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建造物侵入罪で強制送還される可能性は?弁護士が解説
9月22日の報道の中に,大阪府市内の建設現場に無断で立ち入ったとされる米国籍の男性が逮捕された,という事案がありました。
毎日新聞:
報道では具体的な事実までは分かりませんが,このような事案において,当該外国人の方の在留資格はどのように処理されるのでしょうか。
また,退去強制(強制送還)される可能性はあるのでしょうか。日本の入管法における強制送還の手続きから解説をします。
退去強制とは
日本から外国人の方を強制送還する手続きのことを,正式には「退去強制」と言います。
退去強制手続きは主に
- 理由となる事実の発生(例:オーバーステイ,不法就労,虚偽の申請,犯罪歴などなど)
- 入国警備員による調査
- 入国審査官による審査
- (場合によっては)法務大臣による裁決
という4つの段階を踏まえて進められていくことになります。
退去強制の理由となる理由が発生した場合,そのことを入国管理局が知ることで調査が実施されます。調査の結果は全て,入国審査官へ引き継がれて「強制送還をすることが適法かどうか」の審査がなされます。審査の結果を踏まえて,強制送還が最終的に決定されることになります。
強制送還をする,という審査がなされた後,決定に不服がある場合には異議を申し出て口頭審理,法務大臣の裁決へと手続きが進みます。
口頭審理,法務大臣の裁決を踏まえて,最終的に強制送還をするか,在留特別許可をするか,それとも強制送還をしないか,といった決定が下されることになるのです。
刑事事件を起こしてしまった外国人の方が強制送還されるかどうかという点や,審査手続きの流れについて細かく解説します。
退去強制の理由になる事実
入管法上,刑事事件と関連して強制送還される場合というのは,次のような場合です。
- 一定の入管法によって処罰された場合
- 一定の旅券法に違反して懲役,禁錮刑に処せられた場合(資格外活動の場合,罰金だけでもアウト!)
- 麻薬取締法,覚醒剤取締法,大麻取締法などの薬物事件で有罪判決を受けた場合
- 一定の刑法犯で懲役,禁錮刑に処せられた場合(執行猶予がついてもアウト!)
- どの法律違反であっても,「1年を超える実刑判決」を受けた場合
執行猶予が付いたとしても強制送還になってしまう刑法犯は,代表的には次のようなものです。
-
- 住居侵入罪
- 公文書/私文書偽造罪
- 傷害罪,暴行罪
- 窃盗罪,強盗罪
- 詐欺罪,恐喝罪
これらの罪の場合,たとえ執行猶予付きの判決であったとしても,裁判が確定すると強制送還の対象となります。一定の刑法犯で懲役刑,禁錮刑に処せられたとして強制送還されるのは,入管法の別表1に該当する在留資格をもって日本に滞在している外国人の方です。入管法の別表1に該当する在留資格とは,こちらのページで列挙されています。
在留資格の一覧についてはこちらです。
何かしらの犯罪で逮捕されてしまった,というだけでは強制送還の対象とはなっていません。ですが,逮捕,勾留に引き続いて「公判請求」,つまり,「起訴」がなされてしまうと有罪の判決が言い渡される可能性が極めて高く,有罪の判決を受けると内容によっては強制送還されてしまう可能性があるということです。
特に,薬物事件や入管法違反については,「悪質な事案」として入管法でも厳しく扱われており,強制送還されやすくなっています。逆に,一般刑法の違反の場合には,「その罪名や言い渡された刑の内容によっては強制送還される」という定め方になっています。また,刑法犯の一部,特に,他人の法益を直接侵害したという犯罪や,公共の秩序そのものを害した犯罪については,執行猶予付きの判決が出たとしても強制送還の対象としています。
報道の事案では,「建造物侵入罪」で逮捕ということですが,建造物侵入罪は住居侵入罪と同じ刑法130条に該当する犯罪です。そのため,今後,建造物侵入罪によって起訴されて有罪の判決になってしまうと,強制送還の対象となる可能性があります。
建造物侵入罪に対する刑は,3年以下の懲役又は10万円以下の罰金とされています。罰金処分となる可能性も0ではありませんが,そもそも罰金の上限が10万円と低いため,建造物侵入の事案の場合,よほど軽微なものでなければ罰金で終わるというよりも,正式な裁判で起訴されてしまう可能性が高いでしょう。
入国警備官による調査
刑事事件を起こしてしまったことが強制送還の理由となってしまった場合,刑事手続きが終了した後,近くの各地方出入国在留管理局に呼び出された上で,入国警備官による調査を受けることになります。
この時の調査の内容は,「退去強制をするべき事実が発生したかどうか」ということに限られます。そのため,調査での一番の調査事項は,
- 一定の入管法によって処罰されたかどうか
- 一定の旅券法に違反して懲役,禁錮刑に処せられたかどうか
- 麻薬取締法,覚醒剤取締法,大麻取締法などの薬物事件で有罪判決が確定したかどうか
- 一定の刑法犯で懲役,禁錮刑に処せられたかどうか
- どの法律違反であっても,「1年を超える実刑判決」を受けたかどうか
という点になります。そして,これらの事実のほとんどは,刑事裁判の結果を基に認定がなされます。
裁判で事実を争っていない場合にはそのまま「強制送還の理由あり」という認定になってしまうでしょう。
裁判で争っていた場合,または入管の手続きになってから初めて事実を争うという場合,改めて証拠を提出したり詳細な主張を行ったりする必要があります。
入国審査官による審査
入国警備官が調査した内容は,そのまま入国審査官へと引き継がれていきます。そして入国審査官が対象となる外国人の方と面談(interview)を行い,審査を実施します。
審査の対象となるのも上に書かれた調査事項と同様です。
なお,強制送還の理由となる事実に加えて,日本での生活や仕事のこと,家族のこと,財産のこと等も一緒に質問されることがあります。
これは,強制送還の理由になる事実があったとしても,在留特別許可をするかどうか,という判断で考慮される事情になります。
審査が終わると強制送還の理由になる事実があったか/なかったか,という点についての判断がなされ,「事実があった」と認定されると一時的に入管の施設に収容されてしまいます。
元々オーバーステイだった場合には,そのまま収容が続いてしまうことが多くあります。
一方で,審査が終わるまでは一応在留資格をもって日本に在留していたという方の場合,一時的に収容の手続きがなされたとしても,すぐに「仮放免」といって,保証金を払うことで釈放される場合もあります。仮放免の解説はこちらです。
入国審査官による審査が不服であった場合,強制送還の理由になる事実があったとしても,さらに日本での在留を希望する場合には,その後の口頭審理という手続きを行うことになります。
口頭審理とは何か?
