一般的に「就労ビザ」とも呼ばれる在留資格には,
投資・経営 法律・会計業務 医療 研究 教育 技術・人文知識・国際業務 企業内転勤 介護 興行 技能 特定技能 技能実習
の11種類があり,それぞれに対応した職業活動を行うことが認められています。
これらのうち,
投資・経営 法律・会計業務 医療 研究 教育 技術・人文知識・国際業務 企業内転勤 介護 興行
を解説します。
このページの目次
1 経営・管理
経営・管理の在留資格は,社長ビザとも呼ばれ,日本の事業に投資したり,日本で事業を経営したりする外国人に認められる在留資格です。
投資先になる事業や経営する事業の内容は在留資格に関係はありませんが,その事業が安定して継続していることが必要です。そのため,数か月だけ日本で事業をする場合や,一時的な事業への投資の場合には在留資格が認められません。
事業が安定していて継続しているかどうかは,
- 日本に事業を行うための場所が確保されているか
- 事業に従事している人が何人いるか
- どのような事業の計画なのか,もしくは,経営状況がどうなのか(赤字なのか黒字なのか)
といった要素から判断されることになります。
「事業の売上がたくさんある」ということは,安定した経営と評価する事情になりますが,それだけではなく,利益率や借入額など,事業全体を見て安定して継続しているかどうかを判断されることになります。
また,投資や経営をしている人に,適切な報酬や利益の分配があるかどうかによっても在留資格が認められるかどうかが変わってきます。形だけ「役員」や「取締役」となるだけでは,投資や経営をしているとは認められないことがあります。
この資格を活用する具体例としては,
- 日本に留学していたけれども就職をせず日本で新しく自分でビジネスをしたい方
- 日本人の友達のビジネスに投資をして,経営にもかかわるために日本に入国したい方
等があります。
経営・管理のビザは他の在留資格よりも基準が複雑になっている部分がありますので,事業や投資を始めたい外国人の方や,外国人と一緒に事業や経営をするために呼び寄せをしたい方は,弁護士などの専門家にも相談してみるとよいでしょう。
「経営・管理」の在留資格に関する必要書類についてはこちらにまとまっています。
2 法律・会計業務
法律・会計業務とは文字通り,弁護士や公認会計士などの資格の業務を行うために認められる在留資格です。
弁護士,公認会計士の他に,司法書士,土地家屋調査士,税理士,社会保険労務士,弁理士,海事代理士,行政書士といった資格の業務が,法律・会計業務の在留資格として認められます。
「法律・会計業務」の在留資格に関する必要書類についてはこちらにまとまっています。
3 医療
医療とは,医師,歯科医師,薬剤師,看護師,放射線技師など,資格をもって医療に従事するために認められる在留資格です。資格がなければ認められませんので,単なる病院の受付や事務員として働く場合には認められません。
また,医療に従事することを条件としていますので,日本の研究所で医学や薬学について研究を行う場合には,次に説明する「研究」の在留資格を申請することになります。
「医療」の在留資格に関する必要書類についてはこちらにまとまっています。
4 研究
日本の研究機関と直接契約をして研究に従事する外国人に認められる在留資格です。入管は,「外国人と日本の研究機関との契約」があることを前提にしていますので,研究機関同士の契約に基づいて,外国人が日本に派遣される場合等だと,在留資格が認められない場合があります。また,研究に対する報酬が,日本人と同等かそれ以上でなければなりません。安い報酬で外国人を研究に従事させたり搾取したりすることを禁止するためです。
研究の内容や研究分野の知識の程度は問われませんが,研究する分野について,大学での一定期間以上の研究経験,もしくは,大学以外での一定期間以上の研究経験があるかことが求められます。
「研究」の在留資格に関する必要書類についてはこちらにまとまっています。
5 教育
日本の小学校,中学校,高校,専門学校などの機関で教育,指導を行う業務に従事する外国人に認められる在留資格です。大学で教育をする場合には,「教授」という在留資格になります。また,教育機関以外(例えば,教材作成会社で外国語の監修をする場合等)で教育活動を行う場合には,「人文知識・国際業務」という在留資格になります。
教育の在留資格を受けるためには,大学を卒業かそれと同様の教育を受けていること,または教員の免許を受けていることが必要になります。この教員の免許は,日本の者に限らず,日本以外で取得した物でも構いません。
教育機関の種類に応じて,教員としての実務経験が必要になります。教員として受け持つ科目は,外国語でもそれ以外でも問題はありません。
「教育」の在留資格を取得しようとする場合,働く先が学校なのか,学校以外の教育機関なのか,教育機関以外での教育活動なのかに応じて,認められるかどうかが変わってきます。
外国人講師を呼び寄せようと考えている方,日本で何らかの教育活動をしたいと考えている方は,自分が申請する在留資格が適切なものであるかどうか,専門家に問い合わせておくと安心です。
