日本人配偶者ビザで強盗事件を起こしたら?在留資格・強制送還への影響を解説

弁護士と依頼者

想定事例

中国人のAさんは日本人の妻と結婚し、「日本人の配偶者等」の在留資格で10年間日本に暮らしています。ある日、Aさんがコンビニ強盗の容疑で警察に逮捕されました。
Aさんの家族は、「刑務所に行くのか」「ビザはどうなるのか」「強制送還(きょうせいそうかん)されるのか」と不安に思っています。現在、Aさんは警察の取調べを受けており、家族は今後の刑事手続と在留資格への影響について頭を抱えています。

外国人が刑事事件を起こした場合に問題になる2つの手続

外国人が日本で刑事事件を起こすと、「刑事手続」と「入管手続」という2つの別個の手続が問題になります。

まず一つは警察・検察・裁判所による刑事手続であり、これは日本人の場合と同様に、犯罪の嫌疑に対して逮捕・勾留(又は在宅捜査)、起訴、裁判と進み、有罪なら刑罰が科されます。
もう一つは出入国在留管理庁(入管)による入管手続で、こちらは日本に在留してよいかを判断する行政手続です。刑事手続で有罪となった場合、その内容次第では入管法上の退去強制手続(強制送還の手続)が開始される可能性があります。

重要な点は、この2つの手続は別個に進行するということです。刑事裁判で有罪か無罪かに関係なく、入管法の定める退去強制事由(後述)に該当すれば、行政上の手続で強制送還が検討されます。たとえ刑事罰を受けなくても入管法違反(例:不法滞在)があれば退去強制の対象となりえるのです。

なお、逮捕・勾留されたからといって直ちに在留資格(ビザ)が失われることはありません。ただし、身柄拘束中に在留期間が切れてしまうと更新が難しくなる可能性があるため注意が必要です。外国人が事件を起こした場合、刑事弁護においても在留資格への影響を常に意識することが重要となります。

強制送還(退去強制)とは何か

強制送還(退去強制)とは、入管法に基づき「日本に在留させることが適当でない外国人」を強制的に本国等へ送還する手続です。

法律上の根拠は出入国管理及び難民認定法(入管法)第24条で、ここに強制送還の理由となる退去強制事由が具体的に列挙されています。典型例として、不法入国・不法滞在資格外活動の重大な違反一定の重大犯罪の有罪判決などが該当します。

強制送還は刑罰ではなく行政上の措置です。そのため、刑事罰で通常要件となる故意がなくても、客観的に入管法に違反していれば手続が進みます。
たとえば、在留期限をうっかり失念してオーバーステイしてしまった場合でも、法律上は退去強制の対象となりえます。

もっとも、退去強制手続には一定の手続保障も設けられており、入国審査官による違反調査の後、特別審理官による口頭審理、さらに異議を申出れば法務大臣による裁決の機会などが与えられます。また、収容期間中の仮放免(一時的な釈放)や、最終的に在留を例外的に認める在留特別許可の制度もあります。

要するに、強制送還とは「日本から退去させる」ための行政手続ですが、それに至るまでに法定のプロセスを経て、公平性や人道上の配慮も考慮される仕組みになっています。

退去強制とは

刑事処分別に見る在留資格への影響

刑事事件の結果(刑事処分)がどうなるかによって、外国人の在留資格への影響は大きく異なります。以下では、不起訴・罰金・執行猶予付き判決・実刑判決の場合に分けて説明します。

不起訴(起訴猶予・嫌疑不十分など)

検察により不起訴処分となった場合は有罪判決が出ていないため、基本的に在留資格への直接の影響はありません。入管法上の退去強制事由にも該当しません。
ただし不起訴とはいえ検挙歴は残るため、将来的に在留資格更新や永住許可・帰化申請の審査では考慮される可能性があります。とはいえ、有罪による前科が付く場合に比べれば影響は格段に小さく、不起訴を得られれば在留資格維持の面では最善と言えます。

罰金刑

罰金刑とは比較的軽微な犯罪に科される金銭の支払いを命じる刑罰です。罰金のみで済んだ場合、入管法上の退去強制事由には通常該当しません。なぜなら退去強制の主な事由は後述するように拘禁刑の場合だからです。
ただし、犯罪の種類によっては注意が必要です。たとえば薬物犯罪の場合、たとえ刑が罰金であっても有罪となれば退去強制事由に該当しうる規定があります(後述)。一般的な窃盗や過失運転致傷などで罰金刑にとどまった場合は、直ちに在留資格が取り消されたり強制送還となることはないでしょう。

