刑事事件で有罪の判決を受けて,日本から強制送還されてしまうという方が,一定数います。
また,相談に来られる方の中には,「国選弁護士からは大丈夫だと言われていた」のに,強制送還の手続きに乗せられてしまっているという方もいます。
刑事事件で,特に国選弁護士となると,人によっては,入管法にも刑事事件にも,両方ともあまり詳しくない弁護士が担当してしまうことがあります。
外国人の方の刑事事件については,入管法も刑事事件も精通した弁護士が担当するのが望ましいでしょう。
今回は,「この罪名で,この判決を受けると強制送還になります」というまとめをしていきます。
自分,もしくは知人が強制送還になるのかどうか分からない,という方は是非確認して頂いて,今後の手続きについては弁護士にご相談ください。
家族関係のビザの外国人の方
強制送還の対象になる犯罪については,家族関係のビザの外国人の方(別表2)と,それ以外のビザの外国人の方(別表1)とで,大きく変わってきます。
家族関係のビザの外国人の方とは,次の在留資格の方です。
・日本人の配偶者等
・永住者
・永住者の配偶者等
・定住者
この4つのビザの方は,家族関係のビザの外国人の方と言えます。
「家族滞在」の在留資格の方は,「それ以外のビザの外国人の方」の欄を確認してください。
家族関係のビザの外国人の方が,刑事裁判で有罪判決を受けて強制送還になるのは,次のような場合です。
旅券法違反 |
(例えば,自分名義のパスポートを他人に貸した,他人名義のパスポートを他人から借りた等) |
全て,有罪の判決が確定することで強制送還の理由になる
|
入館法違反 |
資格外活動や不法入国,不法残留 |
|
薬物の取締法違反 |
麻薬及び向精神薬取締法,覚醒剤取締法,大麻取締法,麻薬特例法 |
|
それ以外の刑事裁判 |
1年を超える懲役刑,禁錮刑の刑を受けた場合 執行猶予の場合を除く。 |
※実刑判決の場合のみ ※「懲役1年」は強制送還にならない。 「懲役1年2月」は強制送還になる。 |
それ以外のビザの外国人の方
上記の「家族関係のビザ」以外のビザ,例えば就労や留学などで日本に在留している方の場合には,上の表に加えて,次のような場合に強制送還になります。
右に書かれた刑法犯で,懲役刑または禁錮刑を言い渡された場合 |
住居侵入罪 通貨偽造罪,変造罪 私文書偽造罪,有印公文書偽造・変造・行使罪,電磁的公正証書原本不実記録・供用罪 有価証券偽造罪・行使罪 公印偽造・不正使用罪,私印偽造・不正使用罪 賭博罪,常習賭博罪,賭博図利開帳罪 殺人罪,自殺関与罪,同意殺人罪 傷害罪,傷害致死罪,暴行罪,凶器準備集合罪 逮捕罪,監禁罪,逮捕致傷罪,監禁致傷罪 未成年者略取誘拐罪,営利目的等略取誘拐罪 窃盗罪,強盗罪,事後強盗罪,強盗致死傷罪,強盗強制性交等罪 詐欺罪,背任罪,準詐欺罪,恐喝罪 盗品譲受罪 |
全て有罪判決が確定することで強制送還の理由になる。 どれも,執行猶予だった場合を含む。 |
暴力行為等処罰に関する法律違反 1条,1条の2,1条の3の違反のみ |
例えば,集団暴行や,凶器を示して暴行をしたり脅迫をしたりした場合 | |
盗犯などの防止及び処分に関する法律違反 | 常習累犯窃盗など |
家族関係のビザ以外の方は,刑法犯として有罪判決を受けた時には,たとえ執行猶予付きの判決であっても強制送還の対象となることがある点について注意が必要です。
特に「暴行罪」と「窃盗罪」は,比較的軽い刑になることが多い犯罪ですが,たとえ執行猶予が付いたとしても強制送還の対象となることがある点に注意が必要です。
たまに勘違いしているのか,「実刑判決にならなければ大丈夫」という国選の弁護士の方もいますが,在留資格によっては実刑にならなくても強制送還にはなることがあります。
言い渡される刑の内容によって,強制送還になるのからならないのかが変わってきます。
強制送還されないためにはどうしたらよいか?という相談はよくいただくのですが,刑事裁判の段階から,早めに対応しておくに越したことはありません。
「国選にはこう言われたので…」と相談に来られる方もいるのですが,残念ながら,その段階ではすでに手遅れになってしまっている方もいます。
早めに相談に来ていただければ色々できたのに,と思うことは少なくありません。
「日本に残れるようにやれることはやっていていきたい」というかたは,是非刑事事件にも入管手続きにも詳しい弁護士にご相談ください。