Posts Tagged ‘オーバーステイ’

酔っぱらって警察官を殴ってしまった?!公務執行妨害罪をすると技術,人文知識,国際業務のビザはどうなるのか

2024-02-28

(事例はフィクションです)

外国籍のAさん(技術・人文知識・国際業務ビザ)は,会社の飲み会の帰り道で職務質問を受けました。

Aさんは何も違法なことはしていませんでしたが,楽しい飲み会の帰り道で職務質問をされたことで気分が悪くなり,警察官と喧嘩になってしまいました。

そして,つい気が大きくなってしまったAさんは,警察官の胸を手で強く付き,頭を叩いてしまいました。Aさんは公務執行妨害の現行犯として逮捕されてしまいました。

Aさんの逮捕の連絡を受けた同僚のBさんは,Aさんがどうなってしまうのか心配になり弁護士に相談することにしました。

公務執行妨害罪

公務執行妨害罪とは,公務員に対して直接/間接的な有形力を行使したり,脅迫したりすることで成立する犯罪です。

平たく言うと,公務員に対する暴力や脅しが公務執行妨害罪に当たります。Aさんのように,身体を押す,叩くという行為であっても,十分に公務執行妨害罪になります。

過去の判例では,公務員に向かって1回石を投げたけれども命中しなかった,という事案について公務執行妨害罪が成立するとされた事例があります(昭和33年9月30日最高裁判所判決)。

公務執行妨害罪については3年以下または50万円以下の罰金が定められています。

逮捕された後の対応

Aさんのように,公務執行妨害罪で逮捕されてしまった外国人の方には以下のようなリスクが生じるため,早期の対応が必要です。

在留期間がきれてオーバーステイになる:

逮捕されてしまうと,外部との連絡が一切できなくなってしまいます。
そのため,在留期間の更新間際のタイミングだった場合には更新手続きが十分に行えない可能性があります。逮捕されていても,法律上,ビザの手続きをすることは可能ですが,書類の準備等できることは大幅に制限されてしまうでしょう。

在留期間の更新,ビザの変更が不許可になる:

逮捕されてその後の刑罰が科されてしまった場合,前科がついてしまいます。罰金刑だけであっても,また,外国人の方であっても,日本での前科がついてしまいます。
そうなると,仮に在留期間の更新や他のビザへの変更を申請したとしても,「素行が不良である」という理由で許可されない可能性があります。

強制送還される:

Aさんの場合,公務執行妨害罪によって1年を超える実刑判決を受けてしまった場合,強制送還の対象になってしまいます。
また,仮に実刑判決を受けなかったとしても,更新が認められなかったり別の在留資格への変更が認められなかったりして,結局オーバーステイとなってしまったり,帰国を余儀なくされてしまう場合があります。
強制送還手続きについてはこちらでも解説しています

刑事事件における対応は

公務執行妨害罪で外国人の方が逮捕されてしまった場合,早急に必要なのは身柄解放活動処分軽減のための弁護活動です。

公務執行妨害罪によって逮捕されてしまった場合,逮捕から48時間以内に検察庁に送られ,また72時間以内に裁判所に送られます。
これは,逮捕に続く,10日間,最長20日間続く勾留という手続きに関するものです。この「勾留」がついてしまうのか,それとも釈放されるのかによって,その後のビザを守るための活動に大きな違いが出てきます。
逮捕直後に周りの方の協力を得て,釈放のための弁護活動を行うことによって,早期の身体解放が認められる場合があります。

また,処分軽減のための取調べ対応や示談交渉も重要です。
特に,公務執行妨害事件の場合,被害者が警察官や市役所の職員等,公務員になります。国家,地方を問わず,公務員という職業の性質上,示談交渉は通常の事件と比べると難航する場合がほとんどです。場合によっては示談のための連絡を一切断られてしまうこともあります。
示談交渉をうまく進めることができれば,前科が付かず事件を解決できる可能性が上がり,前科が付かなければ在留資格への影響は最小限度にとどめることもできるのです。

日本に在留している外国人の方が刑事事件によって逮捕されてしまった場合,日本人の事件の場合と比べてより対処すべき問題が多く山積しています。

外国人の方が逮捕されてしまった事件でお困りの方は,刑事事件と入管事件の両方に経験のある,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご相談ください。

逮捕された方の下へ弁護士を派遣する,初回接見サービスも行っています。

こちらからもお問い合わせいただけます。

初回接見・同行サービス

強制送還されたことがあっても再入国はできる?上陸特別許可の解説

2023-11-06

「上陸特別許可」について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が紹介します。

「上陸特別許可」とは、一般的には入国拒否期間中であるにもかかわらず、日本への入国が認められる許可のことをいいます。

「上陸特別許可」は、いわゆる入管法第12条に定められています。

上陸拒否期間中は原則として日本に入国することはできませんが、当該期間が経過したことにより必ず日本に入国できるというわけではありません。

上陸拒否期間経過後は「上陸拒否期間中のため」という理由により日本への入国が拒否されることはありませんが、他の別の理由で拒否される可能性はあります。

つまり、上陸拒否期間が経過することと、「日本人の配偶者等」などの在留資格が与えられることは全くの別の問題となります。

退去強制された外国人が過去に日本で法律違反を繰り返している場合などには、日本に正式な配偶者と実子がいても全くビザが許可されない事もあります。

あくまでも、過去の滞在状況と今回の呼び寄せる理由とを比べて総合的に判断されることになりますので、形式的に上陸拒否期間が経過したことだけをもって在留資格が認められるというわけではないことに注意が必要です。

