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強制送還手続きと商標法違反の事例解説
日本に滞在する外国人が一定の法律違反を犯した場合、強制送還手続きが発生することがあります。この記事では、商標法に違反したAさんの事例を基に、強制送還手続きの法律的側面とその対応策について詳しく解説します。
事例紹介:
Aさんは、40歳の中国国籍で、定住者ビザで日本に在住していました。彼は、長年、東京都内の企業で働いていましたが、コロナ禍でのリストラにより職を失いました。あるとき、経済的な困窮から商標法違反に手を染めることになります。Aさんは、フリマサイトで偽ブランド品を出品したことで、商標法違反によって逮捕されました。
Aさんは数日勾留された後,略式罰金命令を受けて釈放されることになりました。定住者のビザが取り消されるのではないかと心配になったAさんは,弁護士に相談するかどうかを迷っています。
解説:
退去強制手続きは、以下のような場合に発生します。
- 一定の入管法によって処罰された場合: 旅券法違反など。
- 薬物事件で有罪判決を受けた場合: 麻薬取締法、覚醒剤取締法など。
- 一定の刑法犯で懲役、禁錮刑に処せられた場合: 執行猶予がついても対象。
- 1年を超える実刑判決を受けた場合: 任意の法律違反で刑事裁判を受けた場合。
- 窃盗罪、強盗罪、詐欺罪など、一定の刑法犯でも強制送還の対象となることがあります。
しかし、在留資格によって強制送還されるかどうかが変わることがあります。例えば、「日本人の配偶者等」や「定住者」の在留資格では、執行猶予付きの有罪判決を受けても強制送還にはなりません。
退去強制手続きは、入管法に基づいて行われます。手続きは、入国管理局が行い、強制送還の決定が下されると、外国人は日本から退去しなければなりません。強制送還の決定は、裁判所の判決とは別に行われる行政手続きです。
弁護士に相談することのメリット:
退去強制手続きは複雑であり、個々のケースに応じた専門的な対応が必要です。弁護士への早期相談が、在留資格の保持や強制送還の回避につながることが多いです。
弁護士への相談の仕方:
強制送還の対象となった場合、早急に専門の弁護士に相談することをおすすめします。具体的な事例や状況を詳しく伝え、最適な対応策を一緒に考えることが重要です。
まとめ:
強制送還手続きは、外国人の在留資格に直接関わる重要な問題です。Aさんの事例を通じて、法律的な側面と対応策を解説しました。このような状況に直面した場合、専門家への相談が重要であることを強調します。
窃盗罪で強制送還されるのか?定住者ビザでの事例解説
退去強制手続きは、外国人が日本での在留資格を失う恐れのある重要な手続きです。
この記事では、「定住者」の在留資格を持つAさんの事例を通して、退去強制手続きのプロセスと法律的な側面を詳しく解説します。
事例紹介: 「定住者」在留資格のAさんのケース
Aさんは、40歳の中国国籍で、定住者ビザで日本に在住していました。彼は、長年、東京都内の企業で働いていましたが、コロナ禍でのリストラにより職を失いました。
あるとき、経済的な困窮から窃盗罪に手を染めることになります。彼は、都内のデパートで高級ブランドのバッグを盗み、窃盗罪によって逮捕されました。
この事件は、彼の友人や家族に衝撃を与え、彼の在留資格に重大な影響を及ぼす可能性がありました。彼は、窃盗をした理由として、家族を養うための経済的な困窮を挙げました。
裁判では、Aさんの家庭状況や反省の態度が考慮されて、執行猶予付きの有罪判決が下されてしまいました。Aさんは今後,自分の在留資格がどうなってしまうのか不安に思い,弁護士に相談することにしました。
Aさんはこれからどうなるのか?(退去強制されるのか)
退去強制手続きは、以下のような場合に発生します。
- 一定の入管法によって処罰された場合
- 一定の旅券法に違反して懲役、禁錮刑に処せられた場合(資格外活動の場合、罰金だけでもアウト!)
- 麻薬取締法、覚醒剤取締法、大麻取締法などの薬物事件で有罪判決を受けた場合
- 一定の刑法犯で懲役、禁錮刑に処せられた場合(執行猶予がついてもアウト!)
