収容されずに出国することはできるのか

日本に滞在する外国人については,出入国管理及び難民認定法(いわゆる入管法)において在留を管理する制度が設けられています。そして日本に在留する方については,在留の目的に応じて在留資格が付与され,在留の期限が設定されます。

この在留資格にない活動をしてしまった場合や,在留の期限を過ぎて日本に在留し続けた場合,退去強制(強制送還)されてしまうことがあります。退去強制の手続が始まってしまうと,入管の施設に収容されてしまう可能性があります。というのも,現在の出入国管理庁は「全件収容」を原則としており,退去強制に該当すると思われる人については,全員収容するとの手続をとっているからです。

入管の施設に収容される場合については,こちらのページでも解説しています。 ⇒入管に収容されたらどうすればいいか

退去強制される可能性がある方には,「もう日本にいる必要はないから早く母国に帰りたい」という方や「日本からの出国は仕方ないと思っているが入管に収容されたくない」という方もいます。そのような場合,出国命令制度を通じて日本から出国することで,入管への収容を回避することが出来ます。

このページでは,出国命令制度の概要について解説します。

出頭命令制度の内容

出国命令制度とは,簡単に説明してしまうと,「本来であれば退去強制の対象となる人のうち,一定の条件を満たす人については収容することなく手続をすすめることにして,決められた期間の内に自費で出国した場合には日本への再入国の条件も緩める」というものです。

出国命令制度の対象となる人については,次の項で細かく説明します。

この制度の対象となった場合には,入管に収容されることなく,出国準備期間(通常15日以内)が設定され,その期間中に日本から出国しなければならなくなります(入管法55条の3第1項)。

設定された出国準備期間を過ぎてしまうと,不法残留として3年以下の懲役又は300万円以下の罰金という罰則が科されます。

また,この出国命令を受けた場合には,自費で日本から国籍国に出国しなければなりません。航空券は,自費で購入しなければならないということになります。

一方,この出国命令に従って出国した場合,日本への入国禁止期間(上陸禁止期間)が短縮されて「1年」になります。通常,退去強制された場合には日本への入国禁止期間(上陸禁止期間)は「5年」となります。

 

出頭命令制度の対象となる人

出頭命令制度の対象となる「一定の条件を満たす人」について解説します。

条件は大きく分けると,3つです。

1 出頭する意思を持って自ら入国管理局に出頭した

出国命令制度の対象となるのは,「自ら」,「出国する意思で」入国管理局に出頭した人に限られます。

既に摘発を受けていたり,退去強制の令書が発布されている方は出国命令の対象とはなりません。また,在留特別許可を求めて日本に在留することを希望して出頭する場合も出国命令の対象とはなりません。出国命令制度は,あくまで,「本来であれば退去強制の対象となる人が自発的に出頭して出国する意思を示した場合には一定の便宜を与える」というものです。

 

2 はじめてオーバーステイによって退去強制の対象となる

過去に退去強制されたり出国命令を受けて日本から出国したことがある人が,再び出国命令制度によって出国することはできません,2度目以降の場合には,正式な退去強制の手続に付されることになります。

また,初めての退去強制であったとしても,その理由に制限があります。出国命令制度の対象となるのは,不法残留(オーバーステイ)となっている外国人に限られ,不法残留とは,在留期間を過ぎてしまった場合や,在留資格の取消後の出国準備期間を過ぎてしまった場合が該当します。

別の退去強制の理由(例えば薬物犯として懲役刑の判決を受けた場合,パスポートや在留カードを偽造していた場合)もあった場合には,たとえオーバーステイ状態であったとしても出国命令制度の対象とはなりません。オーバーステイ以外にも退去強制の理由がある場合には,やはり正式な退去強制の手続に付されてしまい,収容される可能性があります。

 

3 速やかに日本から出国する準備ができる

出国命令による出国は,あくまで自分の意志による出国です。そのため,出国のための準備ができている必要があります。具体的には,パスポートや航空券の準備ができている,もしくは近いうちに準備が整う手筈ができている場合,金銭面での用意ができている場合です。

出国の費用が用意できてない方は出国命令制度の対象とはなりません。

 

大まかに分けて,以上の3つについてすべて満たしている方については,出国命令制度の対象となります。

自分も出国命令制度の対象となっているかどうか分からない方,出国しようと思っているが収容されるのは嫌だという方は,一度ご相談ください。

 

出国命令制度の適用を受ける前に考えたいこと

出国命令制度の適用を受けた場合のメリットは,収容されないという点,日本への再入国禁止期間が短縮されるという点です。

強制送還されるかもしれない身としては,メリットが多い制度のようにも見えますが,出入国管理局へ出頭する前によく考えておかなければならない点があります。それは,出頭命令の対象となった場合には必ず出国しなければならなくなるということです。

不法残留の状態となってしまっている方には,「本当だったら日本に残りたいけれども法律がよく分からないまま不法残留になってしまった」,「入管の職員から在留資格の更新は認められないと言われたので放置していたが,正式に日本に残る手段があるならそちらでいきたい」という方もいます。

出国命令制度の対象となると「自分で日本から出ていきます」という意思表明をすることになってしまいます。これを覆すのは難しくなってしまいますし,日本に残りたいと言うと「前に出国すると言っていたのに何で?」と矛盾した態度を指摘されてしまいます。出国命令を受けるために出頭しようとするときには,「本当に日本から出ていくことになるけれどもいいのか」ということをよく考えおかなければなりません。

日本には約8万人以上の不法残留(オーバーステイ)の外国人の方がいるとされています(令和2年7月1日時点の出入国在留管理庁の発表によると8万2616人)。それだけ多くの方がご自身の日本での在留について不安を抱えていらっしゃることと思います。不法残留の状態は,基本的に,放っておいて事態が好転することはありません。出国したくても収容されるのが怖くて飛行機や船には乗れないという方もいらっしゃるかもしれません。

弁護士としてお手伝いできることがあるかもしれません,まずはご相談ください。

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