口頭審理で忘れてはいけないこと,日本で在留を続けるため

(以下は解説のための架空の事例です)

事例―MDMAの裁判の後・・・・

Bさんは「定住者」の在留資格で18年間,日本で生活をしていました。日本人の交際相手もおり,日本の企業にも就職していて,出来ればずっと日本で生活し続けたいと願っていました。

しかし,Bさんはある時,仕事がうまく行っていなかったことや友達から勧められたこともあり,MDMAを使ってしまい,警察に逮捕されました。

Bさんには懲役1年6月,執行猶予3年の判決が言い渡さた後,今度は入管からの呼出がありました。

Bさんは,インタビューの中でも日本に残りたいことを伝えましたが,口頭審理では「あなたは強制送還になります」と言われました。

Bさんとその交際相手のかたは,弁護士に相談することにしました。

口頭審理とは何か?

口頭審理とは,入国審査官が「退去強制事由がある」と判断をしたことに対して,特別審査官が再度審査をするという手続きのことです。

強制送還になるまでには,

  1. 強制送還となる事実の発生(例:オーバーステイ,不法就労,虚偽の申請,犯罪歴などなど)
  2. 入国警備員による調査
  3. 入国審査官による審査

という段階がありますが,「口頭審理」という手続きは,この「3」の次にある手続ということになります。

口頭審理期日は,入管の審判部門でのインタビューとなります。

東京入管の場合には,6階のエレベーターを降りて,ちょうどその裏にある部屋になります。名古屋入管の場合には3階です。

口頭審理の場では,,入国審査官の判断が間違っていたかどうか,が審理の対象になります。

そのためまずは,強制送還の理由となった事情について再度細かく質問を受け,その後,日本での在留に関する質問をされます。

口頭審理で忘れてはいけないこと

もしも日本での在留を続けたい方で,これから口頭審理を受ける方がいれば,覚えておいてほしいことがあります。

それは,口頭審理を受けただけでは在留特別許可は出ないということです。

どんな事案であっても,口頭審理の結果として在留特別許可をするということはできません。これは,法律上,できないからです。

口頭審理の結果というのは,

  1. 入国審査官の判断は間違っていた
  2. 入国審査官の判断は間違っていない

この二つしかありえません。ですから,口頭審理の場で在留特別許可がされなかったことで,パニックになってはいけません。

在留特別許可を望むのであれば,口頭審理の結果出てから3日以内に,法務大臣に異議の申出をしなければいけません。異議の申出があってから初めて,在留特別許可をするかどうかという判断が始まるのです。口頭審理の結果を受けて諦めてしまい,異議の申出をしないでいると,在留特別許可を受けるチャンスをつぶしてしまうことになりかねません。

口頭審理が終わったら必ず異議の申出をする,ということは,忘れてはいけません。

在留特別許可までの流れが複雑すぎる?

現在の法律によると,在留特別許可がされるかどうかの判断には,

  1. 強制送還となる事実の発生(例:オーバーステイ,不法就労,虚偽の申請,犯罪歴などなど)
  2. 入国警備員による調査
  3. 入国審査官による審査
  4. 特別審査官による口頭審理
  5. 法務大臣(もしくは各地方入管局長)の裁決

という手続きを踏まなければならず,事実を認めて争っていない場合であっても,何度もインタビューを受ける必要がありました。一度廃案になってしまいましたが,入管法の改正案の中には,「在留特別許可についても窓口で申請ができるようにする」というものもありました。これまでは,入管側のアクションを待たなければならなかったものが,自分たちでも申請ができるようになる,という改正案です。

将来的には,在留特別許可についても手続きが大きく変わってくるかもしれません。

在留特別許可に関する手続きや,口頭審理に向けた手続きについてご不安がある方は,弁護士,行政書士といった専門家に早めにご相談ください。

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