入管法違反の種類

1 入管法違反とは何か

入管法とは,出入国管理及び難民認定法の略称であり,主に日本における外国人の入国,出国,在留に関する事柄について定めた法律です。

例えば,有効な旅券を持たない外国人は本邦に入国してはならない(入管法3条1項1号)とされています。その規定について違反をした場合,上の例では,有効な旅券を持たないで日本に入国した場合には,入管法違反となります。

そして,入管法70条1項1号は,「入管法3条1項1号に違反した者に対しては3年以下の懲役もしくは禁固刑もしくは300万円以下の罰金を科す。場合によっては懲役刑と罰金刑の両方を科す」と定めています。

一番注意しなければならないのは,「入管法の違反=罰則がある」というわけではないということです。

上の例の入管法3条の違反は,いわゆる「不法入国」と呼ばれるものですが,これに違反した場合には,入管法70条によって罰則が科されるのです。

一般的な理解としては,「入管法の規定に反する」というレベルの問題と,「罰金刑や懲役刑を科される」というレベルの問題は,少し違うのだ,と思っていただければよいかと思います。例えば入管法19条は資格外活動を禁止していますが,その違反に対する罰則には2パターンがあり,①日本の在留中「もっぱら資格外の活動をして収入や報酬を得ていた」という場合と,②「もっぱらではないものの資格外の活動をして収入や報酬を得ていた」という場合があります。この例では,①よりも②の方がより軽い罰則となっています。

 

☆入管法違反,罰則=在留資格の取消し?退去強制?

入管法の罰則の規定は,在留資格の取消しや退去強制と共通する部分があります。しかし,それぞれに特有の部分もあります。

罰則の規定については,「刑罰を科すべきか」という視点であるのに対して,在留資格の取消しや退去強制については「日本に在留させるべきか」という視点で考えられているためです。また,刑罰の内容が退去強制事由となっている場合がありますが,この場合には裁判が確定しなければ退去強制事由とはならないのです。

逆に,入管法違反で有罪となっても退去強制にならないこともあります。その場合であっても永住許可の申請や,在留資格の延長申請において不利になることがあります。

法律違反が実際にどのように自分に対する不利益となるか,素人判断してしまうのは大変危険ですし,とんでもない勘違いをしてしまうこともあります。

「入管法違反になってしまうけど,どうなるんだろう」と不安な方も一度弁護士と相談することをお勧めします。在留資格がどうなるのか,強制送還されるのか,日本で刑事裁判にかけられるのか,という点は専門家の話を聞いて,よく整理しておきましょう。

 

☆日本人は入管法違反にならない?

入管法は主に外国人の方の日本における取り扱いを定めた法律ですので,入管法の違反は外国人だけと思っている方もいるかもしれません。しかし,日本人の方の入管法違反もありえます(もちろん,それによって国籍のはく奪や国外への追放などと言うことは決してありません)。

外国人の方との共同正犯として同じ程度の責任を追及される場合もあれば,情状によってはより重い責任を問われることもあります。

入管法=外国人に対する法律,と考えていると思わぬところで刑罰に問われかねません。特に,日本にいて外国人を雇入れる方は,不法就労助長罪にあたってしまうことがありますので,注意しなければなりません。

 

2 入管法違反としての罰則の種類

入管法の違反のうち,罰則の規定があるものについて主要なものを

  • 入国の際の違反 
  • 日本在留中の違反 
  • 出国の際の違反

に分けて整理します。

 

・入国時の入管法違反

「3年以下の懲役もしくは禁固または300万円以下の罰金」

不法入国,不法上陸

不法入国や不法上陸を容易にする行為(援助行為)

 

「5年以下の懲役または300万円以下の罰金」

集団密航者を上陸・入国させたり,輸送・蔵匿(かくまうこと)したりする行為

 

・在留中の入管法違反

「3年以下の懲役もしくは禁固または300万円以下の罰金」

不法滞在(いわゆるオーバーステイ)

出国命令違反

日本で専ら資格外活動をして不法就労していた場合

※これらは退去強制事由にも該当

 

「1年以下の懲役もしくは禁固または200万円以下の罰金」

日本で専らではないものの不法就労をしていた場合

 

「1年以下の懲役または20万円以下の罰金」

在留カードに関する虚偽の届け出

 

「20万円以下の罰金」

住所変更届をしなかった場合

 

・出国時の入管法違反

「3年以下の懲役もしくは禁固または300万円以下の罰金」

出国準備期間の徒過

退去強制事由のある外国人をかくまったり逃亡させたりした場合

 

「1年以下の懲役もしくは禁固または30万円以下の罰金」

出国確認の手続きを取らないで出国した場合,もしくはその出国を企てた場合

 

「1年以下の懲役もしくは禁固または30万円以下の罰金」

出国命令期間中の条件違反

 

・日本人の方に多い入管法違反

「3年以下の懲役もしくは禁固または300万円以下の罰金」

不法就労助長

不法入国や不法上陸の援助行為

 

「1年以上10年以下の懲役」

在留カードの偽造,変造

なお,日本人の方と外国人の方の共犯事件として特に多いものとして,偽装結婚というものがあります。これは,入管法の罰則ではありませんが,刑法の「公正証書原本不実記録罪」という犯罪にあたります。刑罰は5年以下の懲役または50万円以下の罰金です。これは結婚する意思も実態もないのに結婚したことを装って婚姻届けを提出し,虚偽の戸籍を作りだしたという犯罪です。

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