【事例】
留学の資格で日本に在留しているAさんは,1年ほど前から,とあるキャバクラ店で勤務していました。
ところがある時,このキャバクラ店に対して警察署の摘発があり,Aさんの不法就労の事実が発覚し,その場で警察官から逮捕されてしまいました。
このような事件の場合に
①Aさんは,どのような刑事処分を受けるのか,
②退去強制を受けるのか,
以上の点について解説していきたいと思います。
このページの目次
(1)不法就労に対する刑事罰
Aさんは,「留学」の在留資格で日本に在留しているにもかかわらず,在留資格で許されている活動ではないキャバクラでの勤務を行っていることから,入管法70条1項4号か,入管法73条のいずれかに該当する可能性があります。
入管法70条1項4号は,「在留資格外で収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動を専ら行っていると明らかに認められる場合」に成立するものです。
一方,入管法73条は,在留資格外の就労を行っているものの,不法就労活動を「専ら行っていると明らかに認められる」とまでは言えない場合を指します。
刑事罰の重さですが,入管法70条1項4号の罪が成立すると,「3年以下の懲役若しくは禁錮若しくは300万円以下の罰金」又はその併科が予定されています。
73条の罪が成立すると,「1年以下の懲役若しくは禁錮若しくは200万円以下の罰金」又はその併科が予定されています。
不法就労罪の罪の重さは,①勤務形態,②勤務していた期間などを考慮して処分が決められます。
①については,フルタイムで働いているなど,元々の在留資格の活動から大きく外れていたり,就労活動を専ら行っている様子が見られる場合に重く見られます。
②については,就労していた期間が長いほど,不法就労の悪質性が強いと見られ,重く見られます。
今回のAさんについて考えると,Aさんの勤務形態にもよりますが,1年間不法就労を続けているという関係から,執行猶予付きの有罪判決となることが予想されます。
(2)出入国管理上はでどのような処分がされるのか
退去強制になるかどうかについては,入管法24条に規定があります。
入管法24条4号イによれば,「第19条1項の規定に違反して収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動を専らおこなっていると明らかに認められる者」について退去強制処分を受けることが規定されています。また,入管法24条4号へによれば,「第73条の罪(不法就労罪)により禁錮以上の刑に処せられた者」については退去強制処分を受けることが規定されています。
そのため,不法就労を行ってしまったAさんの場合,①起訴されて禁固刑,懲役刑(執行猶予が付いた場合も含む)を受けた場合,②①の場合でなかったとしても資格外活動を「専ら」行っていたと見られた場合には退去強制処分を受ける可能性が高まるでしょう。
(3)弁護士として出来ること
このような刑罰や,退去強制処分が予想されることから,弁護士としては,①有利な情状があることから,不起訴処分を求めること,②退去強制処分を避けるよう主張することが考えられます。
①については,Aさんの就労期間が短かったり,Aさんの勤務時間が短いなどの事情があり,起訴するのが相当ではないと主張して不起訴を求めることが考えられます。
②の場合,退去強制処分の理由そのものを争う他,不法就労をしていたことを認めつつ在留特別許可を求めるという方針も考えられます。
令和6年(2024年)からは出入国管理法が改正されて,在留特別許可に関する手続きも大きく変化しました。
不法就労に関する入管法の規定は,非常に複雑になっています。
警察に検挙されてしまったという場合であっても,どのような方針・手続を目指すのか,弁護士とよく相談して進めていくのが重要です。
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