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離婚後に定住者への在留資格の変更が認められた裁判例
日本人と離婚した外国人の方が,「日本人の配偶者等」から「定住者」への在留資格の変更を求めて裁判を起こした結果,裁判所が,在留資格の変更を認める方向の判決を出した事案について紹介します。
「在留資格の変更を認める方向」という,少し遠回しな言い方になっているのは,裁判所が直接「在留資格の変更と認めた」というわけではないからです。
この事案では,外国人の方が一度,在留資格の変更の申請(「日本人の配偶者等」→「定住者」)をしたところ,当時の入管が不許可の処分をしました。外国人の方は,この不許可処分の取り消しを求めて裁判を起こしたのです。
裁判例は,平成14年4月26日東京地方裁判所で判決が言い渡された事件です。それでは詳しく解説します。
離婚後に「定住者」へ在留資格を変更できるか
「日本人の配偶者等」の在留資格の間に,日本人と離婚した外国人の方が日本での在留を希望する場合には,在留資格の変更が必要です。
参考 日本人と離婚した場合
離婚後に取得できる在留資格としては,就労系の在留資格の他に,「定住者」の在留資格があります。離婚後の「定住者」としては,大きく分けると「離婚定住」と「日本人実子扶養定住」があります。また,実際に離婚までは至っていなくても,日本人との間の結婚がDVによって破壊されてしまった場合に,「婚姻破綻定住」というものもあります。
いずれの「定住者」の在留資格についても,法律上定めがあるものではなく,「法務大臣が特別な理由を考慮し一定の在留期間を指定して居住を認める」場合とされています。
この3つの「定住者」について解説します。
①「離婚定住」
日本人と結婚して「日本人の配偶者等」の在留資格で日本で生活していた方が,離婚後も日本での在留を希望する場合,一定の条件の下で引き続き在留資格が認められることがあります。
これを「離婚定住」と言ったりします。
離婚定住が認められるのは,次のような場合です。
・日本で3年以上正常な婚姻,家族生活が継続していたこと
・生計を営むために必要な資産や職があること
・社会生活に困難がない程度の日本語能力があること
・日本の公的義務を果たしていること
これらの事情に加えて,離婚するに至った原因や,今後外国人の方が引き続き日本に定着して生活できる可能性を考慮して,在留資格を認めるかどうかについて判断されます。
もしも,日本人と死別した場合には,「1年以上」の婚姻が継続していれば離婚定住の在留資格が認められる可能性があります。死別の場合には不慮の事態であることも多いため,残された外国人家族への配慮がなされていると考えられます。
②「日本人実子扶養定住」
日本人の実子を扶養する親に対して認められている「定住者」の類型です。これは,日本人の子供が両親と安定した生活を送れるようにするために,外国人親の在留を認めるとしたものです。
日本人実子扶養定住が認められるのは,次のような場合です。
・生計を営むために必要な資産や職があること
・日本人との間に生まれた子供を扶養していて,親権者であり,かつ,その子供を相当な期間を監護・養育していること
離婚後に日本人実子扶養定住に在留資格を変更しようとする場合には,子供の親権を持っていて,かつ,今後も子供を養育していくという状況でなければなりません。
仮に子供が18歳以上となって働きだしたり,親元を離れて進学したりしても,子供を扶養しているという状況が認められる場合があります。養育しているかどうかについては,同居しているかどうかだけで判断されるものではありません。
③「婚姻破綻定住」
婚姻破綻定住は,離婚届を出していないけれども結婚生活が失われて今後も修復される見込みがないという場合に認められる「定住者」としての在留資格です。
「婚姻破綻定住」として認められるのは,次のような場合です。
・日本で3年以上正常な婚姻,家族生活が継続していたこと
もしくは,
・正常な婚姻を開始したが一方のDVの被害に遭ったこと
・生計を営むために必要な資産や職があること
・日本の公的義務を果たしていること
これらの場合を満たしても,現に婚姻が破綻していると認められない場合には,日本人の配偶者等としての在留資格が更新されないかどうかについて判断されます。
婚姻が破綻しているのかどうかについては,申請人である外国人の方だけではなく,配偶者である日本人への聞き取りなどによって調査がなされます。