離婚後に定住者への在留資格の変更が認められた裁判例

日本人と離婚した外国人の方が,「日本人の配偶者等」から「定住者」への在留資格の変更を求めて裁判を起こした結果,裁判所が,在留資格の変更を認める方向の判決を出した事案について紹介します。

「在留資格の変更を認める方向」という,少し遠回しな言い方になっているのは,裁判所が直接「在留資格の変更と認めた」というわけではないからです。

この事案では,外国人の方が一度,在留資格の変更の申請(「日本人の配偶者等」→「定住者」)をしたところ,当時の入管が不許可の処分をしました。外国人の方は,この不許可処分の取り消しを求めて裁判を起こしたのです。

裁判例は,平成14年4月26日東京地方裁判所で判決が言い渡された事件です。それでは詳しく解説します。

このページの目次

事案の概要

外国人のXさんは来日後日本人と結婚し,2人の子供をもうけました。子供は2人とも日本国籍を取得しています。

子供が生まれた後,Xさんは「日本人の配偶者等」へ在留資格を変更していましたが,Xさんは日本人の方と調停で離婚しました。

離婚調停の際には,子供の親権者についてはXさんと指定されましたが,実際の子供の養育については,経済的な事情から,Xさんが当面の間は元配偶者に「委ねる」という形で調停が成立することになり,Xさんは定期的に子供と面会を続けることにしました。

離婚後Xさんは日本で仕事を見つけ,安定した収入を得ながら,子供との面会を続け,子供のための貯金もするようになりました。

そうした中で,Xさんは,「子供の養育をするため」に在留資格を「定住者」へ変更する申請を行いましたが,入管はこれを認めませんでした。

裁判所の判断

日本人との離婚後も「定住者」の在留資格が認められるためには,通達の条件を満たさなければならず,

・日本人との間に生まれた子供を扶養していて,親権者であり,かつ,その子供を相当な期間を監護・養育していること

という条件を満たさなければなりません。

離婚後の「定住者」への在留資格の変更について

Xさんの事例では,Xさんは親権者ではありましたが,「実際に子供を監護・養育」している状況ではありませんでした。しかし,Xさんは,実際に子供の養育をゆだねられていた元配偶者以上に子供のことを思っていました。離婚調停の際にも,本当であれば子供たちと一緒に暮らしていきたいけれども経済的に子供二人の面倒を見ていくことは難しい,子供の幸せを最優先に考えると日本人の元夫の下で生活する方がよい,と考えて,実際の監護養育を元夫に「委ねた」のでした。

そのため,本来の「日本人実子扶養定住」の条件は満たしていなくても,「同視できるような状況」でも定住者として認められるかどうかが裁判でのポイントになりました。

裁判所は,通達の文言通りに判断すると,Xさんは「日本人実子扶養定住」には当たらないと判断しましたが,「定住者」の在留資格は,「特別な理由」がある場合に在留資格を認めているものであるから,

・日本人との間に生まれた子供を扶養していて,親権者であり,かつ,その子供を相当な期間を監護・養育していること

という条件を満たしていなくても,それと同視すべき特別な事情がある場合には,定住者としての在留資格が認められるべきだと判断しました。

そのうえで,裁判所は,Xさんと子供との面会の状況や,子供たちがXさんを「親」として必要にしている様子を詳細に検討して,「実際に子供を監護・養育しているのと同視できるような状況」にあると判断し,在留資格の変更を認めたなかった入管の処分は違法であると判断しました。

コメント

この裁判例は,「日本人実子扶養定住」の条件について,形式的には満たしていない場合であっても,同視すべき特別な事情がある場合には定住者として認める判断をしたものです。

これによって,定住者として認められるハードルが下がったわけではありませんが,日本人の子供が安定した生活を営み,子供が健全に育つという目的に照らして,例外的に在留資格を認めたというものです。

ポイントとなったのは,

・外国人親と子供との交流の状況,親子関係が真摯な愛情に基づいているかどうか

・子供の年齢(日本で暮らしていた期間,外国で暮らしていた期間)

・離婚した原因

・実際に子供を扶養していた親の扶養の状況

と言った事情でした。

離婚後の「定住者」への在留資格の変更についてもご相談を受け付けています。

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