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1 オーバーステイとは
オーバーステイとは,在留期間を過ぎた後も在留資格なく日本に在留し続けることで,正式には「不法残留」といいます。
オーバーステイ,不法残留は入管法の違反として退去強制(強制送還)の対象となります。
在留期間を過ぎて日本に在留して,オーバーステイとなってしまった場合,入管に対して次のような対応を取ることが考えられます。
- 在留期間の更新申請の特別に受理してもらう
- 出国準備をして出国命令制度により出頭する
- 在留特別許可を求めて出頭する
2 まだ更新が間に合うかも?(①の場合)
在留期間の更新の手続きを,うっかり忘れてしまった,怪我や病気で入院していたのでできなかった,という場合,在留期間を過ぎてしまったとしても更新ができる場合があります。
在留期間の最後の日から2か月以内であれば,在留期間の更新の申請について救済措置が取られ,更新の申請が特別に受理されて許可されることがあります(特別受理)。在留期間を過ぎてしまったからといって手続を怠っていると,この様な救済措置すら受けられなくなってしまう恐れがあります。
在留期間の更新を忘れてしまったことに気付いても,まずは落ち着いて,本来の在留期間からどのくらい日数が経ってしまったのかを確認しましょう。
万が一,在留期間の最終日になって更新を忘れていたことに気付いた場合でも同様です。最終日に気付いた場合には,在留カード等手元にあるものだけで構わないので,資料をもって直ぐに入管の窓口へ行き,在留資格の更新申請を行ってください。
何もしないで放っておいたり,殊更に逃亡を図ったりするのは最悪の選択肢ですので,絶対にやめましょう。
3 出頭して日本から出国する(②)場合
既に在留期間が過ぎてから2か月以上が経過していて,日本からの出国を望む場合には,出国命令制度に基づいて出頭することにより,入管での収容や再上陸許可期間の短縮などが得られます。
なお,オーバーステイなどの入管法の違反により退去強制令書が発布されたのは,法務省が公表している平成28年のデータによると「7241件」,出国命令書が発布されたのは「4101件」のようです。
出頭命令制度とは,オーバーステイにより退去強制の対象となってしまった方が主国の意思を示して入管に出頭することにより,通常の退去強制とは違う手続きを取る制度です。
主な条件としては,退去強制の対象となる事情がオーバーステイ(不法残留)のみであること,出国の意思を持って出頭したこと,オーバーステイとなったのが初めてであること,日本国内で一定の犯罪により刑を課されていないこと,出国のために必要なパスポートや航空券などの用意があることがあります。
これらを満たしていた場合には出頭しても入管に収容されることはなくなり,最長15日の出国期限が定められ,その間に日本から出国するよう命じられます。
この出国命令に応じて日本から出国した場合,日本への再上陸拒否期間が,通常の5年から1年に短縮されます。
なお,出頭命令制度に基づいて出国するか,次項の在留特別許可を求めるかどうかについて,弁護士などの専門家と入念に打ち合わせておく必要があります。出国意思を示して出頭した後,気持ちが変わって在留を続けようとすると,出国命令違反となり刑罰が科される可能性があるためです。
4 引き続き日本での在留を希望する(③)場合
オーバーステイになってしまい,更新申請の特別受理もしてもらえないほど期間が過ぎてしまった場合,それでも日本での在留を希望する時には,在留特別許可を受けるしかありません。
退去強制の理由が単純なオーバーステイのみで,日本に生活の基盤がありかつ,日本に家族がいる等引き続き在留する必要があれば,在留特別許可を受けられる可能性は比較的高い事案と言えます。
実際,在留特別許可が認められた方のうち,退去強制事由が不法残留(オーバーステイ)だったという方は,約70%でした(平成28年の数値,在留特別許可が1552件あり,その内,不法残留の方は1106件)。
不法残留のみであれば事情によっては在留特別許可を得られる可能性もありますので,あえて出国する必要がない場合もあります。
オーバーステイになってしまっても,できる限り日本に長くいたいという思いを持っていただける方もいらっしゃるかもしれません。一方,オーバーステイ状態を放置しておくのは,法律家の目から見ても絶対にいけないことです。
入管へ出頭するのは覚悟がいることですが,事前に弁護士などの専門家と相談して適切な方針をとり,一度出国した上で早期の再入国を目指すのか,現在の在留を続けるべく在留特別許可を求めていくのかを決めて十分な準備をしておくべきでしょう。