留学生が公務執行妨害で逮捕されてしまった場合

【事例】

留学生の資格で在留しているAさんが,B市市役所で住民票を移そうとしていました。しかし,Aさんは,市役所職員から,「申請のための資料が足りない」と言われたことから,怒り,市役所職員につかみかかり,「どういうことだ,これでいいだろ」と声を荒げて怒ってしまいました。
そのため,B市職員に警察官を呼ばれ,警察官に現行犯逮捕されてしまいました。
なお,Aさんに前科はありません。

このような事例の場合に,①Aさんはどのような刑罰を受けるのか,②退去強制処分となるのかという二点について解説していきます。

(1)公務執行妨害罪の刑事罰

刑法95条によれば,「公務員が職務を執行するに当たり,これに対して暴行または脅迫を加えた」場合に成立します。
この場合の刑罰として,「3年以下の懲役又は,50万円以下の罰金」が予定されています。

公務執行妨害罪の重さは,①暴行の強度②公務が妨害された程度③前科の有無④被害弁償を済ませたかによって決まります。
①については,暴行の程度が強度であれば,重く見られます。公務員を殴ったり,蹴ったりすると重く見られます。
②については,どのくらい妨害されたかによって決まります。長時間仕事を離れなければならないような場合,重く見られます。
③については,前科があれば重く見られます。
④については,被害弁償を行って居れば,有利に見てもらえます。
今回のAさんについては,掴みかかるという暴行を行っている点が重く見られます。公務を妨害した時間は分かりませんが,前科が無いことは有利な事情になり,被害弁償も行えば有利な事情として見てもらえます。
このような場合,Aさんは重くとも,執行猶予付きの有罪判決となり,場合によっては,罰金刑で終わる可能性があります。

参考記事

警察官に暴行 公務執行妨害事件で現行犯逮捕

(2)入管関係でどのような処分が下されるか

入管法24条4号の2に掲げる罪名として,公務執行妨害罪は規定されていないことから,公務執行妨害罪で執行猶予付きの有罪判決となったとしても退去強制処分を受けることはありません。
しかし,懲役1年以上の実刑判決となった場合には,入管法4号リに基づいて,退去強制処分の対象となります。

今回のAさんの場合,前科が無く,重くとも執行猶予付きの有罪判決になることが予想されていることから,退去強制になることは予想されません。
ただし,たとえ退去強制されないとしても,次の更新の際には不利な事情として扱われることになります。長期間,日本での滞在を希望する場合には刑事事件についても不起訴処分となっている方が,ビザの更新の点では不利益が少ないものとなります。

参考記事

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(3)弁護士として出来ること

このような刑罰が予想されることから,弁護士としては,①早期の身柄解放を求めること,②不起訴になるよう求めることが考えられます。
①については,今回の事件の場合,Aさんは逮捕されていることから,勾留をしないよう求めたり,勾留に対して準抗告を行うことによって,早期の身柄解放を求めることになります。
②については,このような事件の場合,示談を成立させることで,不起訴となる可能性があります。

このように,留学生が,公務執行妨害罪に当たる行為を行ってしまった場合には,迅速に弁護士に相談して,対応してもらうことが適切です。

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