口頭審理とは,入国審査官が「退去強制事由がある」と判断をしたことに対して,特別審査官が再度審査をするという手続きのことです。
退去強制になるまでには,
- 理由となる事実の発生(例:オーバーステイ,不法就労,虚偽の申請,犯罪歴などなど)
- 入国警備員による調査
- 入国審査官による審査
- (場合によっては)法務大臣による裁決
という段階がありますが,「口頭審理」という手続きは,この3と4のちょうど間にある手続です。
口頭審理では,入国審査官の判断が間違っていたかどうか,が審理の対象になります。
そのためまずは,強制送還の理由となった事情について再度細かく質問を受け,その後,日本での在留に関する質問をされます。ですが,口頭審理でのインタビューは,法務大臣の裁決という手続きに進む前の,最後のインタビュー手続きです。
そのため,口頭審理の場では,違反審査に関する事だけでなく,在留特別許可を認めるかどうかの判断で重要となる部分の『聞き取り』も行われることになっています。
ただ,あくまで「聞き取り」を行うだけですので,事実に間違いがない限りは,口頭審理の結果については,「元の審査に誤りはなかった」と判断されることになります。
口頭審理の後も,引き続き日本での在留を希望するという場合には,異議の申立てをして,法務大臣の裁決を求めることになります。
口頭審理のポイントとなるのは,『法務大臣による裁決前の最後のインタビューである』という点です。
法務大臣の裁決
入国警備官による調査から始まって,強制送還に関する最後の手続きが法務大臣の裁決という手続きです。
この手続では面談などはなく,口頭審理の結果を踏まえて在留特別許可をするかどうかについて,書面による審査が実施されます。
法務大臣の裁決では,それまでの手続きにおける間違いがないかどうかという点の審査に加えて,在留特別許可をするかどうかという最も重要な点についての審査が行われます。
在留特別許可をするかどうかについては,入管における判断の透明性を確保するという観点から,ガイドラインが公開されています。
そのガイドラインの大枠は,次のようなものになります。
- 積極要素
日本人の子か特別永住者の子である
日本人か特別永住者との間に生まれた未成年の子を育てていて親権を持っていること等
日本人化特別永住者との間に法律上有効な婚姻が成立している
⇒日本と外国人とが,家族関係を持つレベルで接着していること
- 消極要素
重大犯罪によって刑に処せられた
出入国管理行政の根幹を犯す違反をした
反社会性の高い違反をした
⇒日本に在留させることが日本にとって不利益が特に大きい場合
最終的には様々な事情を総合して判断することにはなりますが,これらの積極要素/消極要素を中心にして,過去の事例なども参考にしながら,在留特別許可をするかどうかの判断がなされます。
報道の事例の場合,今後,建造物侵入罪によって起訴され,執行猶予付きの有罪判決となってしまった場合,元々の在留資格の種類によっては退去強制の対象となります。
仮に日本での在留の継続を希望するのであれば,在留特別許可を受ける必要があります。
まとめ
報道の事例では「建造物侵入罪」で今後起訴され,有罪の判決を受けた場合には①判決の重さ,②その時の在留資格の種類によっては,退去強制(強制送還)の手続きが開始されることになります。
本記事では報道を基に,建造物侵入罪によって逮捕された外国籍の人の手続きについて解説をしました。
日本での芸術活動!「芸術」在留資格の詳細と取得ポイント
在留資格「芸術」について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が紹介します。
この「芸術」の在留資格に該当する活動としては、収入を伴う音楽、美術、文学その他の芸術上の活動(在留資格「興行」に係るものを除く。)などです。
「芸術」の該当例としては、作曲家・作詞家・画家・彫刻家・工芸家・著述家・写真家・音楽、美術、文学、写真、演劇、舞踊、映画などの指導を行う者などです。
「芸術」の在留期間は、5年、3年、1年又は3月です。
「芸術」の在留資格を取得するためには、以下の要件を充足する必要があります。
1.学歴、職歴、活動履歴について
「芸術」の在留資格は「芸術活動」又は「芸術に関する指導」を行うことが主な目的とされるので、過去に相当の業績があり、芸術活動に従事することにより安定した生活を営むことができるかどうか。または人に指導できるだけの知識や実力があるかどうかが重要なポイントになります。
「5年以上の指導を行っていること」などの具体的な定めはありませんが、母国における指導経験があったり、世界的に有名な大会での受賞暦があったり、何かを指導するに足りるだけの芸術上の活動歴を証明する必要があります。
2.芸術活動による報酬(収入)があること
「芸術」の在留資格は就労の在留資格と同種なので、芸術活動を行う上で安定した収入が得られることが必要です。
なお、「芸術活動を行う上で安定した収入」が具体的にいくらなのかについては明確な定めはありませんが、少なくとも自身が日本で生活をする上で困ることのない金額を安定的に得ることが必要です。
この点において、「文化活動」の在留資格とは明確に区別されています。
3.除外される活動について
「芸術」の在留資格の活動内容と近い関係にあるのが、「教授」や「興行」の在留資格です。
仮に、芸術関係の指導であったとしても、大学等において研究の指導または教育をする活動は、「教授」の在留資格に該当するため、「芸術」の在留資格を取得することはできません。
また、興行形態で行われる芸術上の活動を主業務とする場合においても、「芸術」の在留資格を取得することはできません。
上記のように、「芸術」の在留資格は、日本で安定的に収入を得られることを前提に、「教授」や「興行」の在留資格に該当しない活動をすることを十分に立証することができるか否かによって在留資格が認められるか否かに大きな影響を与えるため、「芸術」の在留資格のことでお困りの方はお気軽にお問い合わせください。
「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を解説!取得の条件と具体例
日本での就労を希望する外国人には様々な在留資格が存在します。
その中でも「技術・人文知識・国際業務」の在留資格は、多くの外国人が関心を持つカテゴリーの一つです。この記事では、この在留資格の取得条件と具体例を詳しく解説します。
1. 「技術・人文知識・国際業務」の在留資格とは?
