日本人の配偶者資格で日本いるAさんは、日本で生まれ、日本の高校まで卒業し、現在大学に通う22歳です。
そんなAさんは、大学生のころから友人と大麻を使用しており、なかなかやめることができませんでした。
ある日車に乗っていたAさんは、不審な動きをしているということで職務質問を受け、持っていたカバンの中から大麻草1gが発見され、鑑定の後逮捕されてしまいました。
以上を前提として
①Aさんが受ける刑事罰はどのようなものになるか
②①の刑事罰によってAさんは退去強制となることがあるか
③在留特別許可は得られるのか
以上の点について解説していきたいと思います。
このページの目次
大麻所持の刑事罰
Aさんは大麻を所持していました。日本では大麻所持は違法とされていますので、Aさんの行為は大麻取締法違反の大麻所持となります。
大麻所持の罰則は、大麻取締法24条の2に記載があり、「大麻を、みだりに、所持し、譲り受け、又は譲り渡した者は、五年以下の懲役に処する。」
とされています。
Aさん自身大麻を所持していた認識はありますので、犯罪が成立することに争いはありませんが、そのような場合、Aさんにどのような処分となるのかが問題となります。
大麻所持の場合、初犯であっても裁判となる可能性が高い類型の犯罪です。ただ、いきなり刑務所に行くのではなく、執行猶予付き判決となることが予想されます。
⑵はこれを前提として検討していくことにします。
退去強制となるか
それでは、Aさんの刑事処分により退去強制となるかについて検討します。
退去強制事由については入管法24条に定めがあります。Aさんの永住者ですので、在留資格としては別表第2の資格となります。
同条4項チには「昭和二十六年十一月一日以後に麻薬及び向精神薬取締法、大麻取締法、あへん法、覚醒剤取締法、国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律(平成三年法律第九十四号)又は刑法第二編第十四章の規定に違反して有罪の判決を受けた者」という定めがあります。
要するに、薬物に関連する法律で有罪の判決を受けたものについては退去強制事由とするというものです。
まず、有罪の判決ですので、執行猶予付きであるかどうかは問われません。実刑判決でなくても退去強制事由となります。
また、今回は関係ありませんが、たとえ罰金刑であっても有罪の判決に変わりはありませんので退去強制事由となることと、別表第二の資格であっても退去強制事由となることにも注意が必要です。
ですので、このままではAさんは退去強制となりますので、在留特別許可を狙う必要性があります。
在留特別許可は得られるのか
Aさんの場合、生まれてから22年間日本にいて、日本との結びつきは相当強いものです。おそらく、日本語が十分話せるでしょうし、反対に国籍国の言葉の方がおぼつかない状況になるだろうと思われます。
確かに薬物に関する法令違反というのは軽いものではありません。犯罪の中でも、初犯で執行猶予判決を受けるというのは、比較的重い罪に入ります。
しかし、上記のような日本との関係性や、本国に送還しても生活が成り立たないというような状況からすれば、在留特別許可を得られる可能性は比較的ある事案であるということができます。
ですので、AさんやAさんの家族としては、在留特別許可を得るため、入管用の資料を提出するなど、早期から手続きに備えて準備する必要があります。
退去強制(強制送還)の手続は段階的に進んで行くもので,令和6年6月10日以降は新しい法律に則った手続きによって在留特別許可に関する手続きが進むことになります。
手続きについてはこちらもご参考下さい。
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