一般的に「就労ビザ」とも呼ばれる在留資格には,
投資・経営 法律・会計業務 医療 研究 教育 技術 人文知識・国際業務 企業内転勤 介護 興行 技能 特定技能 技能実習
の種類があり,それぞれに対応した職業活動を行うことが認められています。
これらのうち,
技能 技能実習 特定技能を解説します。
このページの目次
1 技能
技能の在留資格とは,契約に基づいて産業上の特別な分野の技術を必要とする業務に,従事する場合に認められる在留資格のことを言います。具体的には,料理人,工芸品や貴金属等の製造や加工をする職人等があたります。特別な技術を用いて業務を行うことを想定しているため,いわゆる単純労働には認められません。例えば,決められた作業だけをするライン工のような場合や,食品を温めるだけのような簡単な調理のみの飲食店で従事する場合には「技能」の在留資格は認められないことになります。
ここでいう,「産業上の特別な分野」については,関係省令によると,次のようなものがあげられています。
- 外国料理の調理または食品の製造
- 外国特有の建築,土木
- 外国特有の製品の製造又は修理
- 宝石,貴金属,毛皮の加工
- 動物の調教
- 石油や海底鉱物等の探査のための掘削(以上については10年以上の実務経験が必要)
- 航空機の操縦(1000時間以上の飛行経歴が必要)
- スポーツの指導(3年以上の経歴か,オリンピックなどの国際大会への出場経験が必要)
- ワインの鑑定(5年以上の経験と,一定の功績が必要)
この在留資格が認められるためには,
技能が熟練しているかどうか(職務経歴や受賞歴などで証明),
日本で働く機関が安定しているか,
という点がポイントになります。日本で開業してレストランを開くなどの場合には「契約に基づいて」業務を行うことになりません。その場合には「投資・経営」の在留資格とするか,日本の機関と契約してお店を構える必要があります。
「技能」の在留資格に関する必要書類についてはこちらにまとまっています。
2 技能実習
技能実習制度とは,2009年の入管法の改正によって新しく認められた在留資格です。
そもそも技能実習制度とは,日本の技術,技能,知識を開発途上国に移転して開発途上国の経済発展を担うことができる人材を育成するために作られたものです。
そのため,技能実習のための人の移転は,
- 日本で実習に専念することを目的とされ,いわゆる出稼ぎとならないこと
- 日本の受け入れ企業などが人材不足を解消するためのものとなってはならないこと
が法律に明記されています。
実習を行える職種には特に制限がなく,技術支援を必要としている分野であると認められれば日本で技能実習を行うための受け入れができます。実際には,農業,漁業,建設関係,食品製造関係などで多く技能実習が行われています。
技能実習は,大きく分けると
- 講習等による知識習得のための活動や雇用契約に基づく技能習得のための活動(いわゆる技能実習1号)と
- 習得した技能を習熟するために業務を行うこと(技能実習2号)
- 特定の職種について,習熟した技能を更に用いて,許可を受けた管理団体と実習実施者の下で業務を行うこと(技能実習3号)
があります。
このうち技能実習3号はもっとも新しく作られたもので,技能実習2号で習得した分野の内,特定の職種で業務を行う場合に限って認められています。どのような分野で認められるかのかについては,法務省のホームページにおいても公表されていますが,最新の情報も確認されるとよいでしょう(https://www.mhlw.go.jp/content/000599435.pdf)。
それぞれの在留の期間は,技能実習1号は1年間,2号と3号は2年間と定められています。このうち,技能実習1号は最初の2か月は座学での講習などが行われることとされています。
最初の2か月の講習の期間を除いて,技能実習中は外国人実習生も労働関係法令が適用されます。技能実習生を受け入れる側も,労働基準法等に則って実習を行わなければ法令違反になります。
技能実習1号の在留中に,技能を身に付け,検定を合格した場合には技能実習2号の在留資格を得て,さらに2年間,日本に残ることが出来ます。この検定に合格できなかった場合,別の在留資格を得るか,一度日本から出国しなければなりません。
技能実習2号の在留資格で2年間,日本に在留した後,さらに検定に合格した場合には,技能実習3号の在留資格を得て日本に在留出来ることがあります。この場合,技能実習3号の在留資格で日本に在留する前後1年以内に,一度1ヶ月以上帰国しなければなりません。これは,技能実習の目的が,技術や知識を広めるというものであることから,一度帰国して修得した技能を自国で発揮することを期待されているためです。
