているか
- 在留期間を延長(更新)することが適当か(ふさわしいか)
という点になります。
冒頭の事例にあったAさんのような場面でも,日本での在留を引き続き希望するのであれば,
- 「技術,人文知識・国際業務」の在留資格に適合する活動(仕事)を続けているか
- 在留期間を延長するにふさわしい人物か(具体的には,納税をしているか,社会保険料を支払っているか,素行不良でないか,入管法で必要とされる手続きをきちんと果たしているか)
といった点が審査の対象となります。
裁判中でも在留期間を延長できるのか
通常,日本の刑事裁判は始まってから第一審の判決が出るまでに2か月程度かかります。
Aさんの事件のように「身に覚えがない事件だ」として否認して争っている場合だと,さらに審理のために時間がかかり,判決が出るまでに6か月,場合によっては1年以上の期間がかかることもあります。
そうなると,Aさんのように,裁判をしている間に在留期間を迎えてしまうという方もいるかもしれません。
裁判期間中であっても在留期間の更新,延長は認められるのでしょうか。
まず,多くの方が「裁判になってしまったら在留資格も取り消されたり強制送還されてしまうのではないか」と不安に思われるかもしれません。
しかし,入管法上,逮捕されたり起訴されたりしただけで,在留資格が取り消されたり強制送還の対象となることは極めて例外的です。Aさんの事例のような業務上横領罪といった財産犯では,判決が確定しない限りは強制送還の対象になりません。第一審の判決が出るまでの間は,無罪の推定がありますから,裁判を受けているというだけで素行が悪いと判断することもできないのです。
在留資格が取り消されたり強制送還の対象となるのではないかと不安に感じている方は,早めに弁護士などの専門家に相談しましょう。
Aさんも,業務上横領罪が疑われている裁判が終わるまでは,在留資格が取り消されたり強制送還の対象とはなりませんから,在留期間の更新が認められる可能性も十分にあります。
ただし,このような事例で注意しなければならないのは,
- 在留資格に適合した活動を続けているかどうか
という点です。
Aさんの事例のように,職場内で疑われた事件だと,刑事裁判の判決が出る前に懲戒免職となったり,雇用契約が解除されてしまったりしている可能性もあります。職を失ってしまった場合,在留資格に適合した活動を続けていないとして,在留期間の更新が認められなくなってしまいます。
そのような場合には,元の在留資格のままで期間の更新申請をするのではなく,裁判を受けることや転職活動をすることを目的とした,「特定活動」の在留資格へ資格を変更することを考えなければなりません。
在留期間内に裁判を受けるとして,裁判を受けること自体は更新申請手続きに影響するものではありませんが,元々の在留資格の内容や事件の内容によっては,単に期間の更新申請するのではなく,資格の変更申請をした方が良いという場合があります。
在留期間内であっても裁判との関係で,在留資格が取り消されたり更新が不許可になるのではないかとご不安な方は,一度弁護士などの専門家に相談しておくとよいでしょう。
「日本人の配偶者等」の在留期間が短くなったらどうする
現在,「日本人の配偶者等」の在留資格をもって日本に在留している外国人の方が多くいます。
「短期滞在」(旅行者など)の在留資格で入国する方を除くと,「定住者」についで数の多い在留資格です。
この「日本人の配偶者等」の在留資格も,「永住者」と違って在留期間が設定されており,永続的な日本での在留を希望する場合には都度,更新をしなければなりません。
「日本に滞在できる期間」という点で,在留期間の定めには意味があるものですが,実際にはさらに重要になる場面があります。
また,「思っていたよりも短い期間しか更新が認められなかった」という場合もあります。
在留期間の長さが重要になる場合
在留期間の長さが重要になる場合,それは永住許可申請をしようとする場合です。
永住許可を受ける場合に必要な条件の中に,次のようなものがあります。
・入管法施行規則に規定されている最長の在留期間をもって在留していること
在留期間について,「最長の期間が認められている場合でなければ永住許可をしないよ」ということです。
そして,当面の期間はこの「最長の在留期間」とは「3年」とされています。
「日本人の配偶者等」の在留資格の場合,在留期間については
5年,3年,1年,6か月
