在留特別許可手続きが変わります

各社の報道によると,在留特別許可の手続きが法改正によって変わる可能性が報じられています。

京都新聞 在留特別許可が「申請制」に

沖縄タイムス 在留特別許可が「申請制」に 入管庁,難民認定と区別

在留特別許可の手続きが変わるようですが,どのように変わる可能性があるのでしょうか。また,これまでの手続でどう不都合があったのか,解説します。

現在の在留特別許可に至るまでの手続

現在の在留特別許可に至るまでの手続は,法務大臣による裁量によってとられています。

具体的には次のような流れになります。

1 入国警備官の違反調査

日本に在留する外国人の方に対して,退去強制(強制送還)の理由となる事情が発見されると入国警備官による違反調査が行われます。この調査はもちろん,外国人の方の意思に関係なく始まります。

退去強制(強制送還)の理由になる具体的な事情としては,不法滞在(オーバーステイ)や不法就労(専ら資格外活動をしていた)場合や,一定の刑事事件で有罪判決を受けた場合等があります。違反調査の結果として,退去強制となる事情があると判断された場合,調査の結果が入国審査官へと引き継がれていきます。また,多くの事案については収容令書が出され,出入国管理局に身柄を拘束されてしまうことがあります。

2 入国審査官による違反審査

入国警備官による調査の結果を踏まえて,入国審査官が退去強制の理由があるか無いかについて審理し,退去強制の理由があると判断されると,退去強制令書が発布されます。

退去強制令書が発布されると,出国に向けた手続きが進んでいきます。

在留特別許可を目指す場合には,退去強制令書の発布に対して「口頭審理の請求」を行う必要があります。

3 特別審理官による口頭審理

口頭審理請求がなされると,特別審理官による口頭審理が行われます。この口頭審理は,一連の手続を通して,強制送還されそうな外国人の方に対して,出入国管理局が行う最後のインタビューの手続です。口頭審理では,入国警備員や入国審査官による調査や審査の結果に誤りがあるかどうかを判断します。ここでも在留特別許可を認めるかどうかについては判断されません。

口頭審理の結果,違反調査・違反審理に誤りがないとされ,なお在留特別許可を求める場合には異議を申し立てる必要があります。

4 異議申し立てと,法務大臣の裁決

口頭審理の結果に対する異議が申し立てられると,法務大臣による裁決の手続が行われます。ここで初めて,在留特別許可をするかどうかの判断がなされます。

在留特別許可をするかどうかについては,法務大臣の裁量によって,「許可するかどうかの判断」がなされます。

 

これまでの手続の問題点

以上のような手続については,次のような問題点がありました。

①在留特別許可をするかどうかの判断が遅い

上記の流れのとおり,「4異議申し立てと法務大臣の裁決」に至らなければ在留特別許可の判断がなされず退去強制の手続きが進んでしまいます。

多くの「在留特別許可を求めたい」というケースでは,退去強制になる理由があることは間違いがないが特別な事情がある,という場合です。しかし,「特別な事情」に対する判断が一番最後の法務大臣の許可までなされず,最初のうちは,純粋に「強制送還する事情があるかどうか」のみ判断されることになります。

そのため多くの外国人の方が,在留特別許可がもらえるのかどうかが分からないまま,強制送還の手続だけが進んでいくという,非常に不安定な立場にさらされていました。

 

②在留特別許可を求める申請手続きがなかった

そもそも,外国人の方から自発的に「在留特別許可を求める」という手続きは存在していませんでした。

あくまで,退去強制手続の中で,口頭審理の請求,異議申し立てを行った人に対して,それでも日本での在留を認めるべき事情があるかどうかという観点から,法務大臣が検討を行うという建前です。上記のとおり,退去強制手続きはほとんど「外国人の方の意思に関わらず」始まります。とすると,突然の退去強制の手続が始まり,準備もままならないまま在留特別許可を求めなければならないことになります。

 

申請制となると手続きがどう変わるのか

報道にあるような出入国管理法の改正が実現し,在留特別許可が「申請制」となった場合にどのように手続きが変わるのでしょうか。

まず第一に,これまで申請手続きがなかったところに,在留手続を求める窓口ができるという点です。一見すると何が違うかのと思われるかもしれませんが,個々人から自発的に在留特別許可を求める手続きがあるのとないのでは大きな違いがあります。現在,在留特別許可を求めたいのに,申請手続きがないために,退去強制の手続が始まるまで待たなければなりませんでした。

自分には在留資格がないと分かった上で,適法な在留資格を得るための申請をしたいのに法律上その手続がなかったという点が改善されることが期待できます。

また,第一に在留特別許可を求めることが出来るというのも大きな変更点です。これまでは,違反審査,口頭審理という手続きを踏まえなければ,判断してもらえませんでした。退去強制の手続の前に在留特別許可を申請できるようになることで,より直截に手続を進められるようになることが想定されます。

今後,国会に法案が提出された上で審理が行われることになりますが,在留特別許可をめぐる出入国管理法の改正の方向が注目されます。

現時点でも,在留特別許可の手続は複雑なものとなっています。不明点があったり,そもそも自分は在留特別許可を求められるのかという点でご不安があったりするかたは,一度弁護士とご相談されると良いでしょう。

 

※令和3年2月20日補記

令和3年2月19日,入管法を改正する法案が閣議で決定され,在留特別許可が,「申請制」となることが現実味を帯びてきました。

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