また、一度退去強制されてからどれくらいの期間が経過すれば上陸特別許可が認められるかについては一概に何年という基準はありません。

退去強制事由によっても異なりますが、一般的には退去強制されてから3~4年程度経過した場合に許可されるケースが多いようです。

ただし、「上陸特別許可」は「在留特別許可」と同様に正式に認められた申請ではなく、日本への入国に際しても相当の理由が必要となるため、誰に対しても許可がおりるわけではなく、何度申請しても不許可となる可能性もあります。

「上陸特別許可」を申請する外国人を取り巻く環境などにより異なるので、一概に退去強制から何年経過すれば入国ができるということは出来ません。

そこで、事前に在留資格認定証明書交付申請を行い、あらかじめ上陸拒否者であることを前提とした審査を経る必要があります。

上記のように、「上陸特別許可」は正式に認められた申請ではないことから、どのような条件であれば認められるかが非常に難しいものになります。

「上陸特別許可」についてお困りの方はお気軽にお問い合わせください。

企業内転勤ビザの更新手続き:必要なステップと注意点

2023-10-05

企業内転勤ビザは、多くの外国人が日本で働くために必要な在留資格の一つです。

しかし、このビザの有効期限が切れると、不法滞在となり厳しい罰則が科される可能性があります。この記事では、企業内転勤ビザの更新手続きについて詳しく解説します。

1. 企業内転勤ビザとは?

企業内転勤ビザは、特定の企業に所属する外国人が日本で働くために必要な在留資格です。

企業内転勤ビザ(Intra-Company Transferee Visa)は、外国の企業が日本に子会社や関連会社を持っている場合、その企業の外国人従業員が日本で一定期間働くために必要な在留資格です。

このビザの特徴として、日本での労働内容は、外国の母体企業での業務と基本的に同じでなければならないという点があります。 企業内転勤ビザの有効期間は3か月から5年の幅がありますが,通常1年または3年とされることが多いでしょう。この期間が終了する前に更新手続きを行う必要があります。

企業内転勤ビザを取得する際の基本的な条件として、申請者が外国の母体企業で一定期間(通常は1年以上)働いている必要があります。 さらに、日本での業務内容、給与、労働条件なども審査の対象となります。

このビザのメリットとしては、日本での労働が比較的スムーズに始められる点、注意すべき点としては、業務内容が「技術・人文知識・国際業務」のものに制限される点が挙げられます。

このビザは、日本国内での業務遂行を円滑にするために発行されます。 しかし、このビザには有効期限があり、期限が切れると不法滞在となります。 そのため、更新手続きは非常に重要です。

2. 更新手続きのタイミングと流れ

企業内転勤ビザの更新手続きは、有効期限が切れる前に行う必要があります。 一般的に、ビザの有効期限が切れる3ヶ月前から手続きを始めることが推奨されます。

以下は、更新手続きのタイミングと流れについての詳細です。

  1. 3ヶ月前: まず、ビザの有効期限が切れる3ヶ月前に、必要な書類のリストを作成します。この段階で、書類の内容を確認し、不足しているものがあれば、それを揃える時間が確保できます。

  2. 2ヶ月前: この時点で、すべての書類が揃っているか再確認します。また、必要な場合は、弁護士や専門家に相談して、書類の内容を確認してもらいます。

  3. 1ヶ月前: 書類が整ったら、入国管理局に提出するためのアポイントメントを取ります。多くの場合、オンラインで予約が可能です。

  4. 数週間前: アポイントメントの日に、必要な書類を持って入国管理局に行き、更新申請を行います。指定された窓口で書類を提出します。

  5. 申請後: 申請が承認されると、新しい在留カードが発行されます。このカードを受け取るためには、再度入国管理局に行く必要があります。

  6. 有効期限当日: 最後に、新しい在留カードを確実に受け取って、古いカードを返却します。更新が許可された場合には,窓口で手数料(4,000円)を支払います

このように、更新手続きは複数のステップに分かれており、それぞれのステップでしっかりと準備と確認が必要です。 特に、書類が不足していると、更新が拒否される可能性もありますので、注意が必要です。

3. 必要な書類と手続きの流れ

企業内転勤ビザの更新手続きには、いくつかの重要な書類と手続きが必要です。 以下に、その主要なポイントを詳しく説明します。

必要書類

  1. 在留カード: 最も基本的な書類であり、必ず提出する必要があります。

  2. 雇用契約書: 日本の企業との雇用契約書や、外国の母体企業との契約書のコピー。

  3. 給与明細: 最近3ヶ月分の給与明細を用意します。

  4. 納税証明書: 所得税の証明書や、住民税の証明,年金の支払いに関する証明も必要です。

  5. 在職証明書: 企業からの在職証明書が必要とされる場合もあります。

  6. 申請書: 入国管理局からダウンロードできる、ビザ更新の申請書を記入します。

  7. パスポート: 有効なパスポートも提出が必要です。

手続きの流れ

  1. 書類の準備: 上記の書類を全て揃えます。

  2. 書類の確認: 不備がないか、専門家や弁護士に確認してもらった方が良いでしょう。

  3. 申請書の記入: 必要な情報を正確に記入します。

  4. 入国管理局での申請: 予約した日時に、必要な書類を持って入国管理局に行きます。

  5. 申請料の支払い: 申請が認められたら窓口で手数料(4,000円)を支払います。

  6. 在留カードの受取:、新しい在留カードを受け取ります。

このように、書類の準備から申請、そして新しい在留カードの受取まで、一連の流れがあります。 各ステップで注意深く行動することで、スムーズな更新が可能です。

4. オンラインでの更新手続き

近年、オンラインでのビザ更新手続きが可能なケースも増えています。 このセクションでは、オンラインでの手続きのメリットと注意点について詳しく説明します。

オンライン申請によるメリット

  1. 時間節約: 入国管理局に物理的に足を運ぶ必要がないため、時間を節約できます。

  2. 手続きの簡素化: オンラインでの手続きは、通常、書類のアップロードといった簡単なステップで完了します。

  3. 24/7 アクセス: オンラインであれば、時間や場所に縛られずに申請が可能です。

オンライン申請の注意点

  1. 技術的な問題: インターネット接続の不具合やウェブサイトのトラブルが発生する可能性があります。

  2. セキュリティ: 個人情報をオンラインで取り扱うため、セキュリティ対策が必要です。

  3. 書類の確認: オンラインでの申請では、書類の確認が厳しくなる場合があります。そのため、書類は事前にしっかりと確認しておく必要があります。

オンライン手続き利用については,入管当局のHP等をご覧ください。

5. 有効期限が切れた場合の対処法

ビザの有効期限が切れてしまった場合、それは非常に深刻な問題になります。ビザが切れた状態で在留していることは不法残留,オーバーステイと呼ばれ,罰則が科されたり,強制送還されたりしてしまいます。