- どの法律違反であっても、「1年を超える実刑判決」を受けた場合
Aさんの場合、窃盗罪に該当し、上記の「一定の刑法犯」に含まれています。
しかし、「定住者」の在留資格であれば入管法の別表2ですから、執行猶予付きの有罪判決を受けたとしても強制送還にはなりません。
ただし,定住者のビザは在留期間の定めのある在留資格です。定住者の方の多くは,1年,3年の在留資格をお持ちでしょう。そうなると,長く日本で滞在するためには延長の申請をしなければなりません。
Aさんのように,日本で有罪判決を受けてしまった場合には,その次の在留期間の延長申請が「不許可」となってしまうことがあります。
延長申請が認められるかどうかは,
- 在留資格の活動目的に沿った滞在を続けているか
- 在留期間中の素行は善良か
と言った点が判断材料になります。
日本で窃盗罪によって有罪判決を受けてしまったということは,「素行が悪い」と判断される材料でもあるのです。
弁護士へ相談
退去強制手続きは複雑で、個々のケースに応じた専門的な対応が必要です。弁護士への早期相談が、在留資格の保持や強制送還の回避につながることが多いです。
まとめ
退去強制手続きは、外国人の在留資格に直接関わる重要な問題です。Aさんの事例を通じて、法律的な側面と対応策を解説しました。このような状況に直面した場合、専門家への相談が重要であることを強調します。
暴力事件を起こしてしまった場合の強制送還手続きを弁護士に相談
退去強制手続きは、外国人が日本で犯罪を犯した場合に発生する可能性がある手続きです。この記事では、具体的な事例を通じて、退去強制手続きの法律的側面を詳しく解説します。法律の細部にわたり、どのような状況で退去強制手続きが発生するのか、どう対処すべきかについて深く探ります。
事例紹介: 定住者ビザのAさんの刑法違反
Aさんは「定住者」ビザで日本に在住していました。ある日、ストレスから酒に酔い、公共の場で暴力を振るってしまいました。被害者が警察に通報し、Aさんは逮捕されました。この事件は、Aさんにとって人生を大きく変える出来事となりました。
裁判で有罪判決を受け、退去強制手続きが始まりました。
退去強制手続きの基礎知識
退去強制手続きは、以下のような場合に発生します。
- 一定の入管法によって処罰された場合: 旅券法違反など。
- 薬物事件で有罪判決を受けた場合: 麻薬取締法、覚醒剤取締法など。
- 一定の刑法犯で懲役、禁錮刑に処せられた場合: 執行猶予がついても対象。
- 1年を超える実刑判決を受けた場合: 任意の法律違反で刑事裁判を受けた場合。
特に、窃盗罪、強盗罪、詐欺罪など、一定の刑法犯でも強制送還の対象となります。しかし、在留資格によって強制送還されるかどうかが変わることがあります。例えば、「日本人の配偶者等」や「定住者」の在留資格では、執行猶予付きの有罪判決を受けても強制送還にはなりません。
退去強制手続きは、入管法に基づいて行われます。手続きは、入国管理局が行い、強制送還の決定が下されると、外国人は日本から退去しなければなりません。強制送還の決定は、裁判所の判決とは別に行われる行政手続きです。
弁護士へ相談
退去強制手続きは非常に複雑で、個人で対応するのは困難です。弁護士に相談することで、適切な法的サポートを受け、最良の解決を目指すことができます。弁護士は、強制送還の決定に対して異議申し立てを行うことも可能で、適切な権利保護を図ります。
また、強制送還が決定された場合でも、強制送還の執行を一時的に停止する申し立てなど、クライアントの権利と利益を最大限に守るための支援を提供します。
弁護士への相談の重要性
退去強制手続きは、外国人にとって非常に深刻な問題であり、その結果として日本からの強制送還が発生する可能性があります。
このような重大な事態に対処するためには、専門的な知識と経験が必要とされます。
弁護士に相談することで、以下のようなサポートが受けられます。
- 法的権利の確保: 弁護士は、クライアントの法的権利を理解し、保護するための適切な手続きをガイドします。
- 適切な対応策の提案: 事案に応じて、最適な対応策を提案し、実行します。