のいずれかが付与されることになっています。
そのため,3年の在留期間となるのか,1年の在留期間となるのかという点は,永住許可申請をすることができるかどうかについて非常に大きな差となるのです。
どのようにして在留期間が決まるのか
「日本人の配偶者等」の在留資格に該当することを証明できたとして,実際の資格付与の際には具体的な在留期間が決定されます。
この「在留期間」の決め方は,個別の在留資格によって異なります。
「日本人の配偶者等」の場合についてみると,在留資格を取得した最初のタイミングだと1年,その後の更新の際に3年,5年と延長が認められる場合が多くあります。
特に,実態を伴った婚姻生活が継続していることが,長期間の在留期間が認められるためには重要になります。「日本人の配偶者等」の在留資格を最初に取得した際の在留期間が1年とされるのも,「これから先きちんと実態のある婚姻生活が継続するかどうか」という点がまだ分からない(結婚してその後の生活が安定するかどうか分からない)という点から,「1年」の在留期間とされるのです。
その後,更新を重ねていく中で「日本での婚姻生活が継続している」と認められれば,3年,5年の在留期間が認められることになります。
逆に,全く別居していて夫婦間での交流がなく経済的にも完全に独立している,といった夫婦の場合だと,「実態を伴った婚姻生活が継続していない」として長期の在留期間が認められない場合もあります。
在留期間の更新の際にも,夫婦関係が継続していることをきちんと疎明しておく必要があるでしょう。
高度専門職ビザのメリット!他の就労ビザとはこんなに違う
今回は,「高度専門職」ビザのメリット,特に,他の就労ビザと違うところについて解説をします。
永住許可がもらいやすい,在留期間が長い,家族の在留資格にもメリットがある,という点が代表的なものになります。
ビザの申請,更新,変更,不安なら弁護士に頼みましょう
日本で生活する上で必ず必要なのがパスポートと在留カード。パスポートに関する手続きは,入国の前に自分の国で済んでいると思いますが,在留カードに関する手続きは,日本に来た後は日本国内で,自分でやらなければなりません。
日本に来てから始めて在留カードの手続きをするという方や,在留資格(ビザ)を変更したいと考えている方の中には,どこでどんな手続きをすればいいのか分からない,という方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。 (さらに…)
ビザの更新,期限が切れたら?!更新の申請の特例
ビザの有効期限がいつまでか,きちんと管理されていますか?
雇用主の方は,従業員の在留期間がいつまでか,把握されていますか?
外国人の方が日本で生活する上で最も大事なビザ(在留資格)には,そのほとんどに,一定の期限が設けられています。
例外として「永住許可」の場合には,ビザに期限はありませんので,7年おきに「在留カード」の更新だけすれば大丈夫です。
ですが,それ以外のビザの方は,期限ごとに「在留期間の更新申請」をしなければなりません。この手続きをもしも忘れてしまうと,どうなるのでしょうか。
在留期間の延長を求めて争った裁判事例 東京地方裁判所その1
このページでは,在留期間の延長を求めて争った裁判事例について,判決文を解説します。
今回の事例は,令和2年2月27日に東京地方裁判所で判決が言い渡された事例です。
この事例では,「定住者」の在留資格を付与されていた外国籍のAさんが,
①スピード違反により懲役3月,執行猶予2年の有罪判決を受け,さらにその猶予期間中に
②無免許運転により懲役5月の有罪判決を受けて,日本の刑務所で服役することになりました。
Aさんは,服役する直前に,在留期間の更新申請をしていましたが,この申請は不許可となり,Aさんは服役中に不法残留(オーバーステイ)の状態となってしまいました。
Aさんは,在留期間の更新申請の不許可処分に対して取り消しを求めて東京地方裁判所に訴えを起こしました。
同居人が不法滞在?逮捕されるのか?
不法滞在の外国人を日本で住まわせていたとして,会社役員の外国人の方が逮捕されるという報道がありました。
2020年11月20日の報道
このケースでは,逮捕された方のシェアハウスに住まわせていたとされていますが,もしも同居する外国人の方が不法残留であった場合,同居している方はどうなるのでしょうか。
この報道の事例を参考に指定解説します。
不法滞在とは?
