Aさんの息子は、家族滞在の資格で日本に滞在し、現在中学3年生です。そのお子さんは、ある日スーパーで買い物をしている際、魔が差してしまい、スーパーの商品を数点万引きしてしまいました。
この行為はスーパーの店員により確認され、店員に腕を掴まれましたがその店員を突き飛ばして逃げようと試みました。
しかし店を出たところですぐに警備員に捕まってしまいました。
以上を前提として
①息子さんが受ける手続きはどのようなものになるか
②①によって退去強制となることがあるか
以上の点について解説していきたいと思います。
このページの目次
少年事件手続き
日本の刑事手続きにおいては、まずは20歳以上と20歳未満でその手続きが区別されます。
20歳以上は大人の手続き、つまり裁判を経て刑罰を受けるのに対し、20歳未満の場合にはいったん少年手続きに進みます。
20歳未満の人が刑事事件を起こした場合には、全ての事件が家庭裁判所に送られることになっています。
この家庭裁判所の手続きでは、18歳、19歳の「特定少年」と、18歳未満の少年で再び区別されることになっています
特定少年でも、それ以外の少年でも、家庭裁判所で「検察官送致決定」というものを受けると、大人と同じ手続きに戻り、刑事罰を受けることになります。
これに対し、少年院送致、保護観察、児童自立支援施設送致、不処分等の決定は、いずれも刑事罰ではなく少年特有の保護処分という扱いとなります。
今回の息子さんの場合、中学3年生の年齢であれば、通常通り家庭裁判所に事件が送致されます。また、特定少年ではないため、おそらく保護処分となることが予想されますが、
その程度は、これまでの前歴や、家庭環境、補導歴といった、事件以外の要素も考慮して決定されることとなっています。
少年事件の解説についてはこちらもご覧ください。
退去強制となるか
それでは、家庭裁判所の処分により退去強制となるかについて検討します。
入管法で、少年の退去強制事由を定めているのは、24条4号のトです。
同号は「少年法(昭和二十三年法律第百六十八号)に規定する少年で昭和二十六年十一月一日以後に長期3年を超える懲役又は禁錮に処せられたもの」と定められています。
長期3年を超える場合、執行猶予付きの判決とすることができませんので、3年を超える実刑判決を受けた場合ということになります。
大人の場合には、1年以上の実刑(同号リ)で退去強制となるとされていることから比べると少年の方が退去強制とする要件が厳しいと言えます。
いずれにしても、保護処分の場合、刑事罰ではありませんから、仮に3年以上少年院送致をされるようなことがあったとしても、これは退去強制事由には当たらないということになります。
ですので、この方の事件の場合には、退去強制となることは通常考えられないと判断してよいように思われます。
しかし、18歳や19歳で同じような事件を起こし、捕まえに来た店員を突き飛ばしてけがをさせてしまったような場合には、強盗致傷となり、しかも特定少年となりますので、原則検察官送致となり、刑事罰を受けることになります。
強盗致傷の法定刑は無期又は6年以上の懲役ですので、極めて重い罪です。万引きに近い犯罪ではあるものの、このようなことになると退去強制の可能性があります。
弁護活動
万引きだからと言って軽い犯罪だと考えてはいけません。実刑判決を受けることもある重大な犯罪です。
また、最初は出来心でやっていたとしても、いつしかやめられなくなり、何度検挙されても繰り返すという方も多数おられます。
ですから、万引きで検挙されたり、ご家族が万引きで検挙されたような場合には速やかに弁護士にご相談ください。
被害店舗への被害弁償はもちろん必要ですが、それだけではなく将来の在留資格更新を行ったり、お子さんの更生のためにも、専門の弁護士にご依頼ください。
お問い合わせはこちらからどうぞ。