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オーバーステイになった後もビザを取得することができるか?

2022-06-29

(この事例は入管手続きについて解説をするための架空のものであり,実在する地名と事例は必ずしも関係ありません)。

Xさんは留学生として来日し,日本で専門学校を卒業しましたが,留学ビザが切れた後も日本での在留を続け,飲食店でのアルバイトなどをしながら生計を立てていました。

ある時,Xさんは路上て職務質問を受け,警察官に在留カードを確認され,オーバーステイとなっていることが明らかになったため現行犯人逮捕されてしまいました。

Xさんは,改めて日本でビザを取り直して在留を続けたいと思っています。

オーバーステイ後の資格の変更/取得

Xさんのように,ときたま,「元々在留資格をもっていてオーバーステイになってしまったけれども,新しく在留資格を取得することができるか」という相談があります。

これについて結論として,オーバーステイとなった後で在留資格を取得することは原則としてできません

在留資格というのは,日本に上陸しようとする際に,又は,日本国内で外国国籍として生まれた場合に取得するものであり,日本で在留している間に一度ビザが切れてしまうと,日本にいながら再度ビザを取得するという手続きはないのです。

「在留資格認定証明書」を取得するという手続きがありますが,これは,

①まだ日本にいない人が,日本へ上陸する前にビザがあることを証明する

②日本で別の在留資格をもっている人が,在留資格を変更したり転職したりするときにビザがあることを証明する

というために行うものです。

そのため,一度ビザが切れてしまった人は,在留資格認定証明書を取ることもできません。

同様の理由で,在留資格の変更をすることもできません。

「資格の変更」というのは,有効期間内のビザを変更する,というものです。有効期間が切れてしまっているビザでは,それを別のものに変更するということもできないのです。

Xさんのように,一度オーバーステイとなってしまうと,基本的に,在留資格を新しく取得するということはできないのです。

日本での在留が認められる場合

オーバーステイとなってしまった後,日本での適法な在留が認められる場合として,在留特別許可が出た場合があります。

在留特別許可というのは,本来であれば強制送還の対象となる人であっても,法律で定められている場合に該当する人に対しては,特別に在留を認めることがあるというものです。

  • 永住許可を受けているとき。
  • かつて日本国民として本邦に本籍を有したことがあるとき。
  • 人身取引等により他人の支配下に置かれて本邦に在留するものであるとき。
  • その他法務大臣が特別に在留を許可すべき事情があると認めるとき。

以上のような場合には,法務大臣(もしくは各出入国在留管理局長)が在留特別許可をすることができます。

そして在留特別許可が認められた場合の大半は,一番最後の「その他法務大臣が特別に在留を許可すべき事情があると認めるとき」として許可がなされています。

どのような場合にこの在留特別許可が認められるのかという点について,はっきりとした基準があるわけではないのですが,日本に家族がいるのかどうか,どのような理由で強制送還の対象になっているのか,といった事情を総合的に考慮して決められることになります。

特に,日本人の配偶者がいる,日本人の子供がいて実際に扶養しなければならない,といった事情は,在留特別許可を認める上で大きなプラスになる事情です。

Xさんの事例のように,単に留学生として在留しており,アルバイトなどで生計を立てていたというだけでは,在留特別許可をもらうことは非常に難しいでしょう。

オーバーステイとなってしまった後も日本での在留を続けたいという場合,どんな理由で日本に残りたいのかという点が非常に重要です。理由次第では在留特別許可が認められやすいという場合もありますし,「およそ無理でしょう」という場合もあります。

オーバーステイ,在留特別許可については弁護士にご相談ください。

解決事例 在留特別許可(日本人の配偶者等)が認められた事例

2022-06-13

当所の弁護士が扱った事案について,在留特別許可が認められましたので,その事例を紹介,解説します。

(解説にあたって,ご依頼者様からご了解を頂きましたが,守秘義務の関係上一部,事情を変えて記載しています)