- 強制送還の回避: 可能であれば、強制送還の回避や猶予の申請など、クライアントの利益を最大限に守るための戦略を立てます。
退去強制手続きの予防
退去強制手続きに至らないためには、以下のような予防策が重要です。
- 法律の遵守: 日本の法律を遵守し、特に入管法や刑法などの重要な法律に対する理解を深めることが基本です。
- 適切なビザの取得と更新: 在留資格に関連する法律を遵守し、ビザの取得や更新を適切に行うことが重要です。
- 弁護士との定期的な相談: 法律の変更や個人の状況の変化に対応するため、弁護士と定期的に相談することが推奨されます。
最終的なまとめ
退去強制手続きは、外国人にとって非常に重要な問題であり、その対応には専門的な知識と経験が求められます。この記事では、具体的な事例を通じて退去強制手続きのプロセスと法的側面を解説しました。
弁護士に相談することで、適切な法的サポートを受けることができます。また、法律の遵守と適切なビザの管理、弁護士との定期的な相談など、退去強制手続きの予防策も重要です。
この記事が、退去強制手続きに関連する法律の理解と適切な対応の一助となることを願っています。
まとめ
退去強制手続きは、外国人が日本で法律に違反した場合に発生する可能性がある重大な手続きです。この記事では、Aさんの事例を通じて、退去強制手続きの具体的なプロセスと法的側面を詳しく解説しました。
法律の細部は非常に複雑であり、個人での対応は困難です。強制送還が決定された場合、弁護士に相談することで、適切な法的サポートを受けることが可能です。弁護士は、異議申し立てや強制送還の執行停止の申し立てなど、様々な法的手段を用いてクライアントの権利を保護します。
退去強制手続きは、人生に大きな影響を及ぼす可能性があるため、法律に対する理解と適切な対応が求められます。この記事が、退去強制手続きについての理解を深める一助となれば幸いです。
飲酒運転で事故を起こしたら,ビザが取り消される?
(以下の事例はフィクションです)
外国籍のAさんは,留学生として来日し,日本の企業に就職して「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を取得して日本に在留しています。
Aさんは日本の会社に勤めており,日本での生活は5年程度です。ある日Aさんは,会社の飲み会へ車で行ってしまい,「少しくらい平気だろう」という気持ちから,飲酒運転をしてしまいました。その結果,Aさんは前を走っていた車に追突して,人身事故を起こしてしまいました。Aさんは警視庁大塚警察署に逮捕され,道路交通法違反,過失運転致傷罪で起訴されてしまいました。
Aさんは,今後も日本に残ることができるのでしょうか。
飲酒運転での逮捕,起訴
飲酒運転は,通常の運転と比べて重大な事故を起こしてしまう危険がある運転です。
統計上,通常の運転による事故で死亡事故となってしまうのは「0.78%」ですが,飲酒運転の場合はその7倍の「5.54%」が死亡事故になってしまうのです。
参考:警視庁HP
そのため,飲酒運転で事故を起こしてしまった場合には,逮捕されるケースが多く,死亡事故にはならなかったとしても,起訴される可能性が高い事件になります。
Aさんのように,「少しくらい平気だろう」というという甘い認識が,重大な事故につながってしまうのです。
在留資格・ビザは取り消されるのか
Aさんのように,「技術・人文知識・国際業務」の在留資格にて日本に在留している方が,飲酒による人身事故を起こして,起訴されてしまった場合,ビザが取り消されたり強制送還されたりすることはないのでしょうか。
まず,Aさんの「技術・人文知識・国際業務」のビザのように就労系のビザの場合,強制送還される可能性があるのは次のような場合です。
- 一定の入管法によって処罰された場合
- 一定の旅券法に違反して懲役,禁錮刑に処せられた場合(資格外活動の場合,罰金だけでもアウト!)
- 麻薬取締法,覚醒剤取締法,大麻取締法などの薬物事件で有罪判決を受けた場合
- 一定の刑法犯で懲役,禁錮刑に処せられた場合(執行猶予がついてもアウト!)