有効期限が切れた場合の緊急の対処について詳しく説明します。

即時対応が必要

  1. 入国管理局への連絡: まず最初に、できるだけ早く最寄りの入国管理局に連絡を取ります。

  2. 弁護士の相談: 法的な問題が発生する可能性が高いため、速やかに入管法に詳しい弁護士に相談することが推奨されます。手続の状況によっては,更新の申請が間にあったり,在留特別許可が目指せるという場合もあります。

とはいえ,やはり不法残留の状態となってしまわないようにするのがベストです。

日本に在留している以上,常に在留期限は気にしておく必要があります。

外国人を雇用している雇用主としても,従業員の在留期限については気を配っておかなければなりません。外国人本人が不法残留となってしまうだけではなく,雇用主も「不法就労助長罪」として処罰の対象となってしまうおそれがあります。

6. まとめと今後の注意点

ビザの更新手続きは、多くの外国人が日本で生活する上で避けては通れない重要なプロセスです。 この記事では、更新手続きのタイミング、必要な書類、費用、オンラインでの手続き、そして有効期限が切れた場合の対処法について詳しく説明しました。

  1. 早めの準備: 更新手続きは時間がかかる場合がありますので、早めに準備を始めることが重要です。

  2. 書類の確認: 必要な書類はしっかりと確認し、不備がないように注意が必要です。

  3. 法的な相談: 不明点や問題が発生した場合は、専門家や弁護士に相談することが推奨されます。

  4. 有効期限の確認: ビザの有効期限は常に確認し、リマインダーを設定するなどして忘れないようにしましょう。

  5. オンライン手続きの活用: 可能であれば、オンラインでの手続きを活用して、手間と時間を節約することが有用です。


以上が企業内転勤ビザの更新手続きについての全体的なガイドとなります。 この情報が皆さんのビザ更新手続きをスムーズに進める助けとなれば幸いです。 何か質問やフィードバックがありましたら、お知らせください。

強制わいせつで逮捕!強制送還のリスクと対策

2023-09-09

日本での生活は多くの外国人にとって魅力的ですが,日本の法律に違反した場合,その夢は一瞬で崩れ去る可能性があります。特に強制わいせつなどの犯罪行為は強制送還の対象となる可能性が高くあります。この記事では,強制わいせつで逮捕された架空のAさんの事例を通じて,強制送還手続きとその対策について詳しく解説します。

事例紹介

Aさんは,30歳のX国籍で,日本でエンジニアとして働いていました。2023年の夏,東京の夜の街で酒に酔ってしまい,見知らぬ女性に対して強制わいせつ行為をしてしまいます。この行為が目撃され,警察に逮捕されました。Aさんはその後,起訴され,懲役2年の有罪判決を受けました。この事件により,Aさんの在留資格が危うくなり,強制送還の手続きが始まりました。

退去強制とは

日本から外国人の方を強制送還する手続きのことを,正式には「退去強制」と言います。

退去強制手続きは主に

  1. 理由となる事実の発生(例:オーバーステイ,不法就労,虚偽の申請,犯罪歴などなど)
  2. 入国警備員による調査
  3. 入国審査官による審査
  4. (場合によっては)法務大臣による裁決

という4つの段階を踏まえて進められていくことになります。

退去強制の理由となる理由が発生した場合,そのことを入国管理局が知ることで調査が実施されます。調査の結果は全て,入国審査官へ引き継がれて「強制送還をすることが適法かどうか」の審査がなされます。審査の結果を踏まえて,強制送還が最終的に決定されることになります。

強制送還をする,という審査がなされた後,決定に不服がある場合には異議を申し出て口頭審理,法務大臣の裁決へと手続きが進みます。

口頭審理,法務大臣の裁決を踏まえて,最終的に強制送還をするか,在留特別許可をするか,それとも強制送還をしないか,といった決定が下されることになるのです。

刑事事件を起こしてしまった外国人の方が強制送還されるかどうかという点や,審査手続きの流れについて細かく解説します。

退去強制の理由になる事実

入管法上,刑事事件と関連して強制送還される場合というのは,次のような場合です。

  • 一定の入管法によって処罰された場合
  • 一定の旅券法に違反して懲役,禁錮刑に処せられた場合(資格外活動の場合,罰金だけでもアウト!)
  • 麻薬取締法,覚醒剤取締法,大麻取締法などの薬物事件で有罪判決を受けた場合
  • 一定の刑法犯で懲役,禁錮刑に処せられた場合(執行猶予がついてもアウト!)
  • どの法律違反であっても,「1年を超える実刑判決」を受けた場合

執行猶予が付いたとしても強制送還になってしまう刑法犯は,代表的には次のようなものです。

    • 住居侵入罪
    • 公文書/私文書偽造罪
    • 傷害罪,暴行罪
    • 窃盗罪,強盗罪
    • 詐欺罪,恐喝罪

これらの罪の場合,たとえ執行猶予付きの判決であったとしても,裁判が確定すると強制送還の対象となります。一定の刑法犯で懲役刑,禁錮刑に処せられたとして強制送還されるのは,入管法の別表1に該当する在留資格をもって日本に滞在している外国人の方です。入管法の別表1に該当する在留資格とは,こちらのページで列挙されています