そもそも,不法滞在とは一般的に使われている用語で,法律上は「不法残留」と言われているものです。「オーバーステイ」と言われていることもあります。
不法残留とは,一旦は適法に日本に上陸して在留していたものの,在留資格を取り消された方,在留期間を更新しないまま在留期間を満了した方が,その他法律上日本に在留するための手続きをとらないで在留している状態のことをいいます。
不法残留に対しては,3年以下の懲役又は300万円以下の罰金が科されることとされています(出入国管理法70条1項柱書)。
不法残留であることが通報や出入国管理局などを通じて警察に発覚すると,多くの場合に当該外国人の方は逮捕されることがあります。
同居していた人も罪に問われる?
不法残留してしまったご本人は,出入国管理法違反(不法残留)に問われることになります。
では,その周りの方や報道にあるように部屋を提供して住まわせていた方も,共犯として扱われるのでしょうか。
ここで一旦,刑法の基本的な考え方を解説します。
刑法では,他人が実行した犯罪であっても一緒に企てて犯罪を遂行した場合や,他人に犯罪の方法を教えたり道具を提供して容易にしたりすると,共同正犯や教唆犯,幇助犯として刑罰が科される可能性があります。報道からは詳細が分かりませんが,今回逮捕されてしまった会社役員の方は,不法残留の共同正犯,もしくは幇助犯として逮捕されてしまったようです。また,逮捕されてしまった方は「不法滞在とは知らなかった」とお話しされているようです。共同正犯も幇助犯も,故意がなければ犯罪は成立しません。ここでいう「故意」とは,「不法残留であることを知っていたこと」を指します。
それでは,不法残留の共同正犯や幇助犯として扱われる場合や過去の事例を見てみます。
他人の不法残留について一緒に責任を負う場合というのは,共同正犯や幇助犯として罪に問える程度の役割をはたしていなければなりません。具体的に他人の不法残留を容易にしたり,その手助けがなければ日本での不法残留ができなかったと言えるような状況が必要です。例えば,偽造したパスポートや在留カード等の身分証をもたせたり,毎月生活費を渡して扶養していた場合等があります。
知人の外国人が不法残留であることを知っていたが出入国管理庁に通報しなかった場合や,不法残留の外国人と一緒に暮らしているだけという場合には,共同正犯や幇助犯とはならない可能性もあります。
同居人の不法残留を幇助したとして起訴されたものの,東京高等裁判所で無罪判決が言い渡されたという事例があります(東京高等裁判所令和元年7月12日判決)。この事例では,起訴された方は,同居人が不法残留であったことは知っていたとしても,一方的に養っていたわけではないし,同居人が不法残留していることを周りや出入国管理庁に対して隠していたものでもないため,不法残留を「容易にした」とまではいえないとして,無罪とされました。
また,共同正犯や幇助犯というのは,上記の様な「故意」がなければ成立しません。他人を雇い入れる場合とは異なり,単なる同居人であれば他人の在留カードを確認する義務まではありません。日常会話などの中で「○○まで有効な在留資格で日本にいる」と聞いていたとすると,それ以上に「不法残留かもしれないな」と疑うような事情がなければ,「知らなかった」という主張が通る可能性もあります。一方で,持っていた在留カードと名前が違う場合や,在留カードやパスポートを持っていないで再発行もしない場合等には,不法残留であることを疑うべき事情となるかもしれません。
☆賃借人として気を付けた方が良いか?