執行猶予付き判決

執行猶予(しっこうゆうよ)とは、拘禁刑を言い渡すものの、その刑の執行を一定期間猶予し、猶予期間中に犯罪を犯さなければ刑務所に入らずに済む制度です。執行猶予付きの有罪判決を受けた場合、原則は退去強制事由には該当しません。入管法24条には「無期または1年を超える拘禁刑に処せられた者(※執行猶予付きは除く)」との規定があり、これが外国人一般に適用される基本的な強制送還理由です。
つまり、執行猶予が付いた場合は退去強制の対象から除外されるのが原則です。たとえばAさんが強盗事件で拘禁刑3年執行猶予5年の判決を受ければ、刑期自体は「1年を超える拘禁刑」ですが執行猶予付きのため、この規定上は強制送還とはなりません。

ただし注意すべき例外もあります。薬物犯罪では、拘禁刑の執行猶予付き判決であっても退去強制の対象になると入管法に定められています。

また、Aさんは日本人配偶者等在留資格ですが、もしこれが就労ビザ等(入管法別表第1の在留資格)であった場合には事情が異なります。
別表第1の在留資格の外国人が一定の犯罪(暴力犯罪や窃盗など)で拘禁刑に処せられた場合、たとえ執行猶予付きでも退去強制の対象となりえます。これは入管法24条4号の2という規定によるものです。
一方、日本人の配偶者等永住者など別表第2の在留資格についてはこの規定は適用されません。
したがってAさんのように日本人配偶者ビザを持つ方であれば、執行猶予付き判決だと退去強制事由にはあたりません。それでも前科が付くこと自体は将来の在留審査にマイナスですので、執行猶予だからといって安心はできません。

実刑判決(拘禁刑の執行猶予なし)

いわゆる実刑となり刑務所に服役する判決を受けた場合、刑期の長さがポイントとなります。入管法は「無期又は1年を超える拘禁刑」の実刑に処された外国人を強制送還の対象と定めています。したがって拘禁刑の刑期が1年を超える実刑判決が確定した場合、原則として刑期満了後に強制送還となります。
具体例として、Aさんが強盗罪で拘禁刑5年の実刑判決を受けた場合、服役終了後に在留特別許可が認められない限り本国に送還される見込みが高いです。一方、実刑でも刑期が1年以下であった場合(例:拘禁刑10か月など)は、先述の規定上の「1年を超える」には該当しないため退去強制事由には当たりません。もっとも、強盗のような重大犯罪では1年以下の刑になることはないでしょう。

留意すべき特殊ケースとして、犯罪の種類による退去強制事由があります。先述の薬物犯罪では刑期に関係なく有罪判決が出れば強制送還となります。また売春に直接関係する業務への従事は、刑事裁判の結果を問わず退去強制の対象とされています。
まとめると、実刑判決で刑期が1年を超えれば退去強制となり、1年以下であれば退去強制とはならない、ただし例外はあるということです。

退去強制を回避・リスク軽減するために重要なポイント

重大な刑事事件では、在留資格へのダメージを最小限にするため早い段階からの対策が肝心です。強制送還を回避(そもそも退去強制事由に該当しない状態に)したり、やむを得ず退去強制事由となる場合でも影響を軽減するために、次のポイントが重要です。

不起訴を目指すこと

前述のとおり、不起訴になれば在留資格への直接の影響は避けられます。不起訴獲得のためには早期に弁護士を通じて被害者と示談を成立させることなどが有効です。
実際、外国人事件では有罪になれば執行猶予の有無に関係なく退去強制更新不許可等のおそれが高まるため、不起訴処分を得ることが非常に大切とされています。不起訴のためにできる限りの弁護活動を受けられるようにしましょう。

在留期限の管理

逮捕・勾留中に在留期間の満了日が来てしまうケースでは注意が必要です。身柄拘束中でも可能な限り在留期間更新の申請を行い、オーバーステイの状態にならないようにします。仮に起訴され裁判中でも、在留期間中であれば更新申請は可能です。
しかし起訴後は更新許可が下りにくくなることもあるため、弁護士と相談し早めに手続きをしておくことが望ましいです。

在留期間を切らしてしまうとそれ自体が退去強制事由(不法残留)に該当してしまい、強制送還を回避するハードルが一気に上がってしまいます。

執行猶予判決の獲得

起訴を免れられなかった場合でも、次善の策として執行猶予付き判決を目指す意義は大きいです。日本人と違い外国人の場合は、有罪判決を受ければ執行猶予であっても安心できませんが、少なくとも入管法上の一般的な強制送還事由(無期または1年超の実刑)からは外れるため、在留継続の可能性が残ります。