事案

ご依頼者であるXさんは「日本人の配偶者等」としての在留資格を取得後,日本人家族との生活を続けるために永住者の申請を行い,永住者として認められました。

しかし,Xさんは母国にも家族がおり,永住の申請をするときに,母国の家族については何も申告しないまま永住の申請をしてしまいます。

その後,Xさんは入管から呼び出されて調査を受け,永住申請の時に虚偽の申告を行ったとして永住許可を取り消されてしまいました。

ご依頼の経緯

XさんとXさんのご家族は,Xさんの永住許可が取り消されて強制送還されてしまうかもしれない,というご不安から,当事務所にご相談されました。

当事務所東京支部の弁護士が事情を伺ったところ,果たして永住許可が取り消されるほどの重大な事案なのか,また,Xさんの日本に置ける状況を鑑みると,なおも,日本での在留が認められるべき事案ではないかと思われました。

Xさんから正式にご依頼を受けた弁護士が,入管に対して,Xさんに対しては在留特別許可が認められるべきである,と主張していくことにしました。

具体的な弁護活動

Xさんの事案では,弁護士が依頼を受けた段階で既に永住許可が取り消されており,在留特別許可に関する口頭審理が開かれる前の段階でした。

そのため,まずは,Xさんが在留特別許可を求めている事,その理由となる具体的な事情をまとめ,意見書として入管に対して提出しました。

また,口頭審理までの間に,よりXさんの在留が認められやすくなるように状況を整え,その証拠を集めました。

そして,実際の口頭審理の場では弁護士が立ち会い,Xさんがインタビューの答えに困った時には直ぐにアドバイスができるように助言し,場合によっては弁護士がXさんの代わりに説明を行いました。

審理は長時間にわたって行われましたが,その合間の休憩時間などには,審理の流れについて確認し,その場でXさんとの打ち合わせも行いました。

口頭審理の結果

口頭審理から約1か月後に在留特別許可が認められたとの通知がなされました。

Xさんは日本人の配偶者としての地位がありましたので,在留特別許可(日本人の配偶者等,在留期間1年)という形で認められました。

Xさんは日本で家族との生活を続けられることになり,ご家族の方も大変安心されました。

ポイント

退去強制(強制送還)手続きに伴う在留特別許可の審査においては,日本との結びつき,特に,日本での家族関係があるかどうかが非常に重要です。Xさんのケースでは,「日本人の家族がいる」という事情があり,これは在留特別許可を求めるうえで最も有利になる事情ですから,弁護士からの意見書でもこの点を最も前面に押し出して主張を行いました。

口頭審理に先立って,事前に特別審査官との面談も行っており,その際にも許可が認められる見通しや審理を行う前の心証についても開示を受けていたため,特別審査官の審理でも,この点に注意しつつ質問に応じました。

何よりも,Xさんが日本で家族と生活を続けられることになったということが,弁護士としても非常にうれしく思います。

今後も在留資格や強制送還に関する手続きでお困りの方,そのご家族の力になれるよう,事案に取り組んでいきたいと思っております。

永住権が取り消されることもある?永住権を守るためにどうしたらいいか

2022-06-04

このページでは,永住許可が取り消されることがあるのか,取り消されそうになった時にどのように対応すべきなのかについて解説をします。

永住権は取り消される?

「永住者」(永住権)の在留資格は,日本で生活する外国人の方にとって,最も安定した在留資格であって,長期間日本で生活することを考えている方であれば,「できれば永住許可を受けたい」と思う方が多いのではないでしょうか。

「永住者」のメリットとしては

  1. 在留期間が無期限で更新する必要がない
  2. 仕事の制限がない
  3. 結婚したら配偶者は「永住者の配偶者等」という在留資格となり,ほぼ永住者と同じ扱いを得られる

というものがあります。これらのメリットは,他の在留資格における手間やリスクといったものを覆すようなもので,「永住者」が「最も安定した在留資格」と言われる理由でもあります。

