日本に留学中の外国人は働けるのか

留学生を雇うと問題があるのか?

※このページは主に日本の事業主の方に向けた解説です。

留学のために来日する外国人留学生は年々増加しており,平成30年の統計によると,約33万人の外国人留学生が日本に在留しています(なお,日本における大学生の総数が約280万人程度と言われています)。

完全に自分一人で事業を行っている方を除けば,大半の事業主の方は人を雇って事業を営まれているかと思います。また,事業の形態や規模にもよりますが,正規の社員ではなく,アルバイトとして人を雇っているという方もいらっしゃるかと思います。

そして,現在のように外国人留学生が増加している中で,「留学生がアルバイト応募してきたのだけれど雇っていいのかな」という質問を持たれる方もいらっしゃいます。

今回は,留学生を雇う場合の問題点について取り上げます。

「留学」の在留資格の基礎知識

留学の在留資格とは,日本の大学,大学院,高校,専門学校などで教育を受けることを目的とした在留資格です。在留期間は3か月~4年3か月の幅があり,在籍している学校や卒業までの見込みなども考慮して期間が決定,延長されます。

留学生は,あくまで教育を受けるために日本に来ているのですから,それ以外の活動は「資格外活動」となり,出入国管理局に許可を得て行わなければ出来ません。

出入国管理局から許可を得ないで資格外活動を行っていた場合,留学生は母国へ強制送還される可能性がありますし,そのような留学生を雇っていた方は不法就労助長罪に問われる可能性もあります。

また,日本に留学している間だけ,日本に在留できる在留資格です。留学先の学校を卒業した場合には新たに日本での在留資格を取得しない限りは日本から出国しなければなりません。

 

留学生を雇う場合に気を付けたいポイント

資格外活動許可を得ていますか?

一番に気を付けなければならないのは,不法就労助長罪とならないことです。

出入国管理局は,外国人留学生を雇う場合には,在留カードを確認することを義務付けています。

出入国管理局の注意喚起パンフレット

このパンフレットで記載されているように,在留カードの裏面に資格外活動について「許可」とあれば次に問題となる時間内であればアルバイトとして雇うことができます。

この確認義務は,事業主の方に対して課されているものです。人手の足りないアルバイトの面接では,留学生が「在留カードを忘れてきたが,アルバイトの許可はもらっている」と口頭で言っただけで確認を済ませて採用してしまうこともあるようです。仮に留学生が口頭でそう言っていたとしても,それが嘘だった場合,事業主の方は「だまされた」と言って罪を逃れることはできません。

手間がかかったとしても,在留カードの提示を求めましょう。仮に在留カードの提示を求めて,それを断られるようなことがあったのであれば,不法就労の可能性を疑うべきですし,そのような留学生を雇うことは非常にリスクが大きな行為です。

 

時間数は問題ありませんか?

資格外活動許可を受けていたとしても,週28時間以内の就労でなければなりません。

これは,労働基準法の定めではなく,出入国管理法上の独自のルールです。

留学生は教育を受ける事が本分であるから,あまりにアルバイトで精を出すことで勉学がおろそかになってはいけない,という目的から設けられた制限です。実質としては,留学生の在留資格を隠れ蓑にした不法就労を規制するものです。

週28時間というのは,一週間の就労時間の合計時間数の制限です。いわゆるシフトとして入っていた時間だけでなく,残業していればその時間も含みます。1日当たりの時間については制限はありません。

夏休み期間など,学校が長期間の休暇となる場合には,週28時間制限が緩和されます。

 

業種は問題ありませんか?

留学の在留資格の場合には,他の在留資格と比べて働ける職種の種類が広がっています。コンビニやファミレス,工場でのライン作業など一般的な業種はアルバイト可能です。

ただ,その場合であっても風俗業につくことはできません。

ここでいう「風俗業」とは一般に言われるような,いわゆる「風俗」ではなく,風俗営業法の「風俗営業」のことを指します。例えばクラブやラウンジでの接客業や,ガールズバー等での勤務がこれに該当します。

風俗営業をされている方は,外国人留学生をアルバイトであっても雇ってしまうと,不法就労助長罪として検挙される可能性もあります。

 

日本人労働者と差別がありませんか?

留学生であっても,日本で働く以上は,労働基準法の適用を受けます。

そのため,最低賃金を下回る時給で雇ってはいけませんし,時間外勤務や深夜勤務に対しては割増賃金を支払わなければなりません。

また,見落としがちなのですが,留学生アルバイトと,日本人アルバイトの待遇について理由のない区別を設けることも労働基準法の違反となります。言語や文化が違う以上,雇用のかんきょうにちがいが生じることは避けられませんが,合理的な理由のない区別は「外国人差別だ」とみなされてしまう可能性もあります。

外国人の雇入れる場合には,文化や言語の違いについても考慮した上で,雇入れる必要があるかどうか考えるべきでしょう。

 

在留期間は問題ありませんか

前述のとおり,在留カードを確認していれば,オーバーステイ,不法残留の状態の人を雇ってしまうことはないかと思います。

ここで考えたいのは「外国人留学生が日本に居られる期間は決まっている」ということです。

日本人の学生さんも,学校への在籍期間は決まっているかと思いますが,外国人の場合には「日本に居られる期間」自体が厳格に決まっています。そのため,アルバイトとして採用してから働いてもらえる期間には,日本人以上に厳格なリミットがあります。

日本人の学生であれば,場合によっては「学校を卒業してからもしばらくアルバイトとして働く」というかたや,「卒業後は正社員としてそのまま働き続ける」という方もいるもしれません。

しかし,外国人留学生の場合には,日本に居られる期間に制限があるのため,そのように長期間にわたって働いてもらうということは期待できません。一部の職種であれば,正社員となって新たな在留資格を取得することができるかもしれませんが,留学生が日本で就労の在留資格へ切り替えることはまだまだ少ないというのが現状です。事業主としては,留学生の場合には,より「いつまでアルバイトでいてくれるのか」を厳密に考えて人事戦略を立てなければなりません。

まとめ

ここまで,外国人留学生をアルバイトで雇う際に気を付けたい点について解説しました。

本文中でも触れた通り,留学生であっても労働基準法の適用がありますし,社会保険など日本人同様の雇用上の問題点はあります。

一方で,若い労働力として外国人留学生に期待する部分もあるでしょう。

留学生のアルバイトについて不安がある方は一度弁護士へ相談してみるのがよいでしょう。

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