オリンピックのためのビザ

オリンピックの開催国には,毎回全世界から多数のアスリートが入国します。

報道などによれば,次回の東京オリンピックには,205か国から11000人以上が参加する予定の様です。

本年のオリンピックの開催については公衆衛生上の問題,世論等,安全に開催できるのかどうかについてはまだまだ課題は散見されていそうです。

そのような問題は一旦わきにおいて,オリンピックや国際大会などへの参加のために,アスリートが日本に入国する場合,どのような在留資格(ビザ)を取得する必要があるのか考えてみます。

アスリートが入国する場合の在留資格は3種類

外国人アスリートや外国人スポーツ選手が日本に入国しようとする場合には,3種類の在留資格(ビザ)が考えられます。

それは「短期滞在」,「興行」,「特定活動」の3種類の在留資格(ビザ)です。

これらすべての在留資格をどれでも取得することが出来る,というわけではなく,どのような大会・リーグに,どのような立場の選手(プロ/アマチュア)として参加するのか,ということに応じて,認められる在留資格が変わってきます。

日本に入国する外国人の方は,日本での活動に応じた在留資格を取得しなければなりません。在留資格制度そのものに関する解説は,こちらのページからどうぞ。

⇒在留資格を取得する時に気を付けたいこと

・短期滞在の在留資格は,日本で収入や所得を得る活動以外の活動を,日本で短期間,行うために認められるものです。

短期滞在の在留資格で収入や報酬をもらう活動(プロスポーツ選手として競技を行ったり,報酬を受け取ったりすること)は資格外活動や不法就労に当たる可能性があります。

不法就労についての解説はこちら⇒不法就労,不法就労助長罪とは何か

・興行の在留資格は,演劇,演芸,演奏,スポーツなど活動や,芸能活動を行うために認められるものです。

・特定活動の在留資格とは,法律に列挙されている活動以外に個別の活動について日本で行うことを認めるというものです。法務省が46種類(令和2年2月1日時点)の活動を列挙し,これらについても在留資格を認めるという運用を行っています。スポーツの活動については,告示の6号というものに該当します。

短期滞在の在留資格では報酬が発生する活動を行うことはできませんので,興行か特定活動(告示6号)の在留資格を取得することになるでしょう。

短期滞在,興行,特定活動のそれぞれについて,スポーツ選手の場合に当てはめてみます。

★短期滞在とすべき場合

短期滞在の在留資格で入国できるスポーツ選手,アスリートの方は,国の代表チームや代表選手として日本で行われる世界選手権,協議会,国別対抗戦,親善試合などに参加する場合,アマチュア選手として大会に出場する場合等です。

プロ・アマチュア問わず,短期滞在の在留資格の場合には,報酬が発生する活動に従事することはできません。

★興行とすべき場合

特定の施設で,公衆に競技やスポーツを見せる場合は,興行の在留資格になります。

プロのクラブチームの選手として日本に招聘を受けた場合や,日本で行われるショーに参加して出演料をもらう場合(ボクシングなどの格闘技が典型的な例です)には,「興行」の在留資格になります。

プロ選手としてチームに所属し,所属チームが興行収入(チケット代やグッズ代)を得て選手に報酬を払っている場合には「興行」の在留資格になりますが,あくまで企業の広告塔として所属するような場合や,アマチュア選手が賞金のある大会に参加するという場合には「興行」に当たりません。

興行の在留資格が認められている具体的な例としては

・日本のプロ野球リーグの1軍,2軍登録選手

・地区独立リーグに所属する野球選手

・Jリーグに所属するチームの選手(フットサル選手の場合には,興行収入で運営されている一部チームの選手)

・バスケットボールのBJリーグの選手

・ゴルフトーナメントに出場するゴルフ選手,大相撲力士(番付は問わないとされている),興行収入のある試合に出場するプロボクシング選手,総合格闘技選手,プロレス選手

等があります(入管審査要領より)。

★特定活動とすべき場合

アスリートに認められる特定活動の在留資格は,「特定活動公示6号」というものにあげられています。

特定活動告示6号は「オリンピック大会,世界選手権大会その他の国際的な競技会に出場したことがある者で日本のアマチュアスポーツの振興及び水準の向上等のために月額25万円以上の報酬を受けることとして本邦の公私の機関に雇用されたものが,その機関のために行うアマチュアスポーツの選手としての活動」と挙げられています。

文言は難しいですが,要するに,日本の団体と契約しているアマチュアスポーツ選手で,月額25万円以上のお給料をもらう場合には,「特定活動」の在留資格を取得することが出来ます。

特定の機関のためにスポーツを行う場合とは,例えば会社の宣伝や技術を競うために作られたクラブチームなどで,選手として活動する場合があります。

特定の機関に所属する形ではなく,個人として大会や競技に参加する場合には,特定活動には該当しないことになります。

 

オリンピックへ出場するときの在留資格は?

少し本題からそれてしまいましたが,オリンピック大会に参加するアスリートの在留資格はどうなるでしょうか。上記の内3つの在留資格のいずれかになりますが,どれになるかわかりますでしょうか。

多くの場合,オリンピックへの参加のための入国は,「短期滞在」の在留資格になります。

オリンピックでは,選手に直接報酬などが支払われるわけではないため,短期滞在中の活動として,オリンピックへの参加ができるのです。また,オリンピック期間は通常,パラリンピックの開催期間を含めても,90日を超えることはあまりないので,在留期間の点でも特段問題がありません。

興行や特定活動の在留資格の場合,在留資格証明書の交付を受ける時間がかかったり,入国審査のために多くの書類の準備が必要となったりしますが,短期滞在の在留資格の場合には,日本での滞在期間中の活動内容を説明することで足りてしまいます。

もちろん,オリンピック出場のために日本に入国した外国人が,他の大会に参加したり試合に出場したりした場合,報酬の有無によっては資格外活動に該当する場合があります。

オリンピックへの参加は,国の代表として,報酬を得る活動ではないために,短期滞在という審査の緩い在留資格で出来るのです。その他の活動も合わせて日本で行うのであれば,活動に合わせた在留資格を取得するか,資格外活動許可が必要となるでしょう。

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