在留資格の一覧についてはこちらです。

在留資格の種類

何かしらの犯罪で逮捕されてしまった,というだけでは強制送還の対象とはなっていません。ですが,逮捕,勾留に引き続いて「公判請求」,つまり,「起訴」がなされてしまうと有罪の判決が言い渡される可能性が極めて高く,有罪の判決を受けると内容によっては強制送還されてしまう可能性があるということです。

特に,薬物事件入管法違反については,「悪質な事案」として入管法でも厳しく扱われており,強制送還されやすくなっています。逆に,一般刑法の違反の場合には,「その罪名や言い渡された刑の内容によっては強制送還される」という定め方になっています。

また,刑法犯の中でも傷害罪のような粗暴犯と呼ばれるような犯罪,窃盗罪や横領罪・詐欺罪のような財産犯と呼ばれるような犯罪については「他人の利益を直接侵害する犯罪」についても重く捉えられており,強制送還の可能性があります。

Aさんの事例における「強制わいせつ罪」は,直ちに強制送還の対象となるものではありませんが,「懲役2年」の判決となると強制送還の対象となります。

強制わいせつ罪の場合,執行猶予付きの判決になった場合と1年を超える懲役刑の判決となった場合とで,在留資格の手続きが大きく変わることになります。

入国警備官による調査

刑事事件を起こしてしまったことが強制送還の理由となってしまった場合,刑事手続きが終了した後,近くの各地方出入国在留管理局に呼び出された上で,入国警備官による調査を受けることになります。

この時の調査の内容は,「退去強制をするべき事実が発生したかどうか」ということに限られます。そのため,調査での一番の調査事項は,

  • 一定の入管法によって処罰されたかどうか
  • 一定の旅券法に違反して懲役,禁錮刑に処せられたかどうか
  • 麻薬取締法,覚醒剤取締法,大麻取締法などの薬物事件で有罪判決が確定したかどうか
  • 一定の刑法犯で懲役,禁錮刑に処せられたかどうか
  • どの法律違反であっても,「1年を超える実刑判決」を受けたかどうか

という点になります。そして,これらの事実のほとんどは,刑事裁判の結果を基に認定がなされます。

裁判で事実を争っていない場合にはそのまま「強制送還の理由あり」という認定になってしまうでしょう。

裁判で争っていた場合,または入管の手続きになってから初めて事実を争うという場合,改めて証拠を提出したり詳細な主張を行ったりする必要があります。

入国審査官による審査

入国警備官が調査した内容は,そのまま入国審査官へと引き継がれていきます。そして入国審査官が対象となる外国人の方と面談(interview)を行い,審査を実施します。

審査の対象となるのも上に書かれた調査事項と同様です。

なお,強制送還の理由となる事実に加えて,日本での生活や仕事のこと,家族のこと,財産のこと等も一緒に質問されることがあります。

これは,強制送還の理由になる事実があったとしても,在留特別許可をするかどうか,という判断で考慮される事情になります。

審査が終わると強制送還の理由になる事実があったか/なかったか,という点についての判断がなされ,「事実があった」と認定されると一時的に入管の施設に収容されてしまいます。

元々オーバーステイだった場合には,そのまま収容が続いてしまうことが多くあります。

一方で,審査が終わるまでは一応在留資格をもって日本に在留していたという方の場合,一時的に収容の手続きがなされたとしても,すぐに「仮放免」といって,保証金を払うことで釈放される場合もあります。仮放免の解説はこちらです。

入管に収容されたらどうすればいいか

入国審査官による審査が不服であった場合,強制送還の理由になる事実があったとしても,さらに日本での在留を希望する場合には,その後の口頭審理という手続きを行うことになります。

口頭審理とは何か?

口頭審理とは,入国審査官が「退去強制事由がある」と判断をしたことに対して,特別審査官が再度審査をするという手続きのことです。

退去強制になるまでには,

  1. 理由となる事実の発生(例:オーバーステイ,不法就労,虚偽の申請,犯罪歴などなど)
  2. 入国警備員による調査
  3. 入国審査官による審査
  4. (場合によっては)法務大臣による裁決

という段階がありますが,「口頭審理」という手続きは,この3と4のちょうど間にある手続です。

口頭審理では,入国審査官の判断が間違っていたかどうか,が審理の対象になります。

そのためまずは,強制送還の理由となった事情について再度細かく質問を受け,その後,日本での在留に関する質問をされます。ですが,口頭審理でのインタビューは,法務大臣の裁決という手続きに進む前の,最後のインタビュー手続きです。