「技術・人文知識・国際業務」の在留資格は、日本での専門的な業務を行うための資格の一つです。
この資格は、技術的な知識やスキル、人文科学や社会科学の知識、また国際的な業務の経験を持つ外国人が、日本の企業や団体でその専門性を活かして働くことを目的としています。
例えば、外国の企業との取引をサポートする業務や、特定の技術を持つエンジニアとしての就労、外国文化や言語の専門家としての活動などが該当します。
この資格を取得することで、日本での就労の幅が広がり、多くのチャンスが生まれるでしょう。
2. 取得の基本条件
「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を取得するための基本条件は以下の通りです。
-
学歴や経験:
日本の大学を卒業、または日本国外の大学で人文科学、社会科学、自然科学に関する学士号以上の学位を取得していること。
または、該当する業務に関する10年以上の実務経験を有すること。 -
雇用契約:
日本国内の企業や団体との雇用契約が必要です。
この契約は、該当する業務に関連するものであることが求められます。 -
報酬:
報酬は、日本国内の同等の職種や業務内容を持つ者と同等またはそれ以上であることが求められます。 -
その他:
申請者の過去の在留履歴や犯罪歴など、その他の条件も考慮される場合があります。
3. 「技術」の具体例
「技術」のカテゴリーにおける在留資格は、専門的な技術や知識を持つ外国人が日本での就労を目指す際のものです。以下は、具体的な例として考えられる業務内容です。
-
ITエンジニア:
日本のIT企業でのソフトウェア開発やシステム構築などの業務。
例: 外国での経験を活かして、日本の企業向けに特定のソフトウェアの開発を行う。 -
建築・土木技術者:
建築設計や土木工事の監督、プロジェクト管理などの業務。
例: 海外の大型プロジェクトでの経験を活かして、日本のインフラ整備に関与する。 -
医療技術者:
医療機器の開発や医薬品の研究、臨床試験などの業務。
例: 外国での新薬開発の経験を持ち、日本の医薬品企業で研究を行う。 -
製造技術者:
工場での生産ラインの最適化や新しい製造技術の導入などの業務。
例: 海外の先進的な製造技術を日本の工場に導入するための業務。
4. 「人文知識」の具体例
「人文知識」のカテゴリーは、人文科学や社会科学に関する専門的な知識や技術を持つ外国人が日本での就労を目指す際のものです。以下は、具体的な例として考えられる業務内容です。
-
言語教育:
外国語の教師として、学校や教育機関での授業や研修を行う業務。
例: ネイティブスピーカーとして、日本の大学で英語の授業を担当する。 -
文化交流:
外国の文化や歴史を紹介するイベントやセミナーの企画・運営。
例: 自国の伝統的な文化や芸術を日本の市民に紹介するための展示会を開催する。 -
国際関係:
国際的なNGOやNPOでのプロジェクト管理やコーディネーション業務。
例: 国際的な子どもの権利を守る活動を行う団体で、日本と他国との連携を担当する。 -
研究・学術:
日本の研究機関や大学での研究活動や学術的な業務。
例: 外国の歴史や文化に関する研究を行い、日本の大学で教授として活動する。
5. 「国際業務」の具体例
「国際業務」のカテゴリーは、国際的なビジネスや取引に関する専門的な知識や経験を持つ外国人が日本での就労を目指す際のものです。以下は、具体的な例として考えられる業務内容です。
-
国際取引:
日本の企業と外国の企業との間での商品やサービスの輸出入に関する業務。
例: 日本の製品を外国市場に導入するためのマーケティングや営業活動を行う。 -
通訳・翻訳:
ビジネス会議や公的なイベントでの通訳、文書や契約書の翻訳業務。
例: 日本と外国の首脳会談や国際会議での同時通訳を担当する。 -
国際コンサルティング:
外国市場の調査や戦略策定、ビジネスモデルの提案などのコンサルティング業務。
例: 日本の企業が外国進出を検討する際の市場分析や戦略策定をサポートする。 -
国際プロジェクト管理:
複数の国にまたがるプロジェクトの管理やコーディネーション業務。
例: アジア各国でのインフラ整備プロジェクトの進行管理や各国との調整を行う。
6. 申請時の注意点
「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を申請する際には、以下の点に注意が必要です。
-
必要書類の確認:
申請には、雇用契約書や学歴証明書、経歴書などの書類が必要です。
事前に必要な書類を確認し、不足がないように準備しましょう。 -
申請期限の確認:
在留資格の変更や更新を希望する場合、期限内に申請を行う必要があります。
過去の在留資格の有効期限や変更のタイミングを確認し、適切な時期に申請を行うよう心掛けましょう。 -
申請内容の正確性:
申請書類に記載する内容は、正確で事実に基づいている必要があります。
虚偽の内容を記載すると、在留資格の取得が難しくなるだけでなく、将来的な在留資格の取得も困難になる可能性があります。 -
申請後の手続き:
在留資格の申請後、追加の書類提出や面接などの手続きが求められる場合があります。
申請後も、関連する情報や通知を確認し、必要な手続きを迅速に行うよう心掛けましょう。
7. まとめ:在留資格を取得しよう
「技術・人文知識・国際業務」の在留資格は、日本での専門的な業務を行いたい外国人にとって、大きなチャンスとなる資格です。
この記事を通じて、その取得条件や具体的な業務例、申請時の注意点などを学ぶことができました。
-
資格取得のメリット:
この資格を持つことで、日本の多様な業界や分野での就労が可能となります。
また、専門的な知識や経験を活かして、日本の企業や団体でのキャリアアップを目指すことができます。 -
正確な情報の収集:
在留資格の取得や更新に関する最新の情報や手続きは、入国管理局の公式サイトなどで確認することができます。
正確かつ最新の情報を基に、適切な手続きを行うことが重要です。 -
前向きな取り組み:
在留資格の取得は、多くの手続きや準備が必要ですが、それを乗り越えることで、日本での新しい生活やキャリアが広がります。
前向きな気持ちで、資格取得に向けた取り組みを進めていきましょう。
日本での宗教活動!在留資格を解説
在留資格「宗教」について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が紹介します。
この「宗教」の在留資格に該当する活動としては、外国の宗教団体により本邦に派遣された宗教家の行う布教その他の宗教上の活動などです。
具体的には、外国の宗教団体により派遣された僧侶、司教、司祭、伝道師、牧師、修道士、神官等が日本で宗教活動を行う場合に、この「宗教」の在留資格が必要になります。
「宗教」の該当例としては、外国の宗教団体から派遣される宣教師などです。
「宗教」の在留期間は、5年、3年、1年又は3月です。
1.「宗教」の在留資格の要件について
外国の宗教団体は、必ずしも特定の宗派の本部であることは必要ではありません。
日本に本部のある宗教団体に招聘された場合でも、申請人が国外の宗教団体(日本にある宗教団体と直接の関係があるかどうかは関係なし)に現に所属しており、かつ該当団体からの派遣状又は推薦状を受けていれば、外国の宗教団体から派遣された者に該当します。