- どの法律違反であっても,「1年を超える実刑判決」を受けた場合
Aさんの事件は,道路交通法違反,自動車運転過失致傷ですから,4つめの「一定の刑法犯」には該当しません。そのため,1年以上の実刑判決を受けることがなければ,強制送還にはならずに済むかもしれません。
しかし,「在留資格の取消し」に注意しなければなりません。
在留資格の取消しとは,一度ビザが認められた後の事情によって,ビザが取り消されてしまうことです。
ビザが取り消されてしまうのは,次のような場合です。
- ビザの手続きで嘘の記載をしたり,不正な手段を用いた場合
- ビザの手続きにおいて虚偽の書類を提示した場合
- 正当な理由なく在留資格に応じた活動を3か月以上行っていない場合(配偶者ビザの場合には6か月)
- 住所地に関する届け出をきちんとしなかった場合
細かく言うとさらに別れるのですが,概ね上記のような場合にビザが取り消されることがあります。
Aさんの場合,「3」が問題になってしまいます。Aさんは飲酒運転,人身事故によって,会社を解雇されてしまう可能性があるのです。解雇された後,転職先が見つからなければ「在留資格に応じた活動を行っていない」として,ビザの取消の対象となってしまうことがあります。
日本の企業において,「逮捕された」ことや「飲酒運転をしていた」というのは,とても責任が重いことで,懲戒解雇となる可能性も高い違反です。
日本で逮捕されてしまった,起訴されてしまった,という外国人の方は,ビザのことを含めて専門家に相談した方が良いでしょう。
強制わいせつ罪で懲役刑の判決を受けたら,強制送還?
(以下の事例はフィクションです)
外国籍のAさんは,東京都に住んでおり,日本人の女性と結婚して「日本人の配偶者等」の在留資格を取得して日本に在留しています。
Aさんは日本の会社に勤めており,日本での生活も20年以上です。
ある日Aさんは,会社の飲み会で飲みすぎてしまい,帰り道に酔った勢いで見ず知らずの女性に抱き着いて服の中まで手を入れて体を触ってしまいました。
その場で通報されてAさんは,東京湾岸警察署で逮捕されてしまいます。Aさんは強制わいせつ罪で起訴され,裁判では懲役1年6月,執行猶予3年という判決が下されました。
Aさんは強制送還されてしまうのか不安に思い,弁護士事務所に相談することにしました。
起訴されることを避ける
事例でAさんは既に逮捕,起訴されてから在留資格についての相談をしようと思ったようです。
後で解説する様に,今回のAさんの事案であれば,裁判の後でもまだ大丈夫だったのですが,それ以外の在留資格の人や違う罪名の刑事事件の方の場合,判決が出た後ではどうしようもない状態になってしまっているという方もいます。特に,「起訴される前に手を打っておけば日本に残れたかもしれないのに」という事案はたくさんあります。
外国人の方で特に日本での刑事事件についてお困りがある方,ご家族や友人の外国人の方の事件についてご不安がある方は早めにご相談ください。
「懲役刑」の場合の強制送還
Aさんの場合,在留資格が「日本人の配偶者等」にあたるため,一般刑法の有罪判決だけで強制送還されるというわけではありません。
刑事裁判においては,一般刑法事件と特別法事件という,大きく分けると二種類の事件があります。
一般刑法事件というのは,刑法に規定がある犯罪のことです。暴行や傷害,窃盗,住居侵入,といったものがあります。強制わいせつも一般刑法犯にあたります。
一方,特別法事件というのは刑法以外の法律の違反で刑罰の規定がある事件のことです。ニュースなどで「○○法違反で逮捕」という報道がされることがありますが,このように「○○法違反」と表現されるのはいずれも特別法に違反した刑事事件です。覚醒剤取締法違反や大麻取締法違反,関税法違反,売春防止法違反,といったものがあります。
Aさんのように就労系の在留資格ではなく,「日本人の配偶者等」の在留資格の方で,一般刑法事件で有罪判決となった場合,1年以上の実刑判決でなければ,すぐに強制送還されるということはありません。Aさんの事例では,「執行猶予付きの判決」になっており実刑判決ではないため,強制送還を免れる可能性があります。
有罪判決が出た場合の在留資格への影響
それでは,実刑判決でなければ在留資格やビザへの影響がないと言えるのでしょうか。
その答えはNOです。
Aさんのように「日本人の配偶者等」の在留資格で在留している方の多くは「永住者」の在留資格へ変更することを考えているかと思います。
永住許可がもらえれば,在留期間を更新する必要がなくなり,また,日本でも住宅ローンを組みやすくなるなど,生活が大きく変わるからです。
日本で有罪判決を受けてしまうと,永住許可がもらいにくくなります。永住許可が認められるための条件の一つに,日本での素行の善良性というものがあります。「日本のルールを守って正しく生活している」ということです。有罪となって執行猶予付きの判決を受けてしまうと,この「素行の善良性」が悪いと判断されてしまい,永住許可が認められないケースがあります。
もちろん,外国人の方も日本人と同様に「前科」があることによって様々な社会生活上の制限を受ける可能性があります。具体的には仕事を解雇されてしまったり,自営であれば取引が停止してしまったり,職務上の専門資格を失ってしまう可能性もあります。
すぐに強制送還されることがないからと言って安心しきってしまうのではなく,刑事裁判の判決が自分の在留資格へどのように影響するのか,事前に専門家によく相談しておく必要があるでしょう。
解決事例 在留特別許可(留学)が認められた事例
当所の扱った事案について,在留特別許可が認められましたので,その事例を紹介,解説します。
事案・ご依頼の経緯
弁護活動
事件を振り返って
戸籍を貸したらになったら犯罪者!?偽装結婚は何罪になる?
