不法就労助長罪には,雇っていた法人や事業主に対する責任と,雇い入れをした個人に対する責任の両方が定められています。
このような規定を「両罰規定」と言って,「法人」や「会社」に対しても刑罰を科すという規定です(入管法76条の2)。
もちろん,会社に対して「懲役刑」を科すことはできません(会社は目に見えないものですし,実際の肉体もありません)。法人に対する両罰規定としては,罰金が科されることになります。
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会社が罰金を受けると従業員にはどんな影響がある?
両罰規定によって,会社に対して罰金が科されたという場合でも,会社にいる個人の在留資格に対して直接の影響がありません。
入管法上,在留資格の取消や退去強制(強制送還)の手続きの対象となるのは,外国人個人が法律に違反した場合ですので,所属していた会社が罰金を受けたからと言って,個別の外国人の在留に影響するということはありません。
ただし,例外的に,その会社が行政からの許可や認可を得て就業をしていたという場合で,会社が罰金を受けたことにより,許可や認可が取り消されて前までの業務ができなくなったという場合には,注意が必要です。
同じ会社に勤めていたとしても,仕事の内容が在留資格に適合しているものでないと,資格外活動になってしまう可能性があるからです。
社長ビザを持っていた場合にはどうなる?
これに対して,いわゆる社長ビザ(経営・管理の在留資格)を持っていたという場合や,別表第2の在留資格で会社を経営していたという場合には,不法就労助長罪の両罰規定によって罰金が科された場合には,在留資格に直接の影響が出ることがあります。
在留に影響するかどうかの判断を分けるのは,一言で言うと,不法就労を知っていたか/知らなかったことについて過失があるか,という点です。
外国人に不法就労をさせた場合には,「入管法24条第3号の4」に該当し,退去強制(強制送還)の対象となることがあります。
ですので,経営・管理の在留資格を持っている外国人の方が,自分の会社で外国人に不法就労をさせたという場合には,強制送還の対象となってしまいます。
ここでも注意すべきなのが,不法就労助長の責任が,「会社,法人に対する」ものなのか,「外国人個人」に対するものなのか(=つまり,個人も不法就労を知っていたかどうか)によって違いが出てくるのです。
いかに社長ビザであって会社に不法就労助長罪の責任があるとしても,外国人個人に対して「不法就労助長」の責任がなければ,強制送還の対象とはならないのです。
強制送還にならないとしても
強制送還にはならないとしても,在留資格の更新や資格の変更の際に,不法就労助長に関わってしまった事が「素行の善良性」の点でマイナスポイントになってしまう可能性があります。
もしも会社で不法就労助長が疑われるようなことがあれば,特に会社を経営する立場にある外国人の方は,次のような対策を取ることも考えましょう。
・不法就労をしてしまわないために,雇い入れ時に在留カードを確認,コピーを保管しておくことを社内で徹底する。
・給与計算や勤怠管理の部署内で,不法就労事案が起きないように教育,指導をする。