このページの目次
1 定住者の在留資格とは
在留資格の「定住者」とは,法務大臣が特別な理由を考慮して一定の在留期間を指定して滞在を認められる人のことを言います。
ここでいう特別な理由とは法律上明確な規定はなく,個々の事案によって在留資格を付与すべきどうかの判断が行われます。ただ,全くのブラックボックスというわけではなく,法務省がいくつか基準を定めて公表しています。
2 定住者の告示
法務省が発表している定住者の告示によると,次のような人を定住者として認めています。
- ミャンマー難民のうち一定の範囲の人
- 日系二世,三世
- 日本人の子供として生まれ,「日本人の配偶者等」の在留資格で在留している外国人の配偶者
- 「定住者」の在留資格を持つ外国人の配偶者
- 日本人又は一定の外国人の扶養を受ける未成年で未婚の子
- 日本人又は一定の外国人の6歳未満の養子
- いわゆる中国残留邦人とその一定の範囲の親族
これらの人は,日本に在留する特別な理由があると認められていることから,定住者の在留資格が認められています。
3 日本人の子供を扶養する外国人
法務省の告示による「定住者」と認められないとしても,日本人の子供を扶養する外国人親も定住者として認められることがあります。これは,法務省の通達によって認められています。子供の生活の安定のためには,親である外国人も日本での在留を認めて,生活を安定させなければならないからです。
この場合,外国人の方が実際に子供を扶養していること,今後も子供を扶養することが期待できること,具体的には生計を営む貯蓄があるとか,生計の手段があるといった事情が必要になります。
子供の生活のために定住者としての地位が認められるので,実際に子供を扶養しなくなったり,子供が独立してしまったりした場合には在留資格が取り消されたり,更新が認められないことがあります。
4 公示,通達がない場合
公示や通達に該当しない場合であっても,日本に滞在していた期間や家族構成,日本に滞在する目的等によっては,法務大臣の許可を得て定住者としての在留資格が認められる場合があります。
例えば,公示や通達に該当しないとしても,これに類似するような状況であったり,公示や通達で定住者として認められている外国人と同じ程度の在留の必要性があったりという場合です。具体的には日本人や永住者と結婚して「日本人の配偶者等」として在留していたが離婚して在留資格を失うことになる場合,「日本人の配偶者等」として日本に在留している外国人の本国にいる親や連れ子を日本に呼び寄せる場合などが考えられます。
他方,就労の在留資格で日本に在留していたものの,退職や失職などにより在留資格の基礎を失った方は定住者へ変更することは難しいと言えます。この場合には「短期滞在」の在留資格への変更も検討するとよいでしょう。
5 定住者の在留資格でできること
定住者の在留資格は,日本での活動内容に制限のない在留資格ですので,日本人と同様に働くことが出来ます。勤務地や勤務内容,勤務時間などについて制限なく働くことが出来ます。
ただ,永住者とは違い,在留資格に期限がありますので,忘れず更新の手続きをしなければなりません。更新の際には,在留資格が認められた当時の理由が継続しているかどうかが審査されます。日本に在留する特別な理由が認められないとなると,更新が認められないことになります。
定住者の在留資格は法律に明文があるわけではないため,個別の事情によって,申請に対する判断が分かれることが多い事案です。また,他の在留資格が認められない場合の最終手段の一つでもあります。「定住者」としての在留資格を検討されている方は早めに専門家に相談の上,入管と交渉していく必要があります。