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1 上陸審査の流れ
外国人の方が日本の港や空港に到着すると,入国審査官による「上陸審査」が行われます。上陸審査とは,外国人の方に対して上陸許可をするかどうかを審査するための手続きです。
☆「入国」と「上陸」の違い
「上陸」と似たような言葉として「入国」という言葉を耳にしたことがある方もいるかもしれません。法律上,「入国」という言葉は,日本の領空,もしくは領海内に入ることを言います。一方,「上陸」とは,上陸許可を受けてから日本の領土に足を踏み入れることを言います。
ですので,飛行機に乗って日本上空まで来た時点で「入国」はしていますが,「上陸」はしていません。飛行機から降りて,入国審査を通り抜けたところで「上陸」となります。
上陸許可を受けるためには,次のような条件を満たしている必要があります。
- 有効な旅券(パスポート)と査証(ビザ)があること
- 上陸許可申請が虚偽ではないこと,在留資格を偽っていないこと
- 申請する在留期間が法律の上限を超えないこと
- 上陸不許可になる事情がないこと
上陸審査で上陸のための条件を満たさないと判断された場合には,特別審理官による口頭審理が行われます。この口頭審理は,上陸審査の後,空港や港の中で直ちに行われるものです。特別審理官が再度上陸許可の条件を満たしているかどうかを判断します。上陸の条件を満たすと判断されれば,日本に上陸することができます。
特別審理官の口頭審理でも上陸の条件を満たさないとされた場合,これに対して異議がないとするか異議があるとして3日以内に法務大臣に対して異議を申立てるかを選択することになります。
法務大臣に対して異議を申立てた場合には,更に法務大臣による上陸の条件を満たすのかどうかに関する裁決(判断)を行います。裁決の結果,異議に理由があると認められれば上陸が許可され,異議に理由がないとされれば上陸が許可されないこととなります。
特別審理官による口頭審理で上陸不許可となり不服がない場合や,法務大臣の裁決の結果が認められなかった場合,退去命令が発せられることになります。
これは,出発地へ帰るように命じるもので,基本的には乗ってきた飛行機や船舶に乗って帰るのが基本です。口頭審理や裁決の結果,すぐに帰国する便や船がない場合には,空港や港の中の出国待機施設や近くのホテルなどで待機することになります。
2 上陸不許可となる事情について
上陸の条件の内,④上陸不許可となる事情があるとは,入管法上の上陸拒否事由に該当しないことを言います。
拒否の理由はいくつかあり,その理由によって上陸不許可となる期間が決まっています。
代表的な上陸拒否事由と上陸拒否期間は以下の表のとおりです。
上陸拒否期間 |
上陸拒否事由(上陸拒否期間の数え方) |
1年 |
規制薬物,銃器や火薬類の不法所持として上陸を拒否された人(上陸不許可となった日から) |
出国命令で出国した人(出国した日から) |
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5年
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退去強制された人(初めて退去した日から) |
入管法別表1の在留資格を持つ人で,一定の犯罪によって禁固・懲役刑(執行猶予も含む)を受けて出国した人(刑が確定してから) |
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10年 |
退去強制(強制送還)された人(2回目以降・退去した日から) |
無期限 |
日本又は外国における犯罪をして1年以上の懲役刑又は禁固刑に処せられたことがある人 |
日本又は外国における薬物の取り締まりに関する法律の違反によって刑に処せられたことがある人(罰金,執行猶予判決を含む) |
3 上陸不許可となる場合でも日本に入国できるのか
上陸拒否事由に該当する場合であっても,日本に上陸する必要がある方もいるかもしれません。そのような場合であっても,「特別に上陸を許可すべき事情」が認められれば上陸特別許可がなされます。
上陸特別許可は,本来,日本に入国後の入国審査,特別審理官の口頭審理,法務大臣の裁決を経て,上陸許可がなされなかった場合に,法務大臣の裁量によってなされるものです。
しかし,上陸特別許可は「特別に上陸を許可すべき事情」が求められるため,非常に認められにくくなっています。上陸特別許可を求めるためだけに,ダメもとで日本まで来るのは,大変な労力と費用も掛かります。
そのため,上陸拒否事由があっても日本に上陸したい方は,入国前に在留資格認定証明書の交付を申請し,その際に特別上陸許可も求める趣旨で申請を行います。そして在留資格認定証明書が交付されると,上陸拒否事由があっても上陸を拒否しないことの通知がなされ,日本への上陸許可がなされます。
日本に入国したものの,上陸不許可となった場合には,どんな方針でどのような手段を取るのか,早期に対応しなければなりません。また,上陸拒否事由がある方は日本に入国する前の事前準備が重要です。
ご家族やご友人,雇入れた外国人の方が日本に入国する際の上陸審査に不安がある場合や,上陸拒否事由が明らかな場合は,弁護士などの専門家に相談してから対応しましょう。