(架空の事例です)
Aさんは東京都内で生活する会社員でした。ある時知人から「戸籍を貸してくれたら毎月20万円もらえる」という話を聞き,怪しいなと思いながらもその話にのっていましました。
Aさんは,その知人から言われるまま,戸籍謄本を取り寄せ,印鑑と一緒に渡してしまいました。その後の話を聞くと,どうやら,Aさんは外国人であるBさんと婚姻届けを出して結婚したことになっていたようです。Aさんは当時独身で,交際相手もいなかったことや,お金がもらえるならば良いと思って,Bさんとの婚姻届けをそのままにしてしまいました。結局,AさんはBさんと一度も会うことがありませんでした。
その3年後,戸塚警察署の警察官がAさんの自宅にやってきて,Aさんは事情聴取を受けてしまいます。
Aさんにはどのような犯罪が成立し,Aさんはどのようになってしまうのでしょうか。
「戸籍を貸す」だけでも犯罪になることがある
Aさんは軽い気持ちから戸籍を貸す,つまり,Bさんの結婚相手となってしまったようです。これが,本当にBさんと結婚して婚姻生活を営むつもりがあったのであれば良いですが,「結婚して夫婦として生活するつもりはないのに,婚姻届けを出す」ということであれば,犯罪に該当します。
いわゆる「偽装結婚」と言われるようなものです。偽装結婚の場合には,公正証書原本不実記録罪が成立します。
これは,嘘や虚偽の申告をして,戸籍や住民票といった公の文書に真実と異なる記載をさせたことに対する罪です。偽装結婚のほかに,地上げ行為や車庫飛ばし等と言った行為もあります。
偽装結婚,公正証書原本不実記録罪は,5年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科せられる可能性がある犯罪です。
戸籍を使わせるだけだから良いと思った,お金がもらえるし誰に迷惑をかけるわけではないから良いと思った,という方もいますが,れっきとした犯罪であることを覚えておきましょう。
Aさんは逮捕される?起訴される?
偽装結婚をして公正証書原本不実記録罪に該当してしまった場合,逮捕される可能性が非常に高いです。
逮捕されるか/されないかという判断では,事件が重大なものであるかどうか,また,口裏合わせがされるかどうかという点が判断ポイントになります。
偽装結婚のような事件では,「戸籍」という日本の家族制度の根底をなすものに嘘の記載がなされたということになりますから,重大な事案とみなされることがあります。
また,偽装結婚は一人ではできない,すなわち,相手となる外国人の存在があります。警察当局としては「二人で『本当に結婚して夫婦として生活するつもりがありました』と口裏を合わせられるかもしれない」と疑う事案です。さらに,結婚相手を斡旋するものの存在,いわゆるブローカーの存在も窺われる事件ですから,逮捕される可能性も高いのです。
加えて,公正証書原本不実記録罪には,明確な被害者がいません。そのため,示談をして不起訴を狙うということができない事件です。上記の通り,「戸籍」の制度そのものを害する犯罪になりますから,重大な事案として初犯であっても起訴される可能性が高いです。
偽装結婚について不安なことがある,お心当たりがあるという方は是非一度,専門家にご相談ください。
Aさんは再婚できないのか?