ただ,この「永住者」の在留資格であっても,取り消される場合というのがあります。

「永住者」であっても在留資格を取り消される場合としてありうるのは,大きく分けて次のような場合です。

  • 永住許可申請の時に虚偽の申立てをしたり,偽造した文書を提出して永住許可を受けていた場合
  • 日本で犯罪をした事によって,一定の処分や刑罰を受けた場合

虚偽の申立て等をした場合としては,例えば日本で犯罪歴があったのに申告しなかった場合や,仕事場や住所・家族構成について虚偽の申請をした場合,納税や社会保険料の納付に関して文書を偽造して提出していたという場合があります。

また,日本で犯罪をした事によって処分や刑罰を受けた場合,永住者の方であっても,退去強制(強制送還)の手続きが始まることがあります。

永住者であっても退去強制(強制送還)となってしまう可能性があるものとしては,

  売春に従事しているとされた

  1年以上の実刑判決

  入管法違反,旅券法違反,薬物関係の事件で有罪の判決を受けた

と言ったものがあります。これらの場合には,たとえ永住者であったとしても強制送還されるおそれがあり,そうなると永住者としての在留資格も失ってしまうことになります。

永住権を守るために出来ること

それでは,永住者としての在留資格が取り消されてしまうかもしれない場合において,どのようなことができるでしょうか。

まず,虚偽の申立てや偽造した文書を提出したことを理由として永住許可が取り消されそうになってしまったという場合,申し立ての内容や提出した文書に誤りがないかどうかをよく確認する必要があります。本当に,永住許可が欲しくて嘘をついてしまったのか,それとも勘違いや誤解から真実と異なる申立てをしてしまっただけなのかによって,永住許可が取り消されるかどうかが変わってきます。

永住許可の取り消しについても,入管で事情聴取がありますから,勘違いや誤解があるという場合には説得的にそれを主張しなければなりません。

また,本当に嘘をついてしまったという場合や日本で犯罪をした事によって処分や刑罰を受けたという場合,強制送還に関する手続きの中で,在留特別許可を求めていかなければなりません。

この在留特別許可を求める際に,過去に「永住者」の在留資格を取得していた,ということは,それだけ日本で定着して生活をしていたということですから,在留特別許可をもらいやすくなる事情として働きます。

「永住者だった」というだけでなく,個別の事件における事情や,日本に残らなければならないという事情,日本から出国してしまうと困る事情を広く集めて,入管での事情聴取や口頭審理(インタビュー)手続きの中で強く主張しておかなければなりません。

口頭審理の手続きについて,事前に準備しておくべきことはこちらでも解説しています。

【日本に残るために】口頭審理の前の準備

入管での口頭審理手続きについては,家族とは別で弁護士も立ち会うことができます。

永住許可の取消や強制送還の手続きでお困りのことがある方は,一度弁護士にも相談してみましょう。

オーバーステイだと必ず入管に収容されてしまうのか

2022-05-24

(この事例は入管手続きについて解説をするための架空のものであり,実在する地名と事例は必ずしも関係ありません)。

Xさんはコロナ禍になる2018年に母国の家族に仕送りをするために日本に働きに来ました。

はじめは就労ビザを持っていたのですが,コロナ禍になってしまい会社をクビになり,ビザの更新ができないまま在留期限を過ぎてしまいました。

ビザがなくなっても家族に仕送りをしなければならないため,Xさんは日本でアルバイトを続けていたのですが,そうした中で日本人のYさんと出会い,結婚することにしました。

Xさんは日本でYさんと正式に暮らし続けたいと思い,入管へ連絡しようとしています。

入管への出頭

事例のXさんのように,在留資格をもっていない方(=オーバーステイになってしまった人)が自分から入管へ行くという場合には,大きく二通りのパターンがあります。

  1. 自国へ帰国するために名乗り出るというパターン
  2. 日本で生活する理由があるため新たにビザを求めるというパターン

1のパターンは,出国命令制度を利用したもので,早期に帰国ができたり,日本へ再入国する時の有利な事情となります。

退去強制されないためにはどうしたらよいか

本来であれば,「違反調査」⇒「審理」⇒「送還」と言った手続きを踏むことになりますが,出国命令制度によると,オーバーステイであることを確認した後,ある程度の期間を指定されます。その期間内に日本から出国すればよい,という制度です。

