【事例】
Aさんは,東京都内で,個室マッサージ店(いわゆるチャイエス)を営む経営者で,店舗型性風俗特殊営業許可を受けないで性的サービスの提供を行う甲という店舗でBさん(定住者)を働かせています。甲と言う店舗はAさんが3年前に立ち上げた店舗です。
ある日,利用客からの通報により,警察がAさんの店舗に来て,Aさんを逮捕しました。
なお,Aさんに前科や前歴はありません。
以上の事例を前提として,①Aさんが受ける刑事罰はどのようなものになるのか,②AさんとBさんは退去強制処分になるのかについて解説していきます。
このページの目次
(1)店舗型性風俗特殊営業の無許可営業の刑事罰
風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(以下,「風適法」と言います。)3条1項によれば,風俗店の営業を行うためには,都道府県公安委員会の許可を得なければならないとされています。
これに反して,営業許可を得ずに店舗を営業させた場合,風適法49条1号に基づき,2年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金,又はその併科が予定されています。
今回のAさんの経営するいわゆるチャイエスのような店舗型性風俗特殊営業については,風適法2条6項2号の「個室を設け,当該個室において異性の客の性的好奇心に応じてその客に接触する役務を提供する営業」に該当するので,都道府県公安委員会の許可を得なければならないとされています。にもかかわらず,Aさんは営業許可を得ていないため,風適法の無許可営業罪として処罰されることになります。
風俗店の無許可営業の量刑は,①無許可営業の営業内容,②無許可営業の期間,③事後的に許可を得て営業するようにしているかなどによって決まります。
①の営業の内容が,キャバクラなどの客を遊興又は飲食させる内容とは異なり,性的サービスの提供に関わるものである場合は,重く見られます。
②の無許可営業の期間が長ければ重く見られます。
③の営業許可を取ることができるのであれば,有利な事情として見られます。
そのため,大まかな量刑傾向としては,執行猶予付きの有罪判決に罰金も併科されるのが多いのですが,暴力団が関わっている,犯罪収益の隠匿がある,未成年者を働かせているなどの重く見られる事情があれば,実刑になることもあります。
今回のAさんの場合,無許可営業の内容は店舗型性風俗特殊営業に関するものであり,3年前から無許可営業だったとのこと,後述するような事情により営業許可を得ることが難しいため,執行猶予付きの有罪判決に罰金刑が併科される可能性が高いです。
風営法違反事件についての詳しい解説はこちら。
(2)退去強制処分になるか
入管法24条4号ヌによれば,「売春又はその周旋,勧誘,その場所の提供その他売春に直接関与がある業務に従事する者」は退去強制処分の対象になることが規定されています。
今回のAさんについては,いわゆるチャイエス店で性的サービスの提供を行っていたとなると,有罪判決を受けていたかどうかに関わらず,退去強制処分の対象となります。
また,Bさんについても,チャイエス店で勤務していたため,刑事罰を受けなくとも,入管法24条4号ヌに該当するとして,退去強制処分を受ける可能性があります。
入管法24条4号ヌの解釈としては,刑事罰を受けなくとも入管法24条4号ヌに該当すると判断される場合でも退去強制処分の対象となると考えられているためです。
(3)弁護士として出来ること
このような刑事処分と退去強制処分が予定されていることから,弁護士としては,①Aさんにとって有利な事情を裁判所に提供しなるだけ刑事罰を軽くするようにすること,②AさんやBさんの退去強制処分を争うことができます。
①については,Aさんの営業が比較的短期間であることや暴力団とは関係が無いことや,未成年者を働かせていないことなどを主張して,実刑を回避するよう対応することができます。
②については,AさんやBさんが日本に残るべき事情を探して,有利な事情を基に出入国管理局に対して在留特別許可を申請したり,不許可となった場合には退去強制処分の取り消しを求める訴訟を提起したりします。
このように,風適法違反の刑事罰,退去強制処分に対しては,弁護士をつけて対応することができますので,迅速に弁護士に相談することをお勧めします。
お問い合わせはこちらから。