技能実習3号で2年間日本に在留した後は,検定などはありません。さらに日本に在留することを希望する場合には,特定技能の在留資格へ変更したり,「技術・人文・国際業務」等の在留資格へ変更したりすることも検討しましょう。
※技能実習制度については,技能実習生が日本国内で失踪することを防止するためとして高額な保証金を定めたり,本来の技能実習とは異なる出稼ぎのための外国人の送り出しをしていたりする等の問題もあり,現在では技能実習生の送り出し機関や受入機関,実習を管理する団体に対する審査も厳しくなっています。
「技能実習」に関する出入国管理局の解説はこちら。
3 特定技能
特定技能の在留資格とは,2019年4月1日から新設された在留資格で,日本で人材不足が深刻な分野について,労働力不足を解消するために外国人の就労の受け入れを認める在留資格です。
特定技能の就労資格が認められる分野は,特定技能1号と特定技能2号の職種に分かれています。
特定技能1号の業種とは,
介護,ビルクリーニング,素形材産業,産業機械製造業,電気・電子情報関連産業,建設,造船・船用工業,自動車整備,航空,宿泊,農業,漁業,飲食品製造業,外食業
の14業種です。
特定分野2号の業種は,特定技能1号の業種のうち
建設,造船・船用工業
の2業種です。
特定技能の在留資格を取得するためには
- 特定技能の各業種に関する技能試験と日本語能力試験(N4以上)に合格するもしくは
- 技能実習2号を修了する
かのいずれかとなります。
在留資格の期限は,特定技能1号が通算して5年以内とされているのに対して,特定技能2号については期限に制限はありません。更新の手続きは必要になりますが,特定技能2号の在留資格で日本に在留している外国人の方は,その業種で仕事をしている限りは基本的に日本で生活することができます。
また,特定技能1号の場合には家族の帯同が認められていませんが,特定技能2号の場合には家族の帯同が認められます。特定技能2号の方の「配偶者」と「子供」は,「家族滞在」の在留資格が取得できます。
特定技能1号としての在留期間は永住許可の基準にいう在留として通算されませんが,特定技能2号の在留期間は永住許可の基準に言う在留として通算されます。
特定技能1号,2号とで,在留期間,家族滞在,永住申請の面で違いがあり,いずれも特定技能2号の方が優遇されています。
「特定技能」の在留資格に関する必要書類についてはこちらにまとまっています。
4 技能実習と特定技能の在留資格の違い
似たような名前の在留資格で,企業などが外国人を雇用するという面では同じように見える二つですがその中身は大きく違います。
その違いを制度そのもの,外国人側,雇用主側にとってそれぞれ重要となる部分をまとめました。
<制度そのものの違い>
|
技能実習 |
特定技能 |
制度の目的 |
途上国への技術等の支援のための期限付きの在留 |
労働力不足の解消のための在留 |
在留期限 |
1号:1年 2号:2年 3号:2年 |
1号:通算して5年以内 2号:期限なし(更新は必要) |
職種 |
1号:制限なし 2,3号:82職種146作業 |
1号:14業種 2号:2業種 |
永住許可 |
原則できない |
1号:原則できない 2号:できる |
家族の帯同 |
できない |
1号:できない 2号:できる |
<外国人側にとっての違い>
|
技能実習 |
特定技能 |
試験 |
必要なし(一部の職種のみN4以上の日本語能力が必要) |
技能試験と日本語能力の試験に合格することが必要(技能実習2号を終えていれば免除) |
転職 |
原則不可能(受け入れ先機関で実習する) |
同じ業種内であれば可能 |
有給 |
あり |
あり(家族の滞在や一時帰国のための有給は配慮してもらうことができる) |
※どちらの制度でも,労働基準法の適用,健康保険,厚生年金,雇用保険があります。 |
<雇用主側にとっての違い>
|
技能実習 |
特定技能 |
受け入れ方 |
98%が管理団体を通じて受け入れ |
外国人と直接雇用契約 |
業務の内容 |
あくまで実習として行うため,作業の内容に応じて宣言あり 1号の場合には講習が必要 |
即戦力として働いてもらうことができる |
外国人の生活の管理 |
非営利の監理団体 |
営利/非営利を問わず登録支援団体が行う |
賃金 |
労働基準法の適用あり 日本人と同様かそれ以上の賃金 |
労働基準法の適用あり 日本人と同様かそれ以上の賃金であり,かつ「技能実習2号を修了した外国人は,同様の日本人の職務経験者と同程度に扱うこと」 |