2のパターン,上記の事例のようなパターンですが,これは「出頭申告」とも言われるもので,在留資格を認めてもらうためにあえてオーバーステイであることを入管に出頭して申告する(言う)というものです。オーバーステイも,出入国管理法違反になりますので,例えば警察官の職務質問などでオーバーステイが発覚すると,その場で逮捕されてしまうことになります。

そのように,いつ逮捕されるか分からないという状態を解消するためにも,日本で生活し続けることについて何かしら正当な理由がある場合には,むしろ,こちらから入管へ行って説明し,在留資格を認めてもらうための手続きを進めることが必要になります。

待っていても,在留資格はもらえないということです。

オーバーステイだと収容されるのか

Xさんの事例のように,すでにオーバーステイになった状態で入管へ出頭する時,その場で入管に収容されてしまうのではないかと恐れる人も多くいるでしょう。

ですが,自分から出頭しているという事情は,収容を回避したり,仮放免を認めてもらうためにも重要な事情になります。

確かに,オーバーステイの状態になっているということは,入管法上,「収容」(逮捕のようなもの)が出来る状態です。ですが入管当局の運用として,

収容と同時に仮放免をする

ということがたまにあります。

どういうことかというと,「本来であれば入管に収容する事案なのだけれども,いろいろな事情を考慮して,その日のうちにすぐ釈放してあげます。ただし,最終的なビザについての処分が決まるまでの間,1か月~2か月に1回,入管にちゃんと来てください」というものです。

このような「収容と同時に仮放免」がなされるような事案だと,事前に入管から,身元保証人と一緒に来てくださいとか,保証金として10万円を持ってきてください等と言われることがあります。そのような事前の指示があった場合には,仮放免が認められる可能性が相当高く,その日のうちに収容される可能性は低いということですから,指示に従って準備をしましょう。

さて,Xさんの事例のように,オーバーステイとなった後に日本人Yさんと結婚したという場合だとどうでしょうか。

個別の事情によって異なりますが,日本人Yさんとの結婚がビザ目的のものではなくて,Yさんも仕事をしていて収入がきちんとあるという場合や,一緒に生活をしていてXさんが逃げてしまわないようにYさんがきちんと様子を見ることができそうだ,と判断してもらえれば,オーバーステイの中で入管へ出頭したとしても直ちに収容されることなく,拘束されないままで在留特別許可について審理を受けられる場合があります。

特にXさんのような事例の場合,真摯な結婚で,ビザを目的として偽装結婚等ではないと判断してもらえれば,在留特別許可が認められやすい事案です。

オーバーステイというのは,確かに逮捕されてしまったり入管施設に収容されてしまったりする可能性がありますが,状況によっては収容そのものを回避したり,なるべく早い段階で仮放免認めてもらえたりするという場合もあります。

今現在でもオーバーステイの状態で悩んでいる方や,恋人・婚約者がオーバーステイになってしまっているという方は,一度弁護士までご相談ください。

窃盗罪で逮捕された外国人は強制送還されるのか

2022-05-12

(この事例は入管手続きについて解説をするための架空のものであり,実在する地名と設例は必ずしも関係ありません)。

「日本人の配偶者等」の在留資格で日本に在留していたXさん(40代女性)は,東京都板橋区のスーパーマーケットで「お金を払うのが勿体ない」と思ってしまい,食料品等を約1000円分を万引きし,その様子を見ていた私服警備員に現行犯人逮捕されてしまいました。

Xさんの夫である日本人のYさんは,「Xさんが母国に強制送還されるのではないか」と不安になって弁護士に相談することにしました。

窃盗罪の場合には,強制送還があり得る

これまで当サイトにて解説している通り,入管法上,刑事事件と関連して強制送還される場合というのは,次のような場合です。

参考記事 強制わいせつ罪で逮捕された外国人は強制送還されるのか

  • 一定の入管法によって処罰された場合
  • 一定の旅券法に違反して懲役,禁錮刑に処せられた場合(資格外活動の場合,罰金だけでもアウト!)
  • 麻薬取締法,覚醒剤取締法,大麻取締法などの薬物事件で有罪判決を受けた場合
  • 一定の刑法犯で懲役,禁錮刑に処せられた場合(執行猶予がついてもアウト!)
  • どの法律違反であっても,「1年を超える実刑判決」を受けた場合

