前回,当HPで,オリンピック出場選手のビザについて解説いたしました。
しかし,競技によってはトレーナーや器具の調整を行うスタッフも帯同することがあります。競技の種類によっては複数人のスタッフがチームを組むということもありますし,トップアスリートとなると個人的に専門スタッフを雇っていることもあります。
そのような,「選手以外のスタッフ」がオリンピック大会などのために日本に入国する場合には,どのような在留資格が必要か,解説します。
このページの目次
スポーツトレーナーの在留資格は?
外国人の方がスポーツトレーナーとして日本に入国する場合の在留資格としては,アスリートと同じ「短期滞在」,「興行」の在留資格と,スポーツトレーナー特有の在留資格として「技能」の在留資格が考えられます。
「短期滞在」の在留資格の場合については,選手の在留資格について解説した部分や,こちらも参考にされてください。
スポーツトレーナーが「興行」の在留資格を認められる場合としては,,興行として競技を行う選手の指導や選手のケアを行っている場合があります。
いわゆる,プロコーチ等が典型的な例に当たります。
興行の在留資格が認められるトレーナーやスタッフの範囲は「出演者が興行を行うために必要不可欠な補助者」に限られます。
「必要不可欠な補助者」であるかどうかは,競技の種類や内容などによってさまざまな判断が考えられます。一般的にスポーツの場合には,監督,コーチ,トレーナーであれば必要不可欠な補助者に含まれると思われます。
一方,選手とは違った在留資格として,「技能」というものもあります。
「技能」の在留資格についてはこちらでも解説しています。
スポーツトレーナーは「技能」?
技能の在留資格が認められるスポーツトレーナーとは,
____
日本の公私の機関との契約に基づいて行う~「技能」を要する業務に従事する活動
で「技能」とは具体的には,
スポーツの指導に係る技能について3年以上の実務経験(中略)を有する者若しくはこれに準ずる者として法務大臣が告示を持って定める者で,当該技能を要する業務に従事する者又はスポーツの選手としてオリンピック大会,世界選手権大会その他の国際的な競技会に出場したことがある者で,当該スポーツの指導に係る技能に要する業務に従事するもの
 ̄ ̄ ̄ ̄
とされています。
「法務大臣が告示を持って定める者」とは,国際スキー教師連盟が発行するISIAカードの交付を受けた人が該当するとされています。
コーチや監督,スポーツトレーナーとして日本に入国して,報酬が発生する活動に従事する場合の在留資格として,「技能」と「興行」の二つがありえますが,それぞれの大きな違いは,大きくまとめると次のようなものになります。
「技能」の在留資格 | 「興行」の在留資格 | |
実務経験 | 必要 | 不要 |
国際大会などの実績 | 必要な時がある |
不要 |
選手との帯同 | 不要 |
必要 |
特定の機関との契約 | 必要 |
不要 |
報酬額 | 日本人と同様かそれ以上 |
日本人と同じでなくてよい |
オリンピック選手の帯同は…
スポーツトレーナーの在留資格についてまとめて解説しました。
そこで,一番最初の疑問に戻ってみて,「オリンピック選手と一緒に大会に参加するスポーツトレーナーの在留資格はどうなる?」という点ですが,結論から言うと,
短期滞在の在留資格になる
と思われます。
オリンピック大会への参加は興行には当たってきませんし,特定の日本の機関と契約して行う活動にも該当してきません。
選手についても短期滞在の在留資格で入国しオリンピック大会に参加することが通常ですが,スポーツトレーナーやチームスタッフなども,短期滞在の在留資格で参加することになります。
オリンピック大会への参加に限らず,外国人スポーツトレーナー,指導者を呼び寄せたいという場合には,いくつかの在留資格が考えられます。
オリンピック大会への参加のように,数週間だけ日本に滞在するという場合を除けば,在留資格の取得には一定の条件が必要となります。
外国人スポーツトレーナー,外国人指導者を呼び寄せるという場合には,呼び寄せ方や契約内容等をよく確認しなければなりません。