宗教活動に関連したものであれば、祭事に必要な物品の販売などを行う「宗教団体の職員」を兼務することも可能ですが、雑務のみを行う場合は、「宗教」の在留資格は付与されません。
また、単なる信者としての活動を行う場合も、「宗教」の在留資格は付与されません。
日本で継続的に「宗教上の活動」を行うための拠点が確保されている必要があります。
さらに、派遣元(外国)・派遣先(日本)から受ける報酬額が、日本で安定的に生活をおくることができる十分な金額である必要があります。
宣教活動をしつつ、語学教育や医療、社会事業の活動を行う場合であっても、これらが所属宗教団体の指示に基づいて宣教活動等の一環として行われるものであり、かつ無報酬で行われる場合は、宗教上の活動として認められます。
なお、報酬を受けて行う場合には、別途、資格外活動許可の申請が必要になります。
当然ですが、宗教上の活動であっても、その内容が国内法令に違反するもの又は公共の福祉を害するものであってはいけません。
2.「宗教」の在留資格の申請上の注意点について
「宗教」の在留資格を取得するためには、前述の要件を有していることを書面において十分に立証することが必要です。
例えば、派遣先が発行する文書で、宗教家としての「地位・職歴」を証明し、また、派遣・受入機関の概要を説明する文書を提出して、「宗教上の活動」を日本で行う予定であることを合理的に説明します。
また、派遣元・派遣先が発行する文書で、「宗教上の活動」から十分な収入が得られることを証明します。
日本に在留する外国人の方は、原則として本人自らが地方入国管理局に出向き、申請等の書類を提出しなければなりませんが、弁護士や行政書士が取次ぎを行って申請をすることもできます。
上記のように、「宗教」の在留資格は、要件の該当性を十分に立証することができるか否かによって在留資格が認められるか否かに大きな影響を与えるため、「宗教」の在留資格のことでお困りの方はお気軽にお問い合わせください。
強制わいせつで逮捕!強制送還のリスクと対策
日本での生活は多くの外国人にとって魅力的ですが,日本の法律に違反した場合,その夢は一瞬で崩れ去る可能性があります。特に強制わいせつなどの犯罪行為は強制送還の対象となる可能性が高くあります。この記事では,強制わいせつで逮捕された架空のAさんの事例を通じて,強制送還手続きとその対策について詳しく解説します。
事例紹介
Aさんは,30歳のX国籍で,日本でエンジニアとして働いていました。2023年の夏,東京の夜の街で酒に酔ってしまい,見知らぬ女性に対して強制わいせつ行為をしてしまいます。この行為が目撃され,警察に逮捕されました。Aさんはその後,起訴され,懲役2年の有罪判決を受けました。この事件により,Aさんの在留資格が危うくなり,強制送還の手続きが始まりました。
退去強制とは
日本から外国人の方を強制送還する手続きのことを,正式には「退去強制」と言います。
退去強制手続きは主に
- 理由となる事実の発生(例:オーバーステイ,不法就労,虚偽の申請,犯罪歴などなど)
- 入国警備員による調査
- 入国審査官による審査
- (場合によっては)法務大臣による裁決
という4つの段階を踏まえて進められていくことになります。
退去強制の理由となる理由が発生した場合,そのことを入国管理局が知ることで調査が実施されます。調査の結果は全て,入国審査官へ引き継がれて「強制送還をすることが適法かどうか」の審査がなされます。審査の結果を踏まえて,強制送還が最終的に決定されることになります。
強制送還をする,という審査がなされた後,決定に不服がある場合には異議を申し出て口頭審理,法務大臣の裁決へと手続きが進みます。
口頭審理,法務大臣の裁決を踏まえて,最終的に強制送還をするか,在留特別許可をするか,それとも強制送還をしないか,といった決定が下されることになるのです。
刑事事件を起こしてしまった外国人の方が強制送還されるかどうかという点や,審査手続きの流れについて細かく解説します。
退去強制の理由になる事実
入管法上,刑事事件と関連して強制送還される場合というのは,次のような場合です。
- 一定の入管法によって処罰された場合
- 一定の旅券法に違反して懲役,禁錮刑に処せられた場合(資格外活動の場合,罰金だけでもアウト!)
- 麻薬取締法,覚醒剤取締法,大麻取締法などの薬物事件で有罪判決を受けた場合
- 一定の刑法犯で懲役,禁錮刑に処せられた場合(執行猶予がついてもアウト!)
- どの法律違反であっても,「1年を超える実刑判決」を受けた場合
執行猶予が付いたとしても強制送還になってしまう刑法犯は,代表的には次のようなものです。
-
- 住居侵入罪
- 公文書/私文書偽造罪
- 傷害罪,暴行罪
- 窃盗罪,強盗罪
- 詐欺罪,恐喝罪
これらの罪の場合,たとえ執行猶予付きの判決であったとしても,裁判が確定すると強制送還の対象となります。一定の刑法犯で懲役刑,禁錮刑に処せられたとして強制送還されるのは,入管法の別表1に該当する在留資格をもって日本に滞在している外国人の方です。入管法の別表1に該当する在留資格とは,こちらのページで列挙されています。
在留資格の一覧についてはこちらです。
何かしらの犯罪で逮捕されてしまった,というだけでは強制送還の対象とはなっていません。ですが,逮捕,勾留に引き続いて「公判請求」,つまり,「起訴」がなされてしまうと有罪の判決が言い渡される可能性が極めて高く,有罪の判決を受けると内容によっては強制送還されてしまう可能性があるということです。
特に,薬物事件や入管法違反については,「悪質な事案」として入管法でも厳しく扱われており,強制送還されやすくなっています。逆に,一般刑法の違反の場合には,「その罪名や言い渡された刑の内容によっては強制送還される」という定め方になっています。
また,刑法犯の中でも傷害罪のような粗暴犯と呼ばれるような犯罪,窃盗罪や横領罪・詐欺罪のような財産犯と呼ばれるような犯罪については「他人の利益を直接侵害する犯罪」についても重く捉えられており,強制送還の可能性があります。
Aさんの事例における「強制わいせつ罪」は,直ちに強制送還の対象となるものではありませんが,「懲役2年」の判決となると強制送還の対象となります。
強制わいせつ罪の場合,執行猶予付きの判決になった場合と1年を超える懲役刑の判決となった場合とで,在留資格の手続きが大きく変わることになります。
入国警備官による調査
刑事事件を起こしてしまったことが強制送還の理由となってしまった場合,刑事手続きが終了した後,近くの各地方出入国在留管理局に呼び出された上で,入国警備官による調査を受けることになります。
この時の調査の内容は,「退去強制をするべき事実が発生したかどうか」ということに限られます。そのため,調査での一番の調査事項は,
- 一定の入管法によって処罰されたかどうか
- 一定の旅券法に違反して懲役,禁錮刑に処せられたかどうか
- 麻薬取締法,覚醒剤取締法,大麻取締法などの薬物事件で有罪判決が確定したかどうか
- 一定の刑法犯で懲役,禁錮刑に処せられたかどうか
- どの法律違反であっても,「1年を超える実刑判決」を受けたかどうか
という点になります。そして,これらの事実のほとんどは,刑事裁判の結果を基に認定がなされます。
裁判で事実を争っていない場合にはそのまま「強制送還の理由あり」という認定になってしまうでしょう。
裁判で争っていた場合,または入管の手続きになってから初めて事実を争うという場合,改めて証拠を提出したり詳細な主張を行ったりする必要があります。