Xさんの事例のように,万引きの場合だと,窃盗罪が成立します。窃盗罪に対しては「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金」が科せられています。

そして,「窃盗罪」というのは,上記の「一定の刑法犯」に含まれています。

執行猶予が付いたとしても強制送還になってしまう刑法犯は,代表的には次のようなものです。

    • 住居侵入罪
    • 公文書/私文書偽造罪
    • 傷害罪,暴行罪
    • 窃盗罪,強盗罪
    • 詐欺罪,恐喝罪

これらの罪の場合,たとえ執行猶予付きの判決であったとしても,裁判が確定すると強制送還の対象となります。

外国人の方が万引きによって逮捕されてしまった場合には

  • 不起訴になる
  • 無罪を獲得する
  • 罰金刑で済ませる

ことができないと,強制送還される可能性があるのです。

有罪になったら必ず強制送還か

それでは,Xさんの事例で,起訴されて有罪の判決を受けたら必ず強制送還になるのでしょうか。

実は,「一定の刑法犯」で強制送還になる人というのは,その時の在留資格によって変わります。

一定の刑法犯で懲役刑,禁錮刑に処せられたとして強制送還されるのは,入管法の別表1に該当する在留資格をもって日本に滞在している外国人の方です。

入管法の別表1に該当する在留資格とは,こちらのページでも列挙されています

Xさんのように,「日本人の配偶者等」,「永住者」,「永住者の配偶者等」,「定住者」の在留資格であれば入管法の別表2ですから,執行猶予付きの有罪判決を受けたとしても強制送還にはなりません。

ただし,強制送還にならないからと言って全く不利益がないわけではなく,在留期間の更新の時に認められる在留期間が短くなったり,永住許可申請の時に不利な事情として扱われたりします。

強制送還にはならないとしても,その後の日本での在留に関して不利益にならないよう,刑事事件の段階でなるべく軽い処分が得られるように早期に対応しておくことが重要です。

強制わいせつ罪で逮捕された外国人は強制送還されるのか

2022-05-04

(この事例は入管手続き,刑事手続について解説をするための架空のものであり,実在する地名と設例は必ずしも関係ありません)。

「技術,人文知識,国際業務」の在留資格で日本に在留していたXさん(30代男性)は,東京都新宿区の居酒屋で開かれた飲み会の帰り道,酔いすぎたせいか,好みの見た目をしていた女性に対して,路上で抱き着いてしまい,その場で通行人に現行犯人逮捕されてしまいました。

Xさんと交際していた日本人のYさんは,「Xさんが母国に強制送還されるのではないか」と不安になって弁護士に相談することにしました。

「逮捕=強制送還」ではない

Xさんの事例のように,外国籍の方が日本で逮捕されてしまうと,「すぐに強制送還されるのではないか」と不安にある方が多くいらっしゃいます。

ですが,実際に強制送還される場合というのは入管法に規定されており,この規定に当たらない限りは「強制送還できない」ということになります。

入管法上,刑事事件と関連して強制送還される場合というのは,次のような場合です。

  • 一定の入管法によって処罰された場合
  • 一定の旅券法に違反して懲役,禁錮刑に処せられた場合(資格外活動の場合,罰金だけでもアウト!)
  • 麻薬取締法,覚醒剤取締法,大麻取締法などの薬物事件で有罪判決を受けた場合
  • 一定の刑法犯で懲役,禁錮刑に処せられた場合(執行猶予がついてもアウト!)
  • どの法律違反であっても,「1年を超える実刑判決」を受けた場合