このような報道が出て来ると,不動産賃貸をしているオーナーの方や客付けをされている方は,「外国人には不動産を貸すとリスクがあるのか」と考える方もいらっしゃるかもしれません。
しかし,結論から申し上げますと不法残留の共同正犯や幇助犯となる可能性については,過度に心配する必要はないように思われます。
大切なのは,通常採るべき確認をしたのかどうかです。
賃貸借契約の時点で在留カードを確認する,契約書とは別途誓約書の提出を求める等,各社対応が異なるところではありますが,「これだけやっておけば安心」というものもありません。
ご不安な点のある方は一度お問い合わせください。
まとめ
不法残留の共犯を疑われて逮捕された事例を通して,不法残留の共同正犯や幇助犯について解説してきました。
ご不明点や心配な点がある方は,お気兼ねなくご相談ください。
就労資格証明書の取得手続
このページでは,就労資格証明書について,解説します。
就労資格証明書とは何か
就労資格証明書とは,『既に取得している在留資格の範囲内で日本で働くことができることと,仕事の内容』を証明するものです。
在留資格には,いわゆる「就労ビザ」と呼ばれるものがあり,特定の仕事をするために日本に在留する際に認められるものがあります。
しかし,就労ビザは,「経営管理」や「教授」「教育」など,種類だけ聞いても「この在留資格でこの仕事に就くことはできるのか?」と判断しにくいものもあります。特に,「技術・人文知識・国際業務」は,パッと見ただけではどんな仕事を含むのか判断しづらく,「これは人文知識の在留資格で働ける仕事なのか」と悩むことも多くあります。
せっかく就労の在留資格が取得できても,それを使って日本で働けるのかどうか分からないというのでは,在留資格を申請する意味がありません。
そこで,「就労資格証明書」を取得することによって,取得した在留資格によって働くことが出来る内容を証明することが出来るのです。
どのように申請したらよいか
就労資格証明書の申請には,次の書類を準備します。
・在留カード,旅券を提示(提示できないときは理由書を提出する)
・申請手数料1200円(窓口で払う)
就労資格証明書の申請は,各地方出入国管理局の窓口で,平日・日中の時間帯に申請書を提出します。
申請から証明書が発行されるまでにかかる期間は,通常その日のうちに発行されますが,転職する場合だと1~3か月程度かかることもあります。
特に,転職にあたって就労資格証明書を申請する場合には期間の余裕を持って申請手続きを行いましょう。
どんな時に使えるのか
就労資格証明書を活用すべき場合とは,上記で触れたように,就労ビザで日本に在留している外国人の方が転職しようとする場合です。
日本人の配偶者や永住許可を受けている方は,日本での就労に大きな制限はないので,基本的には就労資格証明書を使うことは少ないかと思います。
日本国内で転職する際,転職後の仕事の内容についての「就労資格証明書」を取得しておくことで,
①転職先に対して適法な在留資格を持っていることを証明できる。
②次回の在留期間の延長の時に手続きが円滑に進む。
というメリットがあります。
もちろん,就労資格証明書がなくても同じ在留資格に適合する範囲内であれば転職するは可能です。
ただ,就労資格証明書を得ておくことによって,在留資格を変更しないままで問題ないことを転職先に示すことで,転職先の会社としても「この人を雇っても不法就労にはならない」と安心することが出来ます。一般の企業でも,仕事の内容が在留資格に適合しているものなのかどうか,判断するのは非常に難しい場合があります(特に,技術・人文知識・国際業務の在留資格。就労系の在留資格として最も取得されているものですが,その範囲については漠然としています)。
また,通常,転職後の在留期間の延長の審査には追加の書類が多数必要になることに加えて,審査にも時間がかかります。在留期間の延長審査をしている間に,在留期間の満了を迎えてしまう,ということも考えられます。
事前に就労資格証明書を取得しておけば,在留期間の延長申請の時に慌てなくてすみます。
更に,万が一,就労資格証明書が交付さなかった場合には,再度転職活動を続けるということもできます。
もしも,転職した後に在留期間の延長申請をして,「転職後の仕事では在留資格が認められない」ということが分かったとすると,延長申請が認められないだけではなく,在留資格が特定活動へと変更され,日本からの出国準備をしなければならなくなります。そうなると,転職先での仕事を続けることはできなくなってしまいますし,仕事を続けると資格外活動として出入国管理法違反の刑罰にも問われかねません。
そうなる前に就労資格証明書を申請して,転職後の仕事も在留資格に適合するかどうか一度審査を受けておくことで,余裕を持った転職活動ができることになります。
まとめ
就労資格証明書は,①のような事業者にとってのメリット,②のような外国人側にとってのメリットの両方のあるものですが,あまり活用されていないようです。
中途採用やヘッドハンティング等で外国人の採用を考えている事業主の方,在留資格を変えないままで転職しようと考えている外国人の方は,就労資格証明書の取得,活用を検討されると良いでしょう。