そのため,口頭審理の場では,違反審査に関する事だけでなく,在留特別許可を認めるかどうかの判断で重要となる部分の『聞き取り』も行われることになっています。

ただ,あくまで「聞き取り」を行うだけですので,事実に間違いがない限りは,口頭審理の結果については,「元の審査に誤りはなかった」と判断されることになります。

口頭審理の後も,引き続き日本での在留を希望するという場合には,異議の申立てをして,法務大臣の裁決を求めることになります。

口頭審理のポイントとなるのは,『法務大臣による裁決前の最後のインタビューである』という点です。

法務大臣の裁決

入国警備官による調査から始まって,強制送還に関する最後の手続きが法務大臣の裁決という手続きです。

この手続では面談などはなく,口頭審理の結果を踏まえて在留特別許可をするかどうかについて,書面による審査が実施されます。

法務大臣の裁決では,それまでの手続きにおける間違いがないかどうかという点の審査に加えて,在留特別許可をするかどうかという最も重要な点についての審査が行われます。

在留特別許可をするかどうかについては,入管における判断の透明性を確保するという観点から,ガイドラインが公開されています。

そのガイドラインの大枠は,次のようなものになります。

参考URL ガイドラインの全文

  • 積極要素

日本人の子か特別永住者の子である

日本人か特別永住者との間に生まれた未成年の子を育てていて親権を持っていること等

日本人化特別永住者との間に法律上有効な婚姻が成立している

⇒日本と外国人とが,家族関係を持つレベルで接着していること

  • 消極要素

重大犯罪によって刑に処せられた

出入国管理行政の根幹を犯す違反をした

反社会性の高い違反をした

⇒日本に在留させることが日本にとって不利益が特に大きい場合

最終的には様々な事情を総合して判断することにはなりますが,これらの積極要素/消極要素を中心にして,過去の事例なども参考にしながら,在留特別許可をするかどうかの判断がなされます。

まとめ

Aさんの事例では「懲役2年の判決」という点が強制送還の理由となり,事例にあるAさんの事情だけでは,在留特別許可をもらえる可能性は低いでしょう。

それまでAさんが適法な在留資格をもっていたのであれば仮放免が認められる可能性もありますが,懲役刑を受けている間にオーバーステイとなってしまう可能性もあります。

日本に残って生活を続けたいと希望する場合には

①刑事事件の手続の中で強制送還の理由になってしまわないように対応する

②入管手続の中で在留特別許可が得られる可能性を模索することが重要です。

強制送還に関する手続きについて,弁護士等に一度ご相談された方が良いでしょう。

短期滞在の在留資格について解説,ビジネス,観光,どこまでできるか?

2023-08-27

在留資格「短期滞在」について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が紹介します。

この「短期滞在」の在留資格に該当する活動としては、日本に短期間滞在して行う観光、保養、スポーツ、親族の訪問、見学、講習又は会合への参加、業務連絡その他これらに類似する活動などです。

「短期滞在」の該当例としては、観光客、会議参加者等です。

「短期滞在」の在留期間は、90日若しくは30日又は15日以内の日を単位とする期間です。

「短期滞在」の在留期間は、就労系在留資格と異なり、自分自身で希望する在留期間を選ぶことができます。

ただし、滞在期間が長ければ長いほど審査の基準が厳しくなるため、明確な理由がないにもかかわらず、最大の90日を選ぶことは避けた方が良いかと思います。

この「短期滞在」の在留資格の活動範囲のうち、商用に関連するものとして具体的な活動目的は次のようなものがあります。

・見学、視察等の目的で滞在する者(例えば工場などの見学、見本市等の視察を行う者)

・企業などの行う講習、説明会等に参加する者

・会議、その他の会合に参加する者

・日本に出張して業務連絡、商談、契約調印、アフターサービス、宣伝、市場調査、その他の短期商用活動を行う者

なお、日本への投資、事業開始のための市場調査等の準備行為は、通常短期滞在の活動範囲と解されます。

この「短期滞在」の在留資格で注意が必要なことは、同じ就労不可のカテゴリーに分類されている「文化活動」や「留学」、「家族滞在」の在留資格では資格外活動による就労が認められていますが、「短期滞在」の在留資格では就労活動はできないということです。

ただし業として行うものではない以下の活動については、例外的に報酬を受けることができます。

・講演、講義、討論その他これらに類似する活動

・助言、鑑定その他これらに類似する活動

・小説、論文、絵画、写真、プログラムその他の著作物の制作

・催物への参加、映画又は放送番組への出演、その他これらに類似する活動

他にも業として従事する場合を除き、親族や友人、知人の依頼を受けて、その者の日常の家事に従事する場合も謝礼金を受けることができます。

上記のように、「短期滞在」の在留資格は、あくまでも就労活動はできない在留資格であり、日本において就労するためには就労するための在留資格を取得する必要がありますので、「短期滞在」の在留資格のことでお困りの方はお気軽にお問い合わせください。

在留期間を超えて日本に残れることがある?在留特例期間を解説

2023-07-15

国内に滞在する外国人が3か月以上継続して日本に滞在する場合は、在留の活動に伴う在留資格が与えられ、在留活動の内容を表示するものとして在留カードが発行されます。

在留カードには在留資格に伴う活動の有効期限として在留期間の満了日が記載されており、在留期間の満了日が経過すると当該在留カードは無効となり、カードの所持者は日本に在留する資格がなくなります。

在留期間の満了日後も日本に滞在したい場合は、在留期間の満了日前に在留資格の変更・更新の申請手続きを行います。在留変更・更新申請が出入国在留管理局(以後入管)で許可されれば新しい在留カードが発行され、引き続き日本で在留資格に基づく在留活動が可能となります。通常、在留期間の満了日の3か月前から在留申請手続きが可能です。

申請の結果がいつ自分のもとに通知されるのかについては、申請した側にとってみれば大変気がかりなことですが、今のところ明確なルールは定められていません。しかしながら一応の基準は設けられており、在留審査の標準処理期間が出入国在留管理庁から毎年四半期毎に公表されていて、自分が申請した在留許可の判断がおよそいつくらいまでに出されるのかを知ることができます。

逆に自分が行った在留申請の結果通知の最終期限がいつまでかについては、「在留期間の特例」という制度によって事前に知ることができます。

在留期間の特例とは、「在留カードを所持している方が、在留期間更新許可申請又は在留資格変更許可申請(以下「在留期間更新許可申請等」という。)を行った場合において、当該申請に係わる処分が在留期間の満了日までになされないときは、当該処分がされる時又は在留期間の満了の時から二月が経過する日が終了するときのいずれか早いときまでの間は、引き続き従前の在留資格をもって我が国に在留できます」とする制度です。:出典 出入国在留管理庁HP