Aさんは今後,逮捕,起訴されて刑事事件として扱われる可能性が非常に高いです。
しかし,刑事事件は,あくまで「その人に対して刑罰を科すかどうか」を判断する手続きです。そのため,刑事事件を通してAさんの戸籍が完全に回復される,というものではありません。
公正証書原本不実記録罪によって処罰された方の場合,有罪の判決が確定すると,検察庁から各自治体に対して「この人の戸籍は嘘の記載がありましたよ」と通知がなされます。
この通知を受けて,各自治体が戸籍を訂正することになります。
そのため,Aさんが逮捕,起訴されれれば,ある程度時間がたったところで修正される可能性があります。
偽装結婚をしてしまった後の戸籍についてご不安なことがある方は,是非弊所まで一度ご相談ください。
もしも,Aさんがばれていなかったら・・・?
仮に,Aさんが警察から指摘されることなく生活していたらどうなるのでしょうか。
もちろん,Aさんが自分で手続きを行わない限り,戸籍上はBさんと結婚している状態が続くことになります。
そのため,もしAさんが別の人と結婚したいと思っても,重婚になってしまうためできません。また,Aさんの家族としても,Aさんがなくなった場合,戸籍上はBさんが法定相続人になってしまうため,相続に大きな影響が生じてしまいます。
もちろん,Bさんの居場所が分かって,手続きに協力してくれるようであれば,離婚をしたり,戸籍の訂正を申し立てたりすることができます。しかし,偽装結婚の場合,Bさんがそのように協力的であることはないでしょう。
Aさんが自分で婚姻状態を解消しようと思った場合,裁判所での手続きを経なくてはなりません。
相手の居場所も分からない結婚を解消するのは,非常に困難です。
偽装結婚をしたけれども解消できないで困っている,警察に出頭すべきなのかどうか分からなくて困っているという方は,是非弊所までご相談ください。
外国人事件,刑事事件の両方について経験のある弁護士が,最善の手段のためのアドバイスを提供します。
下記のフォームからもお問い合わせをすることができます。
万引きで検挙されたら,ビザが変更できなくなる?
(解説のための事例はフィクションです)
C国籍のAさんは,「技能」の在留資格で日本に在留する外国人でした。
Aさんは,日本国内で転職活動を行い,貿易業を営んでいる日本の企業での就職が決まりました。Aさんはそれまで「技能」の在留資格でしたが,転職と同時に,「技術・人文知識・国際業務」の在留資格に変更する,変更申請手続きをしており,現在は申請の結果待ちです。
ある日,Aさんは日本のスーパーで買い物をしていた時,出来心からお菓子を万引きしてしまい,店内を巡回していた私服の警備員に発覚してしまいました。その場に駆け付けた警察官は,さんを逮捕しないで取調べをしましたが,「これから何度か警察署に来てもらう」と言われました。
Aさんは,取調べを受けている間に自分のビザが変更されるのか,強制送還されてしまうのではないか等の不安が生じたため,専門家に相談することにしました。
強制送還される可能性について
事例のAさんのような万引きは,日本の窃盗罪にあたります。
窃盗罪に対しては,10年以下の懲役または50万円以下の罰金が科されることになります。
万引きの事件の場合,1件あたりの被害額はそこまで高くならないでしょうから,Aさんに前科がなければ不起訴,もしくは罰金で終わることが多いでしょう。
一方,強制送還されるのかどうかについてですが,窃盗罪で有罪となった場合,強制送還されてしまう可能性があります。
Aさんのような「技能」や「技術・人文知識・国際業務」のような在留資格は,いわゆる就労ビザと呼ばれるものです。この在留資格で日本に在留している人の場合,有罪判決を受けて
- 1年を超える実刑判決
- 一定の犯罪について懲役刑,禁錮刑の判決(執行猶予だった場合も含まれてしまう)
となると,強制送還されてしまいます。
Aさんも,窃盗罪で懲役刑の判決(執行猶予がついた場合も含む)を受けてしまうと,強制送還されてしまう可能性があります。
一方,不起訴で終わった場合や,罰金刑だけで終わったという場合には,すぐに強制送還されてしまうということはありません。