入国審査官による審査
入国警備官が調査した内容は,そのまま入国審査官へと引き継がれていきます。そして入国審査官が対象となる外国人の方と面談(interview)を行い,審査を実施します。
審査の対象となるのも上に書かれた調査事項と同様です。
なお,強制送還の理由となる事実に加えて,日本での生活や仕事のこと,家族のこと,財産のこと等も一緒に質問されることがあります。
これは,強制送還の理由になる事実があったとしても,在留特別許可をするかどうか,という判断で考慮される事情になります。
審査が終わると強制送還の理由になる事実があったか/なかったか,という点についての判断がなされ,「事実があった」と認定されると一時的に入管の施設に収容されてしまいます。
元々オーバーステイだった場合には,そのまま収容が続いてしまうことが多くあります。
一方で,審査が終わるまでは一応在留資格をもって日本に在留していたという方の場合,一時的に収容の手続きがなされたとしても,すぐに「仮放免」といって,保証金を払うことで釈放される場合もあります。仮放免の解説はこちらです。
入国審査官による審査が不服であった場合,強制送還の理由になる事実があったとしても,さらに日本での在留を希望する場合には,その後の口頭審理という手続きを行うことになります。
口頭審理とは何か?
口頭審理とは,入国審査官が「退去強制事由がある」と判断をしたことに対して,特別審査官が再度審査をするという手続きのことです。
退去強制になるまでには,
- 理由となる事実の発生(例:オーバーステイ,不法就労,虚偽の申請,犯罪歴などなど)
- 入国警備員による調査
- 入国審査官による審査
- (場合によっては)法務大臣による裁決
という段階がありますが,「口頭審理」という手続きは,この3と4のちょうど間にある手続です。
口頭審理では,入国審査官の判断が間違っていたかどうか,が審理の対象になります。
そのためまずは,強制送還の理由となった事情について再度細かく質問を受け,その後,日本での在留に関する質問をされます。ですが,口頭審理でのインタビューは,法務大臣の裁決という手続きに進む前の,最後のインタビュー手続きです。
そのため,口頭審理の場では,違反審査に関する事だけでなく,在留特別許可を認めるかどうかの判断で重要となる部分の『聞き取り』も行われることになっています。
ただ,あくまで「聞き取り」を行うだけですので,事実に間違いがない限りは,口頭審理の結果については,「元の審査に誤りはなかった」と判断されることになります。
口頭審理の後も,引き続き日本での在留を希望するという場合には,異議の申立てをして,法務大臣の裁決を求めることになります。
口頭審理のポイントとなるのは,『法務大臣による裁決前の最後のインタビューである』という点です。
法務大臣の裁決
入国警備官による調査から始まって,強制送還に関する最後の手続きが法務大臣の裁決という手続きです。
この手続では面談などはなく,口頭審理の結果を踏まえて在留特別許可をするかどうかについて,書面による審査が実施されます。
法務大臣の裁決では,それまでの手続きにおける間違いがないかどうかという点の審査に加えて,在留特別許可をするかどうかという最も重要な点についての審査が行われます。
在留特別許可をするかどうかについては,入管における判断の透明性を確保するという観点から,ガイドラインが公開されています。
そのガイドラインの大枠は,次のようなものになります。
- 積極要素
日本人の子か特別永住者の子である
日本人か特別永住者との間に生まれた未成年の子を育てていて親権を持っていること等
日本人化特別永住者との間に法律上有効な婚姻が成立している
⇒日本と外国人とが,家族関係を持つレベルで接着していること
- 消極要素
重大犯罪によって刑に処せられた
出入国管理行政の根幹を犯す違反をした
反社会性の高い違反をした
⇒日本に在留させることが日本にとって不利益が特に大きい場合
最終的には様々な事情を総合して判断することにはなりますが,これらの積極要素/消極要素を中心にして,過去の事例なども参考にしながら,在留特別許可をするかどうかの判断がなされます。
まとめ
Aさんの事例では「懲役2年の判決」という点が強制送還の理由となり,事例にあるAさんの事情だけでは,在留特別許可をもらえる可能性は低いでしょう。
それまでAさんが適法な在留資格をもっていたのであれば仮放免が認められる可能性もありますが,懲役刑を受けている間にオーバーステイとなってしまう可能性もあります。
日本に残って生活を続けたいと希望する場合には
①刑事事件の手続の中で強制送還の理由になってしまわないように対応する
②入管手続の中で在留特別許可が得られる可能性を模索することが重要です。
強制送還に関する手続きについて,弁護士等に一度ご相談された方が良いでしょう。
偽ブランドの販売で強制送還になる?!強制送還手続きについて解説
日本への滞在にはさまざまな在留資格が存在し、外国人にとって法律遵守は非常に重要です。
今回は、商標法違反により逮捕され、罰金刑を受けた外国人Aさんの事例を通じて、ビザに関する法的な側面を探求しましょう。
Aさんのケースを通じて、外国人が日本で法的トラブルに巻き込まれた場合、在留資格にどのような影響が及ぶのか、そしてどのように対処すべきかを考察します。
事例紹介
Aさんは、日本への技術・人文知識・国際業務のビザを持つ外国人です。Aさんは日本国内で偽ブランド品の売買という商標法に違反する行為を行い、その結果、逮捕されてしまいました。
商標法は、知的財産権に関する重要な法律であり、知識が不足していたためにAさんは法に触れる行為を行ってしまったのです。
逮捕後、Aさんは裁判にかけられ、罰金刑を受けることになりました。しかし、彼の心配事は罰金刑だけではありませんでした。Aさんは、この法的トラブルが彼の在留資格にどのような影響を及ぼすのか、そして今後のビザがどうなるのか,強制送還されてしまうのかについても不安でいっぱいでした。
退去強制とは
日本から外国人の方を強制送還する手続きのことを,正式には「退去強制」と言います。
退去強制手続きは主に
- 理由となる事実の発生(例:オーバーステイ,不法就労,虚偽の申請,犯罪歴などなど)
- 入国警備員による調査
- 入国審査官による審査
- (場合によっては)法務大臣による裁決
という4つの段階を踏まえて進められていくことになります。
退去強制の理由となる理由が発生した場合,そのことを入国管理局が知ることで調査が実施されます。調査の結果は全て,入国審査官へ引き継がれて「強制送還をすることが適法かどうか」の審査がなされます。審査の結果を踏まえて,強制送還が最終的に決定されることになります。
強制送還をする,という審査がなされた後,決定に不服がある場合には異議を申し出て口頭審理,法務大臣の裁決へと手続きが進みます。
口頭審理,法務大臣の裁決を踏まえて,最終的に強制送還をするか,在留特別許可をするか,それとも強制送還をしないか,といった決定が下されることになるのです。
刑事事件を起こしてしまった外国人の方が強制送還されるかどうかという点や,審査手続きの流れについて細かく解説します。
退去強制の理由になる事実
入管法上,刑事事件と関連して強制送還される場合というのは,次のような場合です。
- 一定の入管法によって処罰された場合
- 一定の旅券法に違反して懲役,禁錮刑に処せられた場合(資格外活動の場合,罰金だけでもアウト!)
