オーバーステイと強制送還

日本でオーバーステイとなってしまった場合,もう日本に在留することはできないのでしょうか。
日本に在留している外国人の方がオーバーステイとなった場合について解説します。

そもそもオーバーステイとは

一般的にオーバーステイ(OSとも略されます)とは,法律上の正しい言葉でいうと,不法残留というものになります。不法残留とは,在留資格を持って日本に滞在していた人が,在留資格の延長などをせず,在留期間を超えて日本に滞在することを言います。
在留期間が切れてしまうとオーバーステイとなりますが,例外的にならない場合もあります。例えば,在留期間の延長を申請していたけれども,延長の審査に時間がかかってしまい,延長の許可が出る前に在留期間が満了してしまった,という場合です。延長のための手続きをきちんと行っていたのであれば,許可の決定が出るまでの在留については不法残留とはされません。
不法残留は出入国管理法違反(入管法違反)で,多くの初犯の場合には罰金刑が科されることが多くなっています(出入国管理法70条の違反,3年以下の懲役もしくは禁固または300万円以下の罰金,場合によってはその両方を科される)。
入管法違反もれっきとした刑事事件ですし,罰金のみであっても前科となります。オーバーステイは放っておいてもよい方向へ進むことはありません。何らかの事情でオーバーステイとなってしまった場合には,まずは弁護士に相談しましょう。

 

オーバーステイが発覚するとどうなるのか

 オーバーステイが発覚した場合,入管法違反として刑事罰が科されることがあります。また,出入国管理局による処分として,退去強制,いわゆる強制送還の手続きが始まることになります。
 強制送還されると,1回目の強制送還の場合には5年間,2回目以降の強制送還(リピーターなどともいわれます)の場合には10年間,日本への再入国が禁じられます。もちろん,この期間が明けたからと言って,すぐに再入国できる様になるわけではありません。過去に日本でオーバーステイとなったという記録は残り続け,再入国の際にも不利な事情として扱われることになります。

 

オーバーステイになったらどうしたらよいのか

 まず大前提ですが,オーバーステイにならないように気を付けましょう。
 どんなに忙しくても,日本にいる間は在留期間を常に忘れず,在留期間の6か月前になったら延長の申請の準備をするよう心がけるべきです。
 そのうえで,何らかのやむを得ない事情でオーバーステイとなってしまった場合,必ず強制送還となるわけではありません。在留特別許可を受けた場合には,日本に滞在し続けることができます。在留特別許可とは,本来であれば日本での在留資格が認められない人に対して,人道的な理由から日本での滞在を特別に認めるべき事情がある場合にのみ認められるものです。
 出入国管理法上,在留特別許可が認められる場合があげられていますが,より詳しいガイドラインが作成されており,それに従って「在留特別許可を認める事情/認めない事情」を総合して判断されることになります。
 オーバーステイというのは出入国管理法違反ですし,在留期間の延長の申請をしなかった場合には求められる手続きを誠実に行っていないとして,マイナスの評価を受けることになります。オーバーステイ後に在留特別許可を受けようとする場合には,なぜオーバーステイになってしまったのか,なぜ在留特別許可が必要なのか,という点を出入国管理局に対して積極的に示していかなければなりません。
 また,在留特別許可を求めている間は,不法残留の状態が続くことになります。その場合,入管の施設に収容されてしまうこともあります。在留特別許可を得るまでの手続きには数か月以上かかることもあり,その間の施設収容にも対処しなければなりません。
 施設収容に対する対処については,こちらも参照してください。
 

まとめ

「オーバーステイ=強制送還」というわけではありませんが,オーバーステイ後の在留特別許可が認められる場合は,限定的です。
在留特別許可が認められるから大丈夫だろうと思って準備もしないで出入国管理局に出頭すると,施設に収容されてしまうことを覚悟しなければなりません。
なんとかなるから大丈夫,と思うのではなく,まずは専門の弁護士へ相談しましょう。
場合によっては,在留特別許可を目指すのではなく,早期に帰国して正式に再入国を目指す方が早く手続きが進むこともあります。
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