外国人の方の刑事事件の場合,起訴された/不起訴になった,というだけで,強制送還されるかどうかが大きく変わってしまうケースもあります。在留資格(ビザ)の問題に発展してしまう前に,刑事事件に強い弁護士事務所にご相談ください。
変更・更新の手続きでの不利益
ビザの更新・変更の手続きをしている時に刑事事件を起こしてしまったという場合,すぐに強制送還されなかったとしても手続に影響が出ることはあるのでしょうか。
Aさんの事例の場合,ビザの変更申請に影響が出る可能性は低いでしょう。あくまでまだ,検挙されたという場合,そこから不起訴/罰金/執行猶予,のいずれの処分となるかが未確定な段階になります。刑事事件としての処分が未確定であれば,すぐにはビザの申請には影響しません。通常,在留資格の変更の手続きの場合,どの資格に変更するかによっても変わりますが,就労系の在留資格だと,変更の手続きに係る日数は約30日程度です。この30日の間に強制送還となるような出来事が起きれば別ですが,通常そのようなことはありません。
Aさんも,万引きの事件で取調べを受けることになるでしょうが,在留資格の変更についてはそのまま審査が進められることでしょう。
ただし,その後の更新手続きでは不利益があるかもしれません。日本で万引きをしてしまったことや,それが理由となって罰金刑を受けたことがあるという事情は,日本での素行不良となります。次回の在留期間の更新では,期間が短くなってしまうことがあるでしょう。また,永住申請を考えている方の場合,罰金刑を受けたことは素行不良とみられますから,しばらくの間は永住申請が認められない可能性が高いとも言えます。
罰金刑を受けたなど日本での有罪判決について心配な方や不安なことがある方は,行政書士や弁護士などの専門家にご相談ください。
下記のフォームからもお問い合わせいただけます。
口座が凍結されたら,強制送還されるのか?
(解説のための事例はフィクションです)
B国籍のCさんは,技術・人文知識・国際業務の在留資格で日本に在留する外国人でした。
ある日,Cさんは日本での生活費に困ってしまい,インターネットで見つけた怪しげなサイトの表記に従って,「銀行のキャッシュカードを預ける代わりに無利子でお金の融資を受けられる」という業者からお金を借りてしまいます。
結局,Cさんが預けた銀行口座は犯罪に利用されてしまい,口座は凍結され,Cさんも警察と検察からの取調べを受け,犯罪収益移転防止法違反として罰金を受けてしまいました。
Cさんは強制送還されてしまうのでしょうか。
強制送還される可能性について
事例のCさんのような行為は,犯罪収益移転防止法,いわゆる,マネーロンダリング防止法の違反となります。日本では,キャッシュカードや支払い用カードを他人に使わせる行為は,マネーロンダリングを助長する行為でもあり,処罰の対象となっているのです。
キャッシュカードの譲り渡し行為については,罰金刑や執行猶予付き懲役刑が言い渡されることが多くあります。Cさんについても,有罪判決として罰金刑が言い渡されると,前科がつくことになります。
Cさんのように就労ビザで日本に在留している場合,前科がつくと強制送還の対象となることがあります。犯罪収益移転防止法違反の場合,前科であっても1年を超える実刑判決でなければ,強制送還の対象とはなりません。そのため,今回の事例の場合には,すぐに強制送還となる可能性は低いでしょう。
更新の手続きでの不利益
すぐに強制送還される可能性は低いと言っても,罰金刑を受けた場合には,その後の日本での在留資格に大きな影響が残ります。
「永住者」以外の在留資格の場合には,必ず在留期間の更新の手続きが必要になりますが,この時に,犯罪収益移転防止法違反による罰金前科があるということは非常に不利な事情になります。犯罪収益移転防止法というのは,いわゆるマネーロンダリング防止法ですが,これはFATFからの勧奨等の影響を受けて制定された法律でもあり,国際的な犯罪(特にテロなど)のための資金が移転されることを防止するものであるため,国際的な目で見ると特に強く非難されることになります。
たとえ罰金刑であったとしても,次回の在留期間の更新手続きの時に,不利な事情になってしまいます。