例えば、6月30日が在留期間の満了日の方の場合、どんなにおそくとも8月30日までには入管から結果通知が来ます。

入管側で在留許可の判断が出ている場合、在留期限から2か月を経過しても申請人が在留カードの交付申請手続きをしなければ申請人は在留資格を失い、オーバーステイとなります。

なお、在留申請時に渡される受付票には、「在留期間の満了日から2か月を経過する日の10日前までに「通知書」が届かない場合は、お手数ですが当局(所)までお問い合わせください。と記載されています。

在留期間の満了日から50日経過してもいまだに入管から通知が来ないときは明らかにイレギュラーな状況なので、すぐに申請をした入管に連絡しましょう。

入管側は個別具体的に「在留期限の特例」について申請者に教えてくれません。

「在留期限の特例」については、申請者本人が受け取る受付票にも通知書にもきちんと書かれているので、申請側が知ってて当たり前と判断されます。

「在留期間の特例」を知らないことで生じた不利益(オーバーステイ等)は、申請人側が受けることになります。

ご自分の在留期間の満了日には常に意識をして、在留手続きを忘れ在留資格が失効しないよう普段から注意しましょう。

この「在留期限の特例」は,在留期間のギリギリに申請をした方が,特に対象になる制度です。在留期間ギリギリに更新の申請をした/変更の申請をした,という方で,ご不安なことがある方は是非一度専門家にご相談ください。

難民認定とは何か,どのような手続きを取ればよいか

2023-04-03

難民認定のための手続はどのようなものか

概要

日本は1981年に難民条約に加入しました。それに伴い国内で実施するため、1982年に難民認定制度が整備されました。

この制度により難民である外国人は難民申請を行い法務大臣から難民であるという認定を受けることができ、また難民条約に規定する難民としての保護を受けることができるようになりました。

ここでの「難民」とは、人種、宗教、国籍、特定の社会的集団の構成員であること又は政治的意見を理由として迫害を受ける恐れがあるという十分に理由のある恐怖を有するために国籍国の保護を受けることができないか又はそれを望まない者とされています。

難民認定手続きとは、外国人がこの難民の地位に該当するかどうかを審査し決定する手続です。

申請者、申請場所、申請の方法

難民認定申請は、申請者の住所又は現在地を管轄する地方入国管理局、支局及び出張所で行うことが出来ます。原則として申請者本人が申請します。

ただし、申請者が16歳未満である場合や病気その他の理由のより自ら出頭できない場合は、父母、配偶者、子、又は親族がその者に代わって申請を行うことが出来ます。

難民の認定は、申請者から提出された資料に基づいて行われ、申請者は難民であることを自ら集めた証拠又は関係者の証言をもとに立証する必要があります。

難民認定申請をしてから難民認定申請の結果(一次審査)がでるまで、「特定活動」の在留資格が認められます。申請から一次審査の結果がでるまで令和3年度は約32.2か月かかりました。令和3年度の難民認定処理数は6,150件、そのうち難民認定した者は65件、不認定は4,196件、申請取下げが1,889件でした。

一次審査の結果、難民認定申請が不認定となった又は難民の認定が取り消された外国人は、法務大臣に対して不服申立てをすることが出来ます。

不服申立てができる期間は、難民の認定をしない旨の通知又は難民の認定を取り消した旨の通知を受けた日から7日以内となっています。ただし、天災その他やむを得ない理由があるときは、7日経過後であっても不服申立てをすることができます。

不服申立ては、難民認定申請の場合と同様、不服申立て人の住所又は現在地を管轄する地方入国管理局、支局及び出張所で行うことができます。

令和3年度、不服申立て処理件数は7,411件、その内申立てに理由ありが9件、理由なしが6,732件、申立て取下げが670件となっています。

令和3年度、難民認定申請と不服申立てを合わせた処理件数は13,561件、そのうち難民認定されたのは74件、1年間の処理数から認定者数で割りだした難民認定率は0.5%でした。

難民申請後の在留変更について

現在の日本では、難民申請の認定率がここ10年1%以下で推移しています。

アメリカ、イギリス、フランス、カナダ、ドイツ等と比べて極端に低くなっています。

日本では、200人~300人に1人の例外を除いた難民申請者のほぼ全員が、いずれは本国への帰国を迫られることになります。

しかしながら日本で難民申請する方の多くは、簡単に本国に帰れない事情があり、日本に在留しなくてはならない事情があります。

現在の日本では、難民認定申請手続で在留資格を取得するのはほぼ不可能となっています。

こうした状況の中で日本に残る選択肢として、難民申請中の方でどうしても日本に残らなければならない事情のある方は、難民申請中の「特定活動」から他の在留資格変更申請を考えてみるのはどうでしょうか?手続上、難民申請の「特定活動」の在留期間内であれば、

他の在留資格の変更手続が可能です。この場合、通常の在留資格変更手続よりは厳しい審査になることは予測されますが、それでも日本に在留できる可能性は、難民認定申請の結果よりも高くなるのは間違いありません。 

(参考文献:入管HP)

 

難民認定申請「特定活動」の在留資格についてご心配やお困りごとのあるという方は、

弁護士法人あいち刑事事件総合法律所内の専用窓口(03-5989-0843)までご相談下さい。

強制送還された後も再入国できる?上陸特別許可の解説

2023-03-28

上陸特別許可・上陸拒否の特例について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

日本で暮らしていた外国人が、オーバーステイや何かの犯罪をしてしまい有罪判決を受けて本国に帰国したときは、日本から出国したあと再び日本に入国できるでしょうか?

再入国できないのはどんな場合?