就労資格証明書の取得にあたって,手続上分からないことがある方や,手続の代理をお願いしたいという方は,事前に弁護士にご相談いただくのが良いでしょう。
技術・人文知識・国際業務の在留期間更新
技術・人文知識・国際業務の在留資格をお持ちの方の,在留期間を更新する際の手続きについて解説します。
更新申請のための必要書類
在留期間の更新にあたっては,以下の書類を準備します。
申請書の一部は,勤め先や雇用主が記載する部分があります。更新の手続きを始める前に,早めに記入してもらうようにしましょう。
・写真(縦4cm・横3cm※三か月以内に撮影したもの) 1枚
・在留カードとパスポート(窓口で提示)
・働いている会社や団体の規模(カテゴリー1~4)に応じた必要書類
例 四季報の写し,前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計票
雇用契約書,職務経歴票等
・(勤め先の規模によって)住民税の課税証明書,納税証明書
在留資格の延長の場合には,住民税の課税証明書と納税証明書が必要になります。これらの書類については,多くの場合,市町村役場の窓口で取得できます。
一定の大きさ以上の機関で働いている場合には,課税証明書や納税証明書は取得する必要がありません。
申請窓口と審査にかかる期間
在留期間の延長申請は,各地方にある出入国管理官署に提出します(平日,日中の時間帯に申請に行きましょう)。
通常,審査にかかる時間は2週間から1ヶ月とされていますが,直近のデータによると,審査自体にかかる時間は,平均約17日とされています(令和2年4月から6月期のデータ)。
更新手続きの際の注意点
在留期間の延長にあたっては,次の点について注意して,申請手続きを行う必要があります。
①就労先が適正か,安定しているかどうか
技術・人文知識・国際業務の場合,働いている機関が,労働基準法に違反するようなところでないかどうか,今後も安定して続けられるかどうかが問題になります。
技術・人文知識・国際業務の在留期間を更新する場合,5年の更新が認められることもあります。今後5年先まで続けて働くことが出来るのかどうか,という点は審査の対象になります。
併せて,違法な労働環境ではないことも重要です。賃金が安すぎたり,労働時間が長すぎる等の事情は,労働者側には責任のない事情ですが,そのような環境で働き続けること自体が好ましくないとされるでしょう。
②在留期間中の生活はどうだったか
在留期間の更新を申請する場合,更新するまでの生活がどのようなものだったか,も重要です。特に重要となるのは次の2点です。
・納税義務を果たしているか
・素行の問題がなかったか
納税義務については,所得税,住民税の未納があることや,場合によっては所得税法や地方税法の違反によって処罰されていることが更新の手続で不利な事情になります。
なお,一部の税金については,一時的に払えない方のための猶予制度もあります。お金がないからと放っておくのではなく,使える制度は活用しておきましょう。正規の手続きを経て納税が猶予されている場合には,更新手続きでも資料を提出することで,更新許可を得られることがあります。
また,素行上の問題については,端的に,日本の法律で刑罰を受けなかったかどうかが問題になります。
一部の罪名については,有罪判決を受けたことや一定以上の刑罰を受けることで退去強制(強制送還)となりますが,退去強制されない罪名や刑罰の内容もあります。
よくある例としては,暴行罪や道路交通法違反(スピード違反等)で罰金判決を受けた場合です。この場合には,すぐに退去強制とはなりませんが,在留資格の更新手続きで,素行不良とされ,更新が不許可とされることがあります。
このような罰金を受けたことについては,警察,検察を通じて出入国管理局に報告されているので,更新の時には,包み隠さず正直に述べた上でもう二度という反省の気持ちを示すことが必要です。
③転職していた場合にはどうなるか
当初は技術・人文知識・国際業務の在留資格にあたる仕事をしていた方が,更新前に転職していた場合にはどうなるでしょうか。
この場合,転職先での仕事が「技術・人文知識・国際業務」に当たっていれば在留資格の更新ができます。ただし,転職先での仕事が「技術・人文知識・国際業務」に当たることの資料を提出しなければなりません。審査にかかる時間も,通常よりも長くかかることが予想されます。手続を円滑にするために,就労資格証明書の交付を受けておくことも可能です。
一方,転職先での仕事が「技術・人文知識・国際業務」に該当していない場合には,すぐに在留資格の変更が必要です。変更の手続きを怠っていると,資格外活動として入管法違反の刑罰に問われる可能性もあります。
更新の手続はお早めに
在留期間の更新申請は,期間満了の約3か月前から受理されます。更新の際に追加で書類が必要になる,審査に時間がかかってしまうというのは,よくあることです。
申請自体にも時間がかかるということも予定に組み込んで,早め早めに申請手続きは行うことを心がけましょう。
在留資格の更新について分からないこと,不安なことがあるという方は,ご遠慮なくご相談ください。
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