- 麻薬取締法,覚醒剤取締法,大麻取締法などの薬物事件で有罪判決を受けた場合
- 一定の刑法犯で懲役,禁錮刑に処せられた場合(執行猶予がついてもアウト!)
- どの法律違反であっても,「1年を超える実刑判決」を受けた場合
執行猶予が付いたとしても強制送還になってしまう刑法犯は,代表的には次のようなものです。
-
- 住居侵入罪
- 公文書/私文書偽造罪
- 傷害罪,暴行罪
- 窃盗罪,強盗罪
- 詐欺罪,恐喝罪
これらの罪の場合,たとえ執行猶予付きの判決であったとしても,裁判が確定すると強制送還の対象となります。一定の刑法犯で懲役刑,禁錮刑に処せられたとして強制送還されるのは,入管法の別表1に該当する在留資格をもって日本に滞在している外国人の方です。入管法の別表1に該当する在留資格とは,こちらのページで列挙されています。
在留資格の一覧についてはこちらです。
何かしらの犯罪で逮捕されてしまった,というだけでは強制送還の対象とはなっていません。ですが,逮捕,勾留に引き続いて「公判請求」,つまり,「起訴」がなされてしまうと有罪の判決が言い渡される可能性が極めて高く,有罪の判決を受けると内容によっては強制送還されてしまう可能性があるということです。
特に,薬物事件や入管法違反については,「悪質な事案」として入管法でも厳しく扱われており,強制送還されやすくなっています。逆に,一般刑法の違反の場合には,「その罪名や言い渡された刑の内容によっては強制送還される」という定め方になっています。
Aさんの事例では裁判で罰金刑を受けただけということですから,直ちに強制送還の対象とはなりません。
ただし,Aさんが逮捕されている間に在留期限を過ぎてしまった場合にはオーバーステイとなります。また,次回の在留期間の更新で「罰金刑を受けたこと」が不利な事情となって更新が認められなくなってしまう可能性があります。在留期間の更新が認められないままで日本に残り続けた場合にも,同じようにオーバーステイとなってしまいます。オーバーステイは強制送還の理由として最たるものとなります。
入国警備官による調査
刑事事件を起こしてしまったことが強制送還の理由となってしまった場合,刑事手続きが終了した後,近くの各地方出入国在留管理局に呼び出された上で,入国警備官による調査を受けることになります。
この時の調査の内容は,「退去強制をするべき事実が発生したかどうか」ということに限られます。そのため,調査での一番の調査事項は,
- 一定の入管法によって処罰されたかどうか
- 一定の旅券法に違反して懲役,禁錮刑に処せられたかどうか
- 麻薬取締法,覚醒剤取締法,大麻取締法などの薬物事件で有罪判決が確定したかどうか
- 一定の刑法犯で懲役,禁錮刑に処せられたかどうか
- どの法律違反であっても,「1年を超える実刑判決」を受けたかどうか
という点になります。そして,これらの事実のほとんどは,刑事裁判の結果を基に認定がなされます。
裁判で事実を争っていない場合にはそのまま「強制送還の理由あり」という認定になってしまうでしょう。
裁判で争っていた場合,または入管の手続きになってから初めて事実を争うという場合,改めて証拠を提出したり詳細な主張を行ったりする必要があります。
入国審査官による審査
入国警備官が調査した内容は,そのまま入国審査官へと引き継がれていきます。そして入国審査官が対象となる外国人の方と面談(interview)を行い,審査を実施します。
審査の対象となるのも上に書かれた調査事項と同様です。
なお,強制送還の理由となる事実に加えて,日本での生活や仕事のこと,家族のこと,財産のこと等も一緒に質問されることがあります。
これは,強制送還の理由になる事実があったとしても,在留特別許可をするかどうか,という判断で考慮される事情になります。
審査が終わると強制送還の理由になる事実があったか/なかったか,という点についての判断がなされ,「事実があった」と認定されると一時的に入管の施設に収容されてしまいます。
元々オーバーステイだった場合には,そのまま収容が続いてしまうことが多くあります。
一方で,審査が終わるまでは一応在留資格をもって日本に在留していたという方の場合,一時的に収容の手続きがなされたとしても,すぐに「仮放免」といって,保証金を払うことで釈放される場合もあります。仮放免の解説はこちらです。
入国審査官による審査が不服であった場合,強制送還の理由になる事実があったとしても,さらに日本での在留を希望する場合には,その後の口頭審理という手続きを行うことになります。
口頭審理とは何か?
