今回は,不法残留(オーバーステイ)について解説をしていきます。
これまでも本HPではオーバーステイに関して解説記事を更新していましたので,併せてごらんください。
不法残留は起訴されるのか,不起訴になることは?
不法残留(オーバーステイ)は,入管法違反として,刑事処分の対象となります。
例えば,オーバーステイの状態で警察から職務質問を受けたり,交通違反の取り締まりを受けたりして,オーバーステイであることが発覚してしまうと,その場で警察官に逮捕されてしまうことになります。
入管法違反であっても,刑事事件として取り締まりをするのは警察官であり,入管職員ではないことに注意が必要です。
オーバーステイの罪で逮捕されてしまうと,警察官や検察官からの取り調べを受け,
・いつから日本に来たのか
・最初はビザを持っていたのか,または最初からビザを持っていなかったのか
・どんな目的で日本に入国したのか
・ビザがない状態でどこに住んでいたのか,働いていたのか
等といった事情について詳しく調査されます。
一連の調査が終わるまで,10日間~20日間の勾留をされることになります。
調査が終わると,オーバーステイについて,検察官が起訴する/不起訴にするという判断をします。
入管法違反の内,オーバーステイの場合には,
・オーバーステイの期間がどのくらい長いのか
・不法入国をしたのか/最初は有効なビザを持っていたのか
・日本に入国した目的は何か
という点から判断をすることになります。
オーバーステイの期間が1年以内と短かった場合や,在留期間について更新の手続きを試みていた場合等の場合には,情状が軽いとして不起訴となる場合があります。
不起訴になったら日本には残れる?
オーバーステイについて不起訴になると,警察署から一度釈放されることになります。
では,日本に引き続き残れるのかというと,そういうわけではありません。
オーバーステイについて不起訴となった場合,検察官は各地方の出入国在留管理局に対して,
「○○さん(外国人の方)について,オーバーステイとして検挙しましたが,不起訴処分にしますので,後の入管手続きはそちらでやってください」
というような通報を行います。
この通報を受けて,今度は入管の職員が警察署までやってきます。
そして,入管の職員が,警察署から釈放になる外国人の方を各地方の入管へと連行していきます。
入管でも警察や検察と同じような捜査を行い,さらに追加して,その外国人の方の出入国の履歴や,国籍のある国についての調査を行います。
入管での調査の結果,日本でのオーバーステイが明らかになり,かつ国籍国がどこであるか(強制送還するときの送還先がどこであるか)という点が明らかになれば,退去強制令書が出され,退去強制(強制送還)の手続きが進められることになります。
この,強制送還に関する手続きは,不法残留(オーバーステイ)に関する刑事手続きが不起訴処分として終わったとしても,関係なく進められるものになります。
不起訴になったから大丈夫,と安心することはできないのです。
オーバーステイになった後も日本には残れないのか
オーバーステイとなった後も日本に在留することを希望する場合,在留特別許可を獲得するしかありません。
但し,在留特別許可が認められるのは,いくつかのパターンがあります。
在留特別許可を認めるかどうかについては,明確な基準があるわけではありません。
法務大臣,もしくは各地方の入国管理局長が許可をするかどうかについては,「ガイドライン」が定められています。ガイドラインでは,特に,日本での家族関係があるかどうかが重要視されています。
例えば,オーバーステイとなった後でも日本人と結婚した方や,日本人との間で実子をもうけた方や実子として扶養する子供がいるという場合だと,在留特別許可を出す方向で考慮されることになります。
なお,不法残留の期間が長いことが不利になると言われることがありますが,実際には「日本と定着している期間が長いほど,日本での生活を認める必要がある」という理由の一つになります。
オーバーステイとなった方や,不法残留で検挙されたけれども日本での在留を希望するという方は,在留特別許可に向けた活動をしていく必要があります。