入管法5条1項では、外国人の日本への上陸拒否(入国を認めない)にあたる事項を列挙しています。

上陸拒否に当たるもので代表的なものとして

  • 過去に退去強制されたり,出国命令を受けて出国したりしたことがない場合の上陸拒否期間は,退去強制された日から5年
  • 過去に退去強制されたり,出国命令を受けて出国したりしたことがある場合(「複数回退去強制」)の上陸拒否期間は,退去強制された日から10年
  • 出国命令により出国した場合の上陸拒否期間は,出国した日から1年  
  • 日本国又は日本国以外の法令に違反して1年以上の懲役又は禁錮等に処せられた場合

  「懲役刑等(1年以上)」は無期限上陸拒否、「等」には執行猶予も含む。

  • 麻薬、大麻、あへん、覚醒剤又は向精神薬の取締りに関する日本国又は日本国以外の法令に違反して刑に処せられた者は無期限上陸拒否
  • となっています。

該当者が執行猶予を含む1年以上の有罪判決を受けて判決が確定した場合、一旦日本から出国すると、法律上は永久に日本に入国することが出来ないという極めて厳しい規定となっています。

また薬物事犯の場合は、1年以下の有罪でも無期限上陸拒否となります。

①はオーバーステイにより退去強制を受けた場合、それが初回であり、かつ過去に出国命令を受けたことのない場合の上陸特別拒否期間について規定しており、退去強制の日から5年間は再び日本に入国することが出来ませんというものです。

最近一部マスコミ等でオーバーステイにあたる者に対して「非正規滞在者」という表現を使用していることと関係しているのか、時々ご相談の方から「オーバーステイは犯罪じゃないですよ」というお話しをされることがあります。

しかし,出入国管理及び難民認定法ではオーバーステイは「三年以下の懲役若しくは禁錮若しくは三百万以下の罰金に処し、又はその懲役若しくは禁錮及び罰金を併科する」と規定されていることから、あくまで法律上オーバーステイは罰則のある犯罪です。

オーバーステイは「非正規滞在」だから「非正規労働者」みたいなもので、特に法律上問題はないだろう,と思われることが,上記のようなお話をされる理由かもしれませんが,法律上は誤りです。オーバーステイで逮捕されるということは全く珍しくありませんし,仮に刑事事件で扱われなくても行政処分として出国後5年間は日本に上陸が出来ません。

それゆえオーバーステイを安易に考えることは出来ません。

なお出入国在留管理局を含む法務省、総務省等の官公庁は、オーバーステイに対する表現を「不法滞在」で統一しています。

再入国できる場合とは?

入管法7条1項各号では、外国人が日本に上陸するための条件が規定されています。

この条件に適合しない場合、本来なら日本に上陸することができませんが、法務大臣が特別に上陸を許可すべき事情があると判断した場合に、法務大臣の裁量により上陸が認められる場合があります。この法務大臣による許可を「上陸特別許可」といいます。

H21年に入管法が改正され上陸拒否の特例(法5の2)が設けられました。

入管法5条1項で規定する上陸拒否事由に該当する場合であっても、法務大臣が法務省令に該当する場合であって相当と認める時には、入国審査官,特別審理官,法務大臣と三段階の手続を経る上陸特別許可(法12条1項)を行わずに、入国審査官が上陸許可の証印をできるようにする規定です。(『入管法と外国人労務管理・監査の業務』857P)

申請の方法として、あらかじめ在留資格認定証明書交付申請を行い、審査の結果、同証明書が交付されると申請人は在外公館で査証発給を得て、我が国の空港などで上陸申請を行い日本に入国します。

 

上陸特別許可、上陸拒否の特例に関してご心配や困りごとのあるという方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所内の専用窓口(03-5989-0843)までご相談ください。

オーバーステイになった後もビザを取得することができるか?

2022-06-29

(この事例は入管手続きについて解説をするための架空のものであり,実在する地名と事例は必ずしも関係ありません)。

Xさんは留学生として来日し,日本で専門学校を卒業しましたが,留学ビザが切れた後も日本での在留を続け,飲食店でのアルバイトなどをしながら生計を立てていました。

ある時,Xさんは路上て職務質問を受け,警察官に在留カードを確認され,オーバーステイとなっていることが明らかになったため現行犯人逮捕されてしまいました。

Xさんは,改めて日本でビザを取り直して在留を続けたいと思っています。

オーバーステイ後の資格の変更/取得

Xさんのように,ときたま,「元々在留資格をもっていてオーバーステイになってしまったけれども,新しく在留資格を取得することができるか」という相談があります。

これについて結論として,オーバーステイとなった後で在留資格を取得することは原則としてできません

在留資格というのは,日本に上陸しようとする際に,又は,日本国内で外国国籍として生まれた場合に取得するものであり,日本で在留している間に一度ビザが切れてしまうと,日本にいながら再度ビザを取得するという手続きはないのです。

「在留資格認定証明書」を取得するという手続きがありますが,これは,

①まだ日本にいない人が,日本へ上陸する前にビザがあることを証明する

②日本で別の在留資格をもっている人が,在留資格を変更したり転職したりするときにビザがあることを証明する

というために行うものです。

そのため,一度ビザが切れてしまった人は,在留資格認定証明書を取ることもできません。

同様の理由で,在留資格の変更をすることもできません。

「資格の変更」というのは,有効期間内のビザを変更する,というものです。有効期間が切れてしまっているビザでは,それを別のものに変更するということもできないのです。

Xさんのように,一度オーバーステイとなってしまうと,基本的に,在留資格を新しく取得するということはできないのです。

日本での在留が認められる場合

オーバーステイとなってしまった後,日本での適法な在留が認められる場合として,在留特別許可が出た場合があります。

在留特別許可というのは,本来であれば強制送還の対象となる人であっても,法律で定められている場合に該当する人に対しては,特別に在留を認めることがあるというものです。

