定住者が大麻事件を起こした場合,在留期間の更新ができるか

Aさんは、20年前、B国から日本に来ました。
Aさんの祖父が日本国籍を持っていたため、Aさんは日本で仕事をしようと考えました。
Aさんは、日系三世に当たるため、「定住者」の在留資格で入国し、仕事をしていました。

ある日、Aさんが路上を歩いていたところ、職務質問を受け、持っていた大麻草が発見されてしまいました。

このとき
①Aさんが受ける刑事罰はどのようなものになるか
②①の刑事罰によりAさんは在留期間の更新ができるか
以上の点について解説していきたいと思います。

⑴大麻所持の刑事罰

大麻を所持していた場合、従前は大麻取締法違反で処罰されていました。しかし、法改正により麻薬及び向精神薬取締法違反で処罰されることになりました。
なお、注意を要する点として、従来大麻使用が処罰されていなかったところ、改正法では大麻使用(施用)も処罰の対象となりました。

大麻に関する法改正についての記事はこちら

12月12日より大麻使用の規制開始 麻薬取締法で規制

大麻所持の法定刑は、従前は5年以下の懲役でしたが、改正により7年以下の懲役となりました。若干法定刑が重くなったこととの関係で、今後の裁判では今までよりも量刑が重くなる可能性があります。
ただ、初犯の所持の場合は執行猶予付き判決ということで変わりがないのではないかと思います。

⑵在留期間の更新

在留期間の更新は「更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるとき」(出入国管理及び難民認定法21条2項)に認められますが、この認定にあたっては、出入国在留管理庁によるガイドラインがあります。

 このガイドラインによると、在留期間の更新が許可されるのは

1 行おうとする活動が申請に係る入管法別表に掲げる在留資格に該当すること
2 法務省令で定める上陸許可基準等に適合していること(別表第1の2の表又は第4の表に掲げる在留資格の下欄に掲げる活動を行おうとする者)
3 現に有する在留資格に応じた活動を行っていたこと
4 素行が不良でないこと
5 独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること
6 雇用。動労条件が適正であること
7 納税義務を履行していること
8 入管法に定める届出等の義務を履行していること

とされています。

このうち4の部分には「素行については,善良であることが前提となり,良好でない場合には消極的な要素として評価され,具体的には,退去強制事由に準ずるような刑事処分を受けた行為,不法就労をあっせんするなど出入国在留管理行政上看過することのできない行為を行った場合は,素行が不良であると判断されることとなります。」との記載がなされています。

まず、「定住者」の在留資格は、入管法上別表第2の表に記載がある在留資格です。
そのため、法務省令に定める上陸許可基準等の問題は生じません。

今回の場合、ガイドラインに記載されている「素行が不良でないこと」が問題となります。そして、「退去強制事由に準ずるような刑事処分を受けた」場合には素行不良であると判断されることになるため、退去強制事由に準ずるような刑事処分であるかどうかを検討していくことになります。
それでは刑罰法令違反が退去強制事由となるかどうかを考えていきます。別表第2の在留資格の場合、入管法等在留関係の法律以外の刑罰法令が問題となる退去強制事由には、入管法24条4号チがあります。

入管法24条4号チは、「昭和二十六年十一月一日以後に麻薬及び向精神薬取締法、大麻草の栽培の規制に関する法律(昭和二十三年法律第百二十四号)、あへん法、覚醒剤取締法、国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律(平成三年法律第九十四号)又は刑法第二編第十四章の規定に違反して有罪の判決を受けた者」とするものです。この4号チで問題とされるのは、いわゆる薬物事件で、罰金、執行猶予、懲役を問わず有罪となった場合には退去強制事由に該当します。大麻所持の場合執行猶予付き判決の可能性が高いと考えられますので、このままであれば退去強制事由に該当します。

そのため、大麻所持罪で素行善良要件を満たすかどうかについては、素行善良要件を満たさないと判断される可能性が高いと考えられます。
だからといってこの事件のことを秘して在留期間更新申請を行うことはできませんので、入管当局に正直に説明し、再犯をしないこと等の誓約を行い在留許可の更新を求める方がよいと思われます。
先述の通り、大麻所持罪で刑事罰を受けてしまうと、退去強制となる可能性があり、日本国内に留まれない可能性があることを指摘しました。
このような場合、何とか日本国内に留まりたいというようなときは、被害者との示談が重要です。

検察庁は、全ての刑事事件について起訴をし、刑事処分を求めるのではなく、一定の事件を起訴猶予(不起訴)としています。
最終的な処分を決定する際、再犯の可能性や所持していた量は大きな考慮要素となります。
出来る限り刑事処分を軽減するためにも、検察官との交渉は不可欠です。

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