在留特別許可を争った裁判事例 東京地方裁判所判決

このページでは,在留特別許可を求めて裁判まで争われた事例について,判決文を見ながら解説をします。事例は,令和2年2月18日に東京地方裁判所で判決が言い渡された事例です。

この事例は,外国籍の3人の家族について,それぞれ在留特別許可を求めて裁判を起こしたところ,そのうち1人について法務大臣が在留特別許可を認めなかったことについて判断の誤りがあったとしたものです。

事案の概要

この事例では,今後国籍を有する家族3人が不法残留として強制送還されそうになっていたところ,在留特別許可を求めて法務大臣の裁決を求めていましたが,平成30年1月16日に在留特別不許可とする処分がなされてしまいました。そのため,家族3人はこの在留特別不許可の処分を取り消したうえで,改めて在留特別許可をするように求めて裁判を起こしたというものです。

ここで,家族三人は,それぞれ次のような方々です。

A1 母親 1974年生まれで2009年に子供ら(A2)と一緒に来日しましたが,日本への上陸の条件を満たしていないとして,上陸拒否されました。日本への上陸を拒否されたため,出国便を指定されましたが指定された飛行機に乗らないまま日本にとどまったため,不法残留状態となり,入国管理局で収容されてしまいました。その後,A1は本人及び子供たちのために複数回,難民認定申請や在留特別許可を求めて異議の申し立てを行いましたがいずれも認められず,難民認定しない処分の取消を求めて訴訟を起こし最高裁判所まで争っていましたが,最終的にはこれも認められていませんでした。なお,2017年に日本で永住権を有する外国人の方と結婚して,子供たちとも養子縁組をしていました。

A2 長女 2002年に今後で生まれて,A1と一緒に来日しましたが,日本への上陸の条件を満たしていないとして上陸拒否されました。その後の経緯はA1と同じですが日本の小学校へ入学し,その後中学校,高校へと進学していました。日本で母親が結婚したため義父と養子縁組をしました。A2は母国語が日本語で,国籍のある国の言語はほとんど理解することが出来ないよな状況でした。

A3 長男 2014年に日本で,A1を母親として生まれました。

なお,A1,2,3の国籍のある国は,国内の情勢が安定しておらず,A1,2,3の3人も,もしそのまま帰国してしまうと迫害を受けるおそれがあるとして難民認定を求めていました。

 

裁判所の判断,重要なポイント

まず,裁判所はA1さんたちの訴えのうち,「改めて在留特別許可をするように求める」という部分は,訴訟の条件を満たさないとして内容まで踏み込んだ判断はしませんでした。

そのうえで,「在留特別不許可の処分を取り消す」かどうかという点について,裁判所は,A1,A3の在留特別不許可の処分は違法ではないが,A2の在留特別不許可処分は違法であるとして取り消す判決をしました。

訴訟で一番の争点となったのは,「在留を認める特別な事情があった」と言えるかどうかという点でした。法務大臣(国)側は,概ね,A2の日本における在留は不法残留であってその期間が長期化していたとしても保護するべきではないし,日本での進学が決まっているとしてもそれも保護には値せず,元々日本に来るまでは本国で育っていたのだから強制送還しても元の国に馴染めるのだから問題はないと主張していました。

裁判所は,A2が日本の義務教育のほとんど終えていて部活動などで日本の同世代の生徒とも交流をしていること等から「日本の社会に深くなじんで」いて,日本の社会に「良好に適応していると言えるのであって,本邦に高度の定着性を有するものということができる」としました。

また,在留特別許可が不許可となった時にはA2は15歳で,「本国の生活環境,文化,社会などに適応していくことは相当困難であるとい言わざるを得ない」としています。

そして,A2が不法残留の結果として日本に定着することになったという国側の主張に対しても,わずか6歳で入国したA2が一人で本国に帰るということは現実的ではなく,不法残留であるということの責任をA2一人にとらせることはできないし,A2の日本での生活は保護に値すると判断しました。

なお,A1,つまり,母親の在留特別不許可の判断は違法ではないとされましたので,A1とA2は離れ離れになって暮らす可能性が高まってしまいます。しかし,そうだとしても,A2の学費が免除されていて養子縁組した父親がいる事や,インターネットなどを通じて親子で連絡を取ることができる事,A2が望めば日本から本国に旅行に行くこともできる事から,親子関係の点でも問題がないとしました。

そして,裁判所はA2が日本を離れて生活することは「将来の可能性を著しく損なうものであったと言わざるを得ず,本邦から退去強制されることにつき重大な支障があったと言えるところ,東京入管局長は上記処分を行うにあたり原告長女が本邦を離れて生活することによって生ずる支障を過少に評価し,原告長女の本邦への定着性などの保護する必要性についての評価を誤ったものと認められる」としています。

コメント

この裁判では,日本に入国してからの生活状況等日本にどの程度定着しているかという点と,その定着性をどれだけ保護するべきかという点が重要な点となりました。6歳の女の子を入管の施設に収容するということ自体,大変異常な事態であると思いますが,6歳の子が不法残留(オーバーステイ)状態になったことについて本人に責任がある等とは,言えるはずがありません。この裁判例はA2に対して,在留特別許可が認められる可能性を示していますが,全くその通りです。

一見すると,とても当たり前の判断のようにも見えますが,それでも日本での在留を認めまいとするのが今の入管の実務です。

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