日本で罰金刑などの有罪判決を受けた方の中には,「隠していればバレないのではないか」と考える人もいるかもしれません。しかし,入管の手続きの中では「自分に不利なことを隠している」というのが最も悪いものだとされています。隠すくらいなら,最初から入管に対しては正直に申告し,それでも資格の変更や更新のために真摯に申告するという姿勢の方が重要です。
罰金刑を受けたなど日本での有罪判決について心配な方や不安なことがある方は,行政書士や弁護士などの専門家にご相談ください。
下記のフォームからもお問い合わせいただけます。
大麻取締法違反で強制送還,再入国できるのか
(解説のための架空の事例です)
X国籍で東京都に住んでいたAさんは,自己使用目的で大麻数グラムを所持していたところ,路上で職務質問を受けて大麻の所持が発覚していしまい,現行犯逮捕されてしまいました。
Aさんは裁判によって,執行猶予付き判決を受けましたが,その後,東京出入国管理局から呼び出されてインタビューを受け,退去強制(強制送還)されてしまいました。
Aさんには婚約関係にあった,日本国籍のBさんという方がいました。Bさんは,Aさんと結婚して日本で生活をしていきたいと思っていますが,Aさんの再入国手続きについて弁護士に相談することにしました。
薬物事件で強制送還された場合
Aさんのように,薬物事件(具体的には,覚醒剤取締法違反,麻薬及び向精神薬取締法違反,大麻取締法違反,麻薬特例法違反)によって有罪の判決を受け,その判決が確定してしまうと退去強制の理由(入管法24条4号チ)が生じます。判決が確定した後に強制送還の手続きとなります。
薬物事件で有罪判決を受けたことによって強制送還となると,日本に再上陸できなくなってしまいます。
日本国内で大麻取締法違反による前科(犯罪歴)がある方の場合,刑の内容や刑期に関わらず無期限で再入国できなくなってしまいます。
再入国を求める場合
Aさんのように薬物事件で有罪の判決を受けて国籍国に送還された後,日本への再入国を求める場合には,上陸特別許可を求めることになります。
上陸特別許可とは,本来は再入国できない人(上陸拒否事由がある人)についても,特別に上陸を許可する事情がある場合に,その外国人の上陸を認めるというものです。
強制送還(退去強制)される手続の中における,在留特別許可のようなものです。上陸特別許可を求めて日本へ入国しようとする場合には,大きく分けて二通りの手続きがあります。
- 国籍国のパスポートを取得して,出国して,日本の空港や港の入管で上陸審査を受ける。
- 出国する前に,在留資格認定証明書の交付を請求する。
1の方法は,言ってみれば「ぶっつけ本番」という形で,ひとまず日本へやってきて,そこから上陸特別許可を得られるかどうかの審査をしてもらうという方法です。この場合,形式的には一度「入国拒否」の処分を受けることになり,そこから改めて上陸審査を受けることになりますから,手続には数日かかることがあります。その間,空港や港から出ることはできません。
ほとんどの方は,2の方法で再上陸できるかどうかについての審査を受けることになるでしょう。
本来,「在留資格認定証明書」というのは,日本での在留資格が認められるかどうかについての事前審査として行われるものです。Aさんの場合,おそらく「日本人の配偶者等」のビザを申請することになりますが,本来であれば「日本人の配偶者等」に該当するかどうかが審査の対象になります。
しかし,上陸拒否事由がある人が在留資格認定証明書の請求をした場合,上陸特別許可をするかどうかについても併せて審査をすることになります。
つまり,AさんやAさんの家族のように,既に強制送還された後の人を呼び寄せたいと思った場合には,先に,上陸特別許可がもらえるのかどうか(在留資格認定証明書がもらえるか)についての審査を受けておいた方が良いでしょう。
1のように,ぶっつけ本番で上陸特別許可を求めても,仮に不許可となった場合には,そのまま国籍国へ帰らなければなりません。費用的にも,時間的にも,身体的にも多大な負担となってしまうでしょう。
一方,2の方法の在留資格認定証明書の請求については,弁護士や行政書士に委任すれば,オンラインでの手続きも可能です。
一度強制送還されてしまった方の再入国については,弁護士等の専門家にご相談ください。
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