執行猶予を得るには裁判で情状を酌んでもらう必要があります。初犯であること、被害者と示談が成立していること、深く反省して監督する家族もいて再犯のおそれが低いこと等、裁判官に執行猶予相当と判断してもらえる事情を丁寧に主張・立証します。
もっとも執行猶予は3年以下の言渡しでなければ付けられないところ、強盗罪は法定刑が5年以上なので、このままでは執行猶予は付けられず、法定刑を下げる酌量減軽というものが認められないといけないため、執行猶予のハードルは高いです。

被害者への真摯な対応

被害者のいる事件では、早期に謝罪と賠償を行い被害者の許し(宥恕(ゆうじょ))を得ることが重要です。被害者と示談が成立すれば、不起訴になったり執行猶予が付く可能性が高まります。
刑事処分が軽くなれば前述のとおり退去強制に該当しないか、あるいは在留特別許可が認められる余地も広がります。被害者対応は在留資格維持の観点からも非常に大切です。

専門家への早期相談

逮捕直後から外国人事件に詳しい弁護士に相談・依頼することで、退去強制を避けるための準備を迅速に始められます。不起訴や執行猶予を得てそもそも退去強制事由に該当しないようにすることに加え、
例えば、入管から身柄を拘束された場合に備えて仮放免申請の準備をしたり、後述する在留特別許可の申請資料を集め始めたりといった対策です。起訴後、有罪判決で退去強制事由に該当してしまった場合でも、口頭審理での主張や在留特別許可の申請によって日本に引き続き残れる可能性があります。
時間との勝負になりますので、一刻も早く専門家に相談することが肝心です。

以上のようなポイントを踏まえ、事件の段階ごとに最善を尽くすことで、強制送還を「避けられるものは避け、避けられない場合でも救済の道を探る」ことが可能になります。

刑事事件後に在留資格は再取得できるのか

もし残念ながら刑事事件により在留資格を失った場合、あるいは退去強制により一度国外へ送還された場合、再び日本に来て在留資格を取得することは可能なのでしょうか。
結論から言えば可能性はゼロではありませんが、厳しい条件があります。

まず、退去強制により国外退去となった場合、一定期間は日本に再入国できません。この期間を「上陸拒否期間」といい、通常は5年間と定められています。例えばAさんが強制送還された場合、原則として送還の日から5年は日本に来ることができません。
過去に不法滞在や退去強制歴が重ねてある人だと10年間に延びます。
一方、自ら出国命令制度を利用して自主的に出国したような場合は1年に短縮される制度もあります(ただしこれは主にオーバーステイなどの行政違反に適用されるもので、刑事事件で有罪になったケースでは通常利用できません)。

さらに問題なのは、重大な犯罪による有罪歴がある場合の扱いです。入管法は上陸拒否事由として「日本または他国の法律で1年以上の刑に処せられた者」を挙げており、この場合は期間の制限なく入国を拒否される対象となります。
例えばAさんが拘禁刑5年の実刑判決を受け送還された場合、その有罪歴自体が将来的にも日本入国を拒まれる要因となり、5年や10年経てば自動的に戻れるというものではありません。この「1年以上の刑」には執行猶予付き判決も含まれます。したがって、重大犯罪で有罪となった外国人は、たとえ退去強制後に年月が経過しても、再来日は非常に困難です。

もっとも、絶対に再入国できないわけではありません。入管法には上陸拒否期間中であっても特別な事情がある場合に入国を許可しうる「上陸特別許可」の制度があります。これは法務大臣の裁量で行われるもので、例えば日本にいる配偶者や子供と生活を共にする必要があるなど人道上または公益上の考慮すべき事情がある場合に、例外的に再入国が認められることがあります。
実務上は、日本人配偶者との婚姻関係や日本で生まれ育った子供の存在などがあるケースで上陸特別許可が検討されます。ただし、そのハードルは低くなく、過去の犯罪の内容・経過年数・反省状況、日本に残してきた家族の状況、生活基盤、さらには本国や日本の社会状況まで総合的に考慮されます。法務省・入管庁は許可事例・不許可事例を公表していますが、やはり家族の結びつきが強く反省と更生の見込みがある場合でも許可は例外的です。

仮に上陸拒否期間(原則5年)が経過した後であっても、過去に退去強制された事実は入管当局に把握されています。そのため、再度の在留資格認定証明書交付申請(ビザ申請)をしても慎重に審査され、許可が下りないケースも少なくありません。特に犯罪歴が重大であれば「本当に再来日させてよい人物か」と厳しく見られます。
ですから、退去強制後に再び日本で暮らしたいと考える場合は、専門家のサポートのもとで周到な準備をする必要があります。具体的には、日本に残る家族の嘆願書や身元保証、本人の反省文・誓約書、本国での更生状況を示す資料などを揃え、再入国が認められるだけの特別な事情を丁寧に主張していくことになります。