  • 永住許可を受けているとき。
  • かつて日本国民として本邦に本籍を有したことがあるとき。
  • 人身取引等により他人の支配下に置かれて本邦に在留するものであるとき。
  • その他法務大臣が特別に在留を許可すべき事情があると認めるとき。

以上のような場合には,法務大臣(もしくは各出入国在留管理局長)が在留特別許可をすることができます。

そして在留特別許可が認められた場合の大半は,一番最後の「その他法務大臣が特別に在留を許可すべき事情があると認めるとき」として許可がなされています。

どのような場合にこの在留特別許可が認められるのかという点について,はっきりとした基準があるわけではないのですが,日本に家族がいるのかどうか,どのような理由で強制送還の対象になっているのか,といった事情を総合的に考慮して決められることになります。

特に,日本人の配偶者がいる,日本人の子供がいて実際に扶養しなければならない,といった事情は,在留特別許可を認める上で大きなプラスになる事情です。

Xさんの事例のように,単に留学生として在留しており,アルバイトなどで生計を立てていたというだけでは,在留特別許可をもらうことは非常に難しいでしょう。

オーバーステイとなってしまった後も日本での在留を続けたいという場合,どんな理由で日本に残りたいのかという点が非常に重要です。理由次第では在留特別許可が認められやすいという場合もありますし,「およそ無理でしょう」という場合もあります。

オーバーステイ,在留特別許可については弁護士にご相談ください。

オーバーステイだと必ず入管に収容されてしまうのか

2022-05-24

(この事例は入管手続きについて解説をするための架空のものであり,実在する地名と事例は必ずしも関係ありません)。

Xさんはコロナ禍になる2018年に母国の家族に仕送りをするために日本に働きに来ました。

はじめは就労ビザを持っていたのですが,コロナ禍になってしまい会社をクビになり,ビザの更新ができないまま在留期限を過ぎてしまいました。

ビザがなくなっても家族に仕送りをしなければならないため,Xさんは日本でアルバイトを続けていたのですが,そうした中で日本人のYさんと出会い,結婚することにしました。

Xさんは日本でYさんと正式に暮らし続けたいと思い,入管へ連絡しようとしています。

入管への出頭

事例のXさんのように,在留資格をもっていない方(=オーバーステイになってしまった人)が自分から入管へ行くという場合には,大きく二通りのパターンがあります。

  1. 自国へ帰国するために名乗り出るというパターン
  2. 日本で生活する理由があるため新たにビザを求めるというパターン

1のパターンは,出国命令制度を利用したもので,早期に帰国ができたり,日本へ再入国する時の有利な事情となります。

退去強制されないためにはどうしたらよいか

本来であれば,「違反調査」⇒「審理」⇒「送還」と言った手続きを踏むことになりますが,出国命令制度によると,オーバーステイであることを確認した後,ある程度の期間を指定されます。その期間内に日本から出国すればよい,という制度です。

2のパターン,上記の事例のようなパターンですが,これは「出頭申告」とも言われるもので,在留資格を認めてもらうためにあえてオーバーステイであることを入管に出頭して申告する(言う)というものです。オーバーステイも,出入国管理法違反になりますので,例えば警察官の職務質問などでオーバーステイが発覚すると,その場で逮捕されてしまうことになります。

そのように,いつ逮捕されるか分からないという状態を解消するためにも,日本で生活し続けることについて何かしら正当な理由がある場合には,むしろ,こちらから入管へ行って説明し,在留資格を認めてもらうための手続きを進めることが必要になります。

待っていても,在留資格はもらえないということです。

オーバーステイだと収容されるのか

Xさんの事例のように,すでにオーバーステイになった状態で入管へ出頭する時,その場で入管に収容されてしまうのではないかと恐れる人も多くいるでしょう。

ですが,自分から出頭しているという事情は,収容を回避したり,仮放免を認めてもらうためにも重要な事情になります。

確かに,オーバーステイの状態になっているということは,入管法上,「収容」(逮捕のようなもの)が出来る状態です。ですが入管当局の運用として,

収容と同時に仮放免をする

ということがたまにあります。

どういうことかというと,「本来であれば入管に収容する事案なのだけれども,いろいろな事情を考慮して,その日のうちにすぐ釈放してあげます。ただし,最終的なビザについての処分が決まるまでの間,1か月~2か月に1回,入管にちゃんと来てください」というものです。

このような「収容と同時に仮放免」がなされるような事案だと,事前に入管から,身元保証人と一緒に来てくださいとか,保証金として10万円を持ってきてください等と言われることがあります。そのような事前の指示があった場合には,仮放免が認められる可能性が相当高く,その日のうちに収容される可能性は低いということですから,指示に従って準備をしましょう。

さて,Xさんの事例のように,オーバーステイとなった後に日本人Yさんと結婚したという場合だとどうでしょうか。

個別の事情によって異なりますが,日本人Yさんとの結婚がビザ目的のものではなくて,Yさんも仕事をしていて収入がきちんとあるという場合や,一緒に生活をしていてXさんが逃げてしまわないようにYさんがきちんと様子を見ることができそうだ,と判断してもらえれば,オーバーステイの中で入管へ出頭したとしても直ちに収容されることなく,拘束されないままで在留特別許可について審理を受けられる場合があります。

特にXさんのような事例の場合,真摯な結婚で,ビザを目的として偽装結婚等ではないと判断してもらえれば,在留特別許可が認められやすい事案です。

オーバーステイというのは,確かに逮捕されてしまったり入管施設に収容されてしまったりする可能性がありますが,状況によっては収容そのものを回避したり,なるべく早い段階で仮放免認めてもらえたりするという場合もあります。

今現在でもオーバーステイの状態で悩んでいる方や,恋人・婚約者がオーバーステイになってしまっているという方は,一度弁護士までご相談ください。

« Older Entries

トップへ戻る

05058309572 問い合わせバナー