「教育」の在留資格に関する必要書類についてはこちらにまとまっています。
6 技術・人文知識・国際業務
「技術・人文知識・国際業務」の在集資格は,日本の企業や公共団体で,特定の専門分野における知識に基づいて業務を行う場合に必要になる在留資格です。
- 技術・・・工学や理学など自然科学分野の知識(例えばエンジニアや技術者)
- 人文知識・・・法律学や社会学など人文科学分野の知識(例えば人事や法務など)
- 国際業務・・・日本以外の国の文化や考え方に関する知識(例えば通訳やデザイナー)
これらの専門分野については,大学を卒業しているか,それと同等の教育を受けていなければなりませんし,一定の実務経験が求められます。また,日本で行おうとする業務の内容と専門分野の知識が関連していなければなりません。知識と業務との関連性は,大学の履修科目などの具体的な内容と,業務の具体的な内容が関係しているかどうかを判断されることになります。専門知識を有していて,かつ,会社の技術部門に就職するとしても,実際の業務内容がコピーを取るだけだったり,ライン作業だけだったりする場合には,在留資格が認められません。
技術・人文知識,国際業務は就労ビザの中でも特に多くの方が取得している在留資格になります。
外国人の方を採用しようとする日本の企業や日本にいる外国人の方が転職するときに利用されることも多い在留資格ですが,知識と業務の関連が問題になりやすい在留資格になります。資格外活動や不法就労助長になることがないよう,弁護士などの専門家とよく相談するのがよいでしょう。
「技術・人文知識・国際業務」の在留資格に関する必要書類についてはこちらにまとまっています。
7 企業内転勤
企業内転勤とは,日本に事業所がある機関の,海外の事業所に在籍している外国人の方が,日本の事業所に移動する場合に認められる在留資格です。例えば,A社のアメリカ支店で働いていたXさんが,A社の東京支店に異動することになり,日本に移り住む場合があります。
この場合に在留資格が認められる仕事の内容は,「6 技術・人文知識・国際業務」に該当する業務のみです。
そして,同一の会社内での異動だけではなく,親会社や子会社との間での異動,グループ法人内にある関連会社との間での異動も含まれています。企業内転勤として在留資格をもらおうとする場合には,移動前に1年以上同じ機関に勤めていなければなりません。1年以上同じ機関に勤めていなかった場合には,「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を取得することも検討できます。
企業内転勤の場合には,「技術・人文知識・国政業務」の在留資格と違って,学歴は条件となっていません。
「企業内転勤」の在留資格に関する必要書類についてはこちらにまとまっています。
8 介護
平成29年の法律改正によって認められた在留資格です。日本にいる要介護の方の介護や,介護をする人に対する指導をする活動をするために認められる在留資格です。
介護活動については,日本で介護福祉士の資格を取得しなければなりません。多くの外国人の方は,日本に入国する時点で,日本の介護福祉士の資格を持っていませんので,典型的な流れとしては,日本に留学生として入国し(「留学」の在留資格),福祉の学校に通い,日本で介護福祉士の資格を取得してから,在留資格を「介護」に変更することになるでしょう。
また,仕事として介護をする場合に認められる在留資格ですので,企業や公共団体に雇用されて報酬をもらいながら介護活動を行うのでなければなりません。日本にいる家族の介護のためだけでは,介護の在留資格は認められません。
「介護」の在留資格に関する必要書類についてはこちらにまとまっています。
9 興行
興行の在留資格とは,演劇,演芸,演奏,スポーツなどの活動や,その他の芸能活動のために認められるものです。俳優や歌手,ダンサー,スポーツ選手など具体例として挙げられます。また,俳優や歌手が日本で芸能活動を行う場合のスタッフ(撮影スタッフやマネージャーなど)も興行の在留資格が認められますが,芸能プロダクションなどの経営は,前述の「経営管理」の在留資格が優先して適用されます。
興行のために在留する場合には,演劇,演芸,演奏,舞踊,歌唱をする場合と,それ以外の芸能活動をしようとする場合とで,在留資格が認められる条件や提出書類が異なります。具体的には,演劇や演芸が行われる場所の条件や,有償での飲食物の提供がないこと,接待をしないこと,主催者が民間団体なのか公共団体なのか,などといった条件が異なります。
また,この在留資格は悪用されることも多く,単なるホステスの呼び寄せのために使われることも多いため,入国管理局も申請された内容を注意深く見おり,在留資格が認められないこともあります。興業の在留資格で外国人を呼び寄せようと考えている方や入国しようと考えている方は,事前に弁護士に相談の上,興行として在留資格を認められるかどうかよく確認しておくとよいでしょう。
「興行」の在留資格に関する必要書類についてはこちらにまとまっています。