外国人事件に強い弁護士へ早期に相談すべき理由

外国人が刑事事件を起こした場合、上記のように刑事手続と入管手続が絡み合い、対応すべき課題が非常に増えます。そこで鍵となるのが、外国人事件を数多く扱った経験のある弁護士に早めに相談・依頼することです。
専門の弁護士であれば、逮捕直後の取調べ対応から不起訴獲得に向けた活動、起訴後の裁判での情状主張、さらには有罪判決後の退去強制手続への備えまで、一貫して的確なアドバイスと弁護活動を提供できます。在留資格の問題は刑事手続の段階から切り離せない重要事項です。
例えば「執行猶予判決を取れたから安心」と思っていたら入管法違反で執行猶予の有無を問わず強制送還となってしまった、という事態は避けねばなりません。専門弁護士は在留資格上のリスクを踏まえて戦略を立てられるため、在留資格を守る観点を盛り込んだ刑事弁護が可能です。

また、外国人の依頼者の場合、言葉や文化の違いからくる不安や誤解にも配慮が必要です。母国語で十分にコミュニケーションが取れないと、自分の状況を正確に伝えられず不利益を被るおそれがあります。外国人事件に対応している弁護士事務所であれば、必要に応じて通訳人を手配するなど、言語面でのサポートを受けられる場合があります。

さらに、外国人事件ではスピード対応も欠かせません。逮捕後は時間との勝負であり、初動が遅れると不起訴の可能性を逃したり、後の入管手続で十分な準備の時間がとれなくなったりします。外国人事件に精通した弁護士であれば、迅速に駆けつけ、初回面会(接見)や必要な申請をスピーディーに行えます。
当事務所では土日祝日や夜間でも無料相談・初回接見サービスの受付を行っており、緊急の依頼にも迅速に対応可能な体制を築いています。このような迅速な対応によって、早期に手を打てる事項(在留資格の更新申請、証拠収集、示談交渉など)は一刻も早く着手できます。

総じて、外国人の刑事事件では刑事と入管の両面に通じた専門家の助力が不可欠です。早期に適切な弁護士に相談することで、「刑事上の不利益の最小化」と「在留資格の防衛」という2つの目標に向けた戦略を立案・実行できるのです。Aさんの家族も、不安に思ったらできるだけ早く外国人事件に強い弁護士へ相談し、今後取り得る選択肢についてアドバイスを受けるべきでしょう。

事務所紹介(弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所)

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、外国人の刑事事件で今回のAさんのようなお悩みを抱える方にとって心強いパートナーです。当事務所の特徴と強みを以下にご紹介します。

刑事事件専門の豊富な実績

当事務所は刑事事件・少年事件に特化した法律事務所であり、所属弁護士全員が刑事弁護に専念しています。不起訴処分の獲得や身柄解放の経験も豊富です。元裁判官・元検察官など刑事手続の専門家も所属し、難しい事件にもチームで対応できる体制があります。

外国人事件に精通した体制

当事務所には外国人の刑事事件の弁護実績が豊富な弁護士が多数在籍しています。また外国の方からのご相談では、必要に応じて対応可能な通訳人を探し、言語面にも配慮しながら対応しています。入管業務に詳しい行政書士と連携し、在留特別許可申請やビザ手続のサポートも行っています。

365日24時間のスピード対応

刑事事件は時間との勝負であり、当事者やご家族の不安を一刻も早く解消するために年中無休・24時間体制で相談受付を行っています。突然の逮捕にも迅速に弁護士が初回接見に駆けつけ、夜間・休日でも無料相談のご予約が可能です。
全国主要都市に支部を展開し、地域を問わず迅速な現地対応が可能な点も当事務所の強みです。遠方のご家族からの依頼でも、各支部が連携して柔軟に対応し、案件に最適な弁護士チームを編成します。

依頼者に寄り添う姿勢

当事務所では初回相談は無料で承っており、経済的負担を気にせずご相談いただけます。「何から相談してよいかわからない」「弁護士に頼んでいいのか迷っている」といった段階でも遠慮なくお問い合わせください。
ご依頼後は担当弁護士が密な連絡と十分な説明を心掛け、依頼者やご家族に寄り添って事件解決に当たります。外国人の方にも安心して頂けるよう、母国語での報告や丁寧なフォローを徹底しています。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、以上のような体制で刑事弁護と入管対応の両面から全力サポートいたします。在留資格を持つ外国人の刑事事件でお困りの方は、ぜひ当事務所にご相談ください。早期の段階から介入することで、不起訴処分の獲得や強制送還の回避に向けた最善策を講じ、依頼者の権利と日本での生活を守るために尽力いたします。どうか一人で悩まず、専門家とともに最善の道を切り拓いていきましょう。

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