口頭審理とは,入国審査官が「退去強制事由がある」と判断をしたことに対して,特別審査官が再度審査をするという手続きのことです。
退去強制になるまでには,
- 理由となる事実の発生(例:オーバーステイ,不法就労,虚偽の申請,犯罪歴などなど)
- 入国警備員による調査
- 入国審査官による審査
- (場合によっては)法務大臣による裁決
という段階がありますが,「口頭審理」という手続きは,この3と4のちょうど間にある手続です。
口頭審理では,入国審査官の判断が間違っていたかどうか,が審理の対象になります。
そのためまずは,強制送還の理由となった事情について再度細かく質問を受け,その後,日本での在留に関する質問をされます。ですが,口頭審理でのインタビューは,法務大臣の裁決という手続きに進む前の,最後のインタビュー手続きです。
そのため,口頭審理の場では,違反審査に関する事だけでなく,在留特別許可を認めるかどうかの判断で重要となる部分の『聞き取り』も行われることになっています。
ただ,あくまで「聞き取り」を行うだけですので,事実に間違いがない限りは,口頭審理の結果については,「元の審査に誤りはなかった」と判断されることになります。
口頭審理の後も,引き続き日本での在留を希望するという場合には,異議の申立てをして,法務大臣の裁決を求めることになります。
口頭審理のポイントとなるのは,『法務大臣による裁決前の最後のインタビューである』という点です。
法務大臣の裁決
入国警備官による調査から始まって,強制送還に関する最後の手続きが法務大臣の裁決という手続きです。
この手続では面談などはなく,口頭審理の結果を踏まえて在留特別許可をするかどうかについて,書面による審査が実施されます。
法務大臣の裁決では,それまでの手続きにおける間違いがないかどうかという点の審査に加えて,在留特別許可をするかどうかという最も重要な点についての審査が行われます。
在留特別許可をするかどうかについては,入管における判断の透明性を確保するという観点から,ガイドラインが公開されています。
そのガイドラインの大枠は,次のようなものになります。
- 積極要素
日本人の子か特別永住者の子である
日本人か特別永住者との間に生まれた未成年の子を育てていて親権を持っていること等
日本人化特別永住者との間に法律上有効な婚姻が成立している
⇒日本と外国人とが,家族関係を持つレベルで接着していること
- 消極要素
重大犯罪によって刑に処せられた
出入国管理行政の根幹を犯す違反をした
反社会性の高い違反をした
⇒日本に在留させることが日本にとって不利益が特に大きい場合
最終的には様々な事情を総合して判断することにはなりますが,これらの積極要素/消極要素を中心にして,過去の事例なども参考にしながら,在留特別許可をするかどうかの判断がなされます。
まとめ
Aさんの事例では商標法違反で逮捕されたこと,罰金刑を受けたこと自体は強制送還の理由にはなりません。
しかし,その後の手続によっては,強制送還の手続きが始まってしまう可能性があります。
Aさんの事情を考慮すると,きちんと日本での生活が安定していれば在留特別許可をもらえる可能性はありますが,偽ブランドの販売を長期間行っていた場合や多額の利益を得ていたという場合には,「日本で違法は商売を営んでいた」として在留特別許可がなされないということもありえます。
オーバーステイが強制送還の理由となっていた場合には,そのまま入管に収容されてしまう可能性も高くなります。
日本に残って生活を続けたいと希望する場合には違反調査から口頭審理までの手続の中で日本と良く定着していること,これから先の日本での生活が法律に適して安定したものになること主張することが重要です。
強制送還に関する手続きについて,弁護士等に一度ご相談された方が良いでしょう。
「報道」の在留資格について詳説,日本で報道に従事するためには?
在留資格「報道」について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が紹介します。
この「報道」の在留資格に該当する活動としては、外国の報道機関との契約に基づいて行う取材その他の報道上の活動などです。
「報道」の該当例としては、外国の報道機関の記者、カメラマンなどです。
「報道」のビザの場合の在留期間は、5年、3年、1年又は3月です。
「報道」の具体例には、新聞記者、雑誌記者、ルポライター、編集長、編集者、報道カメラマン、報道カメラマン助手、ラジオのアナウンサー、テレビのアナウンサーなどが挙げられます。
また、次に掲げる者が外国の報道機関との契約に基づいて行う取材、その他の報道上の活動が該当します。
①外国の報道機関に雇用されている者で、当機関から報道上の活動を行うために日本に派遣された場合
②特定の報道機関に属さず、フリーランサーとして活動する記者等で、外国の報道機関と契約して当機関のために報道上の活動を行う場合
つまり、外国の報道機関の記者、カメラマンなど外国の報道機関との契約に基づいて行う取材、その他の報道上の活動を行うためには「報道」の在留資格が必要となります。
「報道」の在留資格でいう「外国の報道機関」とは、外国に本社を置く新聞社、通信社、放送局、ニュース映画会社等報道を目的とする機関のことを意味します。
なお、報道機関は民営・国営を問いません。
「報道」の在留資格でいう「取材その他の報道上の活動」とは、この「取材」という表現は例示であり、社会の出来事を広く一般に知らせるために行う取材はもちろん、報道を行う上で必要となる撮影や編集、放送等一切の活動が含まれると考えられています。
「報道」の在留資格の注意点
①スポーツ選手などに同行して、試合や大会などの短期間の取材を行う活動は「短期滞在」の在留資格に該当します。
②外国の報道機関から派遣されることが必要ですので、活動内容が報道であっても、外国人が日本に本社のある報道機関との契約に基づく場合は、「報道」の在留資格には該当しません。
この場合には別の在留資格,「技術・人文知識・国際業務」等を所得することを検討するのが良いでしょう。
③テレビの番組制作などに係る活動については、「報道」ではなく、「興行」等といった他の在留資格に該当する可能性があります。
④その外国人の行う活動が社会学、政治学といった人文科学の知識を必要とする業務に従事する活動であるときも、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格に該当する可能性があります。
上記のように、「報道」の在留資格は、具体的にどのような活動を行うかによって取得する在留資格が異なるため、「報道」の在留資格のことでお困りの方はお気軽にお問い合わせください。
「法律・会計業務」在留資格の解説: 条件と申請の注意
在留資格「法律・会計業務」について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が紹介します。
この「法律・会計業務」の在留資格に該当する活動としては、外国法事務弁護士、外国公認会計士その他法律上資格を有する者が行うこととされている法律又は会計に係る業務に従事する活動などです。
「法律・会計業務」の該当例としては、弁護士、公認会計士などです。
「法律・会計業務」の在留期間は、5年、3年、1年又は3月です。
「法律・会計業務」の在留資格は、法律上資格を保有している方が行う法律又は会計に係る業務とされており、資格を保有していない場合には従事できない業務が対象となります。
具体的には、以下の資格が「法律・会計業務」の在留資格の対象となります。
①行政書士
②外国法事務弁護士
③外国公認会計士
④弁護士
⑤司法書士
⑥土地家屋調査士
⑦公認会計士
⑧税理士
⑨社会保険労務士
⑩弁理士
⑪海事代理士
上記の資格を有している場合でも、資格がなくても出来る業務に就く場合は「法律・会計業務」の在留資格に該当しません。
例えば、弁護士資格を有する方が企業に雇用されて法律知識を活かす業務に就く場合であっても、その業務が無資格でも行える業務である場合には、「法律・会計業務」の在留資格は取得することが出来ませんのでご留意ください。
上記の例の場合、行う業務の内容によっては、「経営・管理」や「技術・人文知識・国際業務」の在留資格に該当することも想定されます。
いずれの在留資格に該当するかという判断は、それぞれのビザの在留資格該当性や基準省令適合性から判断をする必要があります。
また、「法律・会計業務」の在留資格は、あくまでも「日本」の法律に基づく資格を意味しています。
したがって、外国の法律に基づく資格では、「法律・会計業務」の在留資格は取得することが出来ませんのでご留意ください。
なお、中小企業診断士及び不動産鑑定士の資格は含まれていないので、この点についてもご留意ください。
弁護士や行政書士となる資格を有する者が、弁護士や行政書士となるためには、弁護士名簿や行政書士名簿に登録を受けなければならないとされています。
つまり、司法試験や行政書士試験に合格したのみでは弁護士業務や行政書士業務を行うことは出来ないため、弁護士や行政書士の登録が必要となります。
そのため、弁護士資格や行政書士資格を有する場合であっても、未登録の状態では「法律・会計業務」の在留資格は取得することが出来ません。
上記のように、「法律・会計業務」の在留資格は、資格を有する場合であっても未登録の状態である場合や資格を有している場合でも資格がなくても出来る業務に就く場合には、取得することができませんので、「法律・会計業務」の在留資格のことでお困りの方はお気軽にお問い合わせください。
短期滞在の在留資格について解説,ビジネス,観光,どこまでできるか?