何かしらの犯罪で逮捕されてしまった,というだけでは強制送還の対象とはなっていません。

ですが,逮捕,勾留に引き続いて「公判請求」,つまり,「起訴」がなされてしまうと有罪の判決が言い渡される可能性が極めて高く,有罪の判決を受けると内容によっては強制送還されてしまう可能性があるということです。

特に,薬物事件や入管法違反については,「悪質な事案」として入管法でも厳しく扱われており,強制送還されやすくなっています。

逆に,一般刑法の違反の場合には,「その罪名や言い渡された刑の内容によっては強制送還される」という定め方になっています。

Xさんの事例の,強制わいせつ罪(刑法176条)の場合には「1年を超える実刑判決」を受けた場合に限り,強制送還の対象となります。

そのためXさんの事例では,起訴されないための弁護活動,仮に起訴されたとしても執行猶予を獲得できるような弁護活動に重点を置くことになります。

実刑判決にならなければOK?

それではXさんの事例で,実刑判決を回避できれば万事解決となるでしょうか。

Xさんの場合には,「技術,人文知識,国際業務」の在留資格で日本に在留していますから,当然「在留期間」というものが決まっています。

短い人は6か月や1年,最長でも5年の在留期間が決まっており,定められた在留期間以降も日本に留まることを希望する場合には,「在留期間の更新」をしなければなりません。

強制送還をされなかったとしても,Xさんが日本での長期的な在留を望む場合,「強制わいせつ罪で逮捕された」という事実が在留期間の更新手続きの中で不利に働くことがあります。

在留期間の更新については

  • 在留資格の基礎となる活動が適切なものであるから
  • 在留期間を更新するのが相当であるか

という点が審査されます。「逮捕された」という事実は,このうち「更新するのが相当であるか」という点に影響してきます。

日本で逮捕されたことがある,という事実は,日本での生活の素行が悪いという方向の事実であるからです。

刑事事件と在留期間の更新については,やや事案は異なりますが裁判例について解説したものもありますので,併せてご覧下さい。

在留期間の延長を求めて争った裁判事例 東京地方裁判所その1

逮捕されたことで強制送還されるのではないか,在留資格に影響が出るのではないか,とご心配のある方は,一度弁護士にご相談ください。

「永住者」の在留資格取得手続

2022-04-26

このページでは,「永住者」の在留資格取得について解説をします。

永住者ビザは,数ある在留資格の中でも最も安定しているものとされており,仕事にしろ家族関係にしろ,日本に長期的に在留する外国人の方のほとんどが「出来るなら永住者としてビザを持っておきたい」と考えるのではないでしょうか。

今回は,永住者の在留資格の内容や取得手続のための書類について解説をしていきます。

(さらに…)

「永住者の配偶者等」と「家族滞在」の在留資格の違い

2022-03-30

前回の解説記事にて,「家族滞在」の在留資格の取得に必要な手続きを解説をしました。

その中で,「永住者の配偶者等」と「家族滞在」の在留資格に似ている部分があることについて触れました。

この記事では,その,「永住者の配偶者等」と「家族滞在」の違いについて具体的に解説をしていきます。

(さらに…)

特定活動の在留資格取得手続

2022-03-16

このページでは,「特定活動」の在留資格取得について解説をします。

特定活動ビザと一言でいっても,多種多様なものが存在し,中には「法律にあげられていないけれどもビザが認められる」という場合もあります。

就労ビザや留学ビザ,家族ビザが認められないという場合の手段として,特定活動のビザの取得を考えるべき場合というのもあるでしょう。

今回は,「特定活動」の在留資格の内容や取得手続のための書類について解説をしていきます。

(さらに…)

家族滞在の在留資格取得手続

2022-03-09

このページでは,「家族滞在」の在留資格取得について解説をします。

家族ビザというと,「日本人の配偶者」や「日本人の子供」についてのビザを思い浮かべるかもしれませんが,日本人の家族でなくても「家族滞在」の在留資格が認められることも十分にあります。

今回は,家族滞在の在留資格の内容や取得手続のための書類について解説をしていきます。

(さらに…)

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