ビザの有効期限がいつまでか,きちんと管理されていますか?
雇用主の方は,従業員の在留期間がいつまでか,把握されていますか?
外国人の方が日本で生活する上で最も大事なビザ(在留資格)には,そのほとんどに,一定の期限が設けられています。
例外として「永住許可」の場合には,ビザに期限はありませんので,7年おきに「在留カード」の更新だけすれば大丈夫です。
ですが,それ以外のビザの方は,期限ごとに「在留期間の更新申請」をしなければなりません。この手続きをもしも忘れてしまうと,どうなるのでしょうか。
このページの目次
ビザが切れたら,とっても大変
まず,日本でビザが切れてしまうとどんなことになってしまうのか解説します。
一言でまとめてしまうと「とっても大変」なことが起きます。
まず,在留期間を過ぎて1日でも日本にいると不法残留(オーバーステイ)になってしまいます。
また,オーバーステイの状態で日本で働いて給料をもらうと,不法就労になっていまします。
不法就労となる外国人の方を雇っている人も,国籍に関係なく不法就労助長として処罰の対象となります。
これら3つは入管法違反として刑事処罰がなされる可能性があるだけでなく,強制送還の対象にもなっています。
強制送還となると,基本的に5年間再入国することができなくなってしまうため,日本での生活を続けたいと思う方は,絶対にビザの更新は忘れてはいけないのです。
更新の手続きの特例について
ビザの有効期間までにビザの更新ができなかった場合には,救済措置が一つだけあります。
それは,「期限内に更新の申請をしていたけれども,申請に対する結果が出る前にビザが切れてしまった場合」です。
この場合,元々のビザによる在留期間から2か月の間,又は更新の申請に対する結果が出るまでの間については,不法残留(オーバーステイ)としては扱わないというものです。
通常,ビザの更新の申請には1か月~2か月程度かかることがありますし,期限の3か月前には更新の申請をしておくべきです。
ビザの期限ぎりぎりになって更新を忘れていたことに気づいた場合には「もう間に合わない」と思ってしまうかもしれませんが,ギリギリ滑り込みであってもよいので更新の申請を出しておくということが何よりも重要です。
もしも期限が切れた後に気づいたら…
万が一更新の手続きを完全に忘れてしまい,期限が切れた後になって「更新をしていなかった」ということに気づいたのであっても,日本での在留を希望するのであれば最寄りの出入国管理局へ連絡して出頭する必要があります。
更新の申請ができなかったことについて,何らかのやむを得ない事情があったと認められれば,更新の申請を受理してもらえるという可能性があるからです。
気を付けなければならないのは,出頭の際に
「更新の手続きを忘れてしまったけれども,日本での生活を続けたいと思っています。更新を忘れてしまった(もしくは,手続きができなかった)のは,このような理由があります。」
ということをきちんと説明しなければなりません。
というのも,在留期限が過ぎた状態で入管の窓口へ行くと,入管の職員は,「在留期限が過ぎているので出国するということでよいですね?」と出国命令制度のための出頭と捉えることがあるのです。
出頭の際には,
①日本に残りたいと思っている事
②手続きができなかったことの理由
を事前に書面にまとめた状態にしておくとよいでしょう。
入管に出頭したときに「そのまま逮捕されてしまうのではないか」「うまく伝えられるか不安がある」という方は,事前に弁護士に相談しましょう。
雇い主,事業主としての注意点
外国人を雇用される方としては,個別の外国人の在留期間がいつまでなのかということはきちんと把握し早めに更新の手続きをしておくように促すということも大切です。
外国人の方が,うっかり手続きを忘れてしまわないためという点もありますが,「雇い主側が不法就労助長罪に問われる」というリスクを回避するためにも,更新の手続きは先回りしてアナウンスしておく必要があります。
また,仮に外国人の方が更新の手続きをしないまま,在留期間を過ぎて出社,出勤してくるようなことがあれば「ビザの更新が確認できない人を働かせることはできません」と明確に断らなければなりません。
この場合の出勤の停止は,不法就労/不法就労助長罪にならないために必要な措置ですから,使用者都合による休業などではなく,もちろん一部の賃金の支払い義務も生じません。