在留資格「短期滞在」について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が紹介します。
この「短期滞在」の在留資格に該当する活動としては、日本に短期間滞在して行う観光、保養、スポーツ、親族の訪問、見学、講習又は会合への参加、業務連絡その他これらに類似する活動などです。
「短期滞在」の該当例としては、観光客、会議参加者等です。
「短期滞在」の在留期間は、90日若しくは30日又は15日以内の日を単位とする期間です。
「短期滞在」の在留期間は、就労系在留資格と異なり、自分自身で希望する在留期間を選ぶことができます。
ただし、滞在期間が長ければ長いほど審査の基準が厳しくなるため、明確な理由がないにもかかわらず、最大の90日を選ぶことは避けた方が良いかと思います。
この「短期滞在」の在留資格の活動範囲のうち、商用に関連するものとして具体的な活動目的は次のようなものがあります。
・見学、視察等の目的で滞在する者(例えば工場などの見学、見本市等の視察を行う者)
・企業などの行う講習、説明会等に参加する者
・会議、その他の会合に参加する者
・日本に出張して業務連絡、商談、契約調印、アフターサービス、宣伝、市場調査、その他の短期商用活動を行う者
なお、日本への投資、事業開始のための市場調査等の準備行為は、通常短期滞在の活動範囲と解されます。
この「短期滞在」の在留資格で注意が必要なことは、同じ就労不可のカテゴリーに分類されている「文化活動」や「留学」、「家族滞在」の在留資格では資格外活動による就労が認められていますが、「短期滞在」の在留資格では就労活動はできないということです。
ただし業として行うものではない以下の活動については、例外的に報酬を受けることができます。
・講演、講義、討論その他これらに類似する活動
・助言、鑑定その他これらに類似する活動
・小説、論文、絵画、写真、プログラムその他の著作物の制作
・催物への参加、映画又は放送番組への出演、その他これらに類似する活動
他にも業として従事する場合を除き、親族や友人、知人の依頼を受けて、その者の日常の家事に従事する場合も謝礼金を受けることができます。
上記のように、「短期滞在」の在留資格は、あくまでも就労活動はできない在留資格であり、日本において就労するためには就労するための在留資格を取得する必要がありますので、「短期滞在」の在留資格のことでお困りの方はお気軽にお問い合わせください。
強制送還手続きと商標法違反の事例解説
日本に滞在する外国人が一定の法律違反を犯した場合、強制送還手続きが発生することがあります。この記事では、商標法に違反したAさんの事例を基に、強制送還手続きの法律的側面とその対応策について詳しく解説します。
事例紹介:
Aさんは、40歳の中国国籍で、定住者ビザで日本に在住していました。彼は、長年、東京都内の企業で働いていましたが、コロナ禍でのリストラにより職を失いました。あるとき、経済的な困窮から商標法違反に手を染めることになります。Aさんは、フリマサイトで偽ブランド品を出品したことで、商標法違反によって逮捕されました。
Aさんは数日勾留された後,略式罰金命令を受けて釈放されることになりました。定住者のビザが取り消されるのではないかと心配になったAさんは,弁護士に相談するかどうかを迷っています。
解説:
退去強制手続きは、以下のような場合に発生します。
- 一定の入管法によって処罰された場合: 旅券法違反など。
- 薬物事件で有罪判決を受けた場合: 麻薬取締法、覚醒剤取締法など。
- 一定の刑法犯で懲役、禁錮刑に処せられた場合: 執行猶予がついても対象。
- 1年を超える実刑判決を受けた場合: 任意の法律違反で刑事裁判を受けた場合。
- 窃盗罪、強盗罪、詐欺罪など、一定の刑法犯でも強制送還の対象となることがあります。
しかし、在留資格によって強制送還されるかどうかが変わることがあります。例えば、「日本人の配偶者等」や「定住者」の在留資格では、執行猶予付きの有罪判決を受けても強制送還にはなりません。
退去強制手続きは、入管法に基づいて行われます。手続きは、入国管理局が行い、強制送還の決定が下されると、外国人は日本から退去しなければなりません。強制送還の決定は、裁判所の判決とは別に行われる行政手続きです。
弁護士に相談することのメリット:
退去強制手続きは複雑であり、個々のケースに応じた専門的な対応が必要です。弁護士への早期相談が、在留資格の保持や強制送還の回避につながることが多いです。
弁護士への相談の仕方:
強制送還の対象となった場合、早急に専門の弁護士に相談することをおすすめします。具体的な事例や状況を詳しく伝え、最適な対応策を一緒に考えることが重要です。
まとめ:
強制送還手続きは、外国人の在留資格に直接関わる重要な問題です。Aさんの事例を通じて、法律的な側面と対応策を解説しました。このような状況に直面した場合、専門家への相談が重要であることを強調します。
