2023年6月8日,福岡地方裁判所にて,同性婚を認めていない現行法が憲法に違反する状態であるとの判決が出されました。
この裁判は,同性カップルが「異性婚と同性婚で法律上の取り扱いが異なるのは,平等ではない」と憲法違反を主張して国に損害賠償を求めた裁判です。
同様の裁判は2019年から全国各地で提訴されており,札幌地方裁判所,名古屋地方裁判所では既に「憲法に違反する」と判決,東京地方裁判所は「憲法に反する状態」と判決,大阪地方裁判所は「憲法に違反しない」と判決をしており,これで5件目の判決となりました。
「憲法違反」か「憲法違反の状態」かの違いについてはここでは深く言及しません。
在留資格,ビザの申請においても,今回の判決は影響がありうるため,現在の入管法が「同性婚」についてどのように扱っているか,今後どうなりうるかについて解説をします。
今の法律では,同性婚≠配偶者
現在の入管法では,同性婚として「パートナーシップ宣言」等をしていたとしても,原則として「配偶者」とは認められていません。
そのため,日本人と同性婚状態になった外国人の方は「日本人の配偶者等」とは認められていません。
今回,同性婚と異性婚を別に扱うことが憲法違反とされたことで,民法が変われば,同性婚についても「配偶者ビザ」が認められる余地が出て来るでしょう。
現在の「同性婚」の扱い
現在の入管法では,同性婚の場合,「特定活動」のビザを認めるようになっています。
元々,外国人同士の同性婚の場合,外国人のどちらかが日本でビザを取得していれば,その同性婚のパートナーについては「特定活動」の在留資格が認められてきました。
これは,平成25年に法務省が各地方の入管に対して通知しており,全国共通の取り扱いとなっています。
一方,日本人と外国人の同性カップルの場合,外国人の方に「特定活動」の在留資格が認められない,という状況がありました。
これは上記の,東京地方裁判所の判決があった事例で,裁判では「特定活動の在留資格を認めないのは憲法に違反する」と判断されているのです。
このような,全体的な裁判例の流れを見ると,同性婚であっても異性婚であっても,原則的には同じように取り扱うべきという流れがあり,このことは在留資格,ビザの場でも同じようです。
民法や入管法の改正状況次第では,日本人と外国人との同性カップルに対して「日本人の配偶者等」の在留資格や「定住者」といった在留資格が認められるようになるかもしれません。
その場合,「特定活動」の在留資格と比べても日本での活動に制約が減り,また,日本での経済活動(車や家をローンで購入する,事業や会社を立ち上げるなど)と言ったことがより一層やりやすくなることが予想されます。
入管実務上も,今後の同種裁判の帰趨には注目したいと思います。