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☆入管に収容される場合とは
入管に収容される場合としては,2つのパターンがあります。
- 違反調査の中で収容令書が発布された場合と
- 退去強制令書に基づいて収容がなされる場合です。
- 違反調査とは,日本に在留している外国人の方に対して退去強制事由があるとの疑いがもたれた時になされる,入国警備官による調査活動です。調査の結果として退去強制事由があるとされると,出国命令制度に該当する場合を除いて収容令書が発布されます。収容令書によって収容できる期間には限りがあり,原則としては30日まで,例外としてやむを得ない事情があるときには60日までとなります。
- 一方,退去強制令書に基づく収容には期間の定めがなく,対象国に送還されるまでの間,収容がなされることになります。
違反調査の中で収容令書が発布された場合には各地方入国管理局の収容場に,退去強制令書が発布されている場合や在留資格を争って裁判を起こしている場合のように収容が長期間になっている場合には入国管理センター(長崎県の大村か,茨城県の牛久)に収容される場合が多いです。
以下,収容されている場合の対応として特に多いものを説明します。
Q とにかく早く釈放してほしい
収容されている間は,各入管の施設内で生活しなければなりません。移動や生活の制限をされるもので,大変な心理的苦痛も伴います。
入管に収容されている時には,仮放免を申請することが出来ます。仮放免とは,収容されている外国人の方を一時的に釈放するというものです。300万円以内で保証金が定められ,納付することで,一時的に収容から解かれます。仮放免は,収容されている外国人の方本人はもちろんのこと,一定のご家族や委任を受けた弁護士も申請することが出来ます。
仮放免されている間も日本に在留することが出来ますが,あくまで違反調査や退去強制の手続の間の在留を認めたものです。新しく在留資格を付与されたわけではありませんし,仕事や移動について一定程度の制限がつけられることもあります。
仮放免がどのような場合に認められるのかについて,法律上明確な基準はありませんが,例えば
- 自ら入管に出頭した場合
- 日本からの出国を前提として出国準備をする必要がある場合
- 在留特別許可がなされる見込みの高い場合
- 介護や養育をしなければならない家族がいる場合
等は仮放免が認められやすいといえます。
これらの事情がないとしても,仮放免の申請には回数制限などはありません。収容されている状態を一刻も早く解消したいと考えている場合には,個々の事情に基づいて,積極的に仮放免を申請していく必要があります。ご本人,ご家族だけでは難しい場合には,弁護士などの専門家に早急に相談しましょう。
Q とにかく早く日本から出たい
収容されている状態を解消する手段として,早期に日本から出国してしまいたいという方もいらっしゃるでしょう。退去強制令書は出されているし,在留特別許可も求めるような事情もないという場合で,ただ収容されていることだけが苦痛だ,という方です。
退去強制令書が発布されても,翌日すぐに出国するわけではありません。法律上は国費(日本が航空代などを負担する)による出国が原則とされていますが,国費による出国の場合,手続に時間がかかります。長い方だと,数か月間出国まで待たされることがあります。
そこで,多くの外国人の方は,自分でチケット代や航空券を用意して,自費で出国しています(自費出国)。自費出国をしようと思う場合,パスポートと航空券を用意して収容先の入管の担当官に申し出ることで,自費による出国が認められます。
また,ご本人がチケット代を持っていない場合や航空券を買うお金を持っていない場合には,家族や知人の方が代わりに購入したり,現金を差し入れたりすることもできます。偽造パスポートで上陸した場合や不法入国の場合等,パスポートを持っていない場合には,入管を通じて本籍国の大使館に取り次いでもらい,パスポートを発行してもらうこともできます。この場合,パスポートの発行のためにある程度の時間がかかります。
これらの出国の準備を行うために,上記の仮放免を申請することもあります。
Q 日本に残る道を探りたい
入管に収容されてしまったとしても,日本に在留し続けられる可能性はあります。
違反調査の段階で収容されてしまった場合,退去強制事由があるかどうかについて争う余地がある場合があります。また,退去強制事由があるとしても,在留特別許可を得られることもあります。
在留特別許可が認められると,退去強制されることはなく,特別に在留資格が認められ,新たに在留期間が定められることになります。「在留特別許可について」の項の解説もご参照ください。
在留特別許可に関する判断は,令和6年6月10日以降は「在留特別許可を求める申し立て」をした上で,違反調査・違反審査手続きの最後に行われます。
調査や審査手続きの途中で在留特別許可だけをするということはありません。
既に退去強制令書が発布されてしまった場合には,申立をすることはできず,今度は行政訴訟を起こして処分の取り消しを求めなければなりません。
収容されたままで在留特別許可を求める場合,上記のとおり収容の時間制限内に手続を進めなければなりません。在留特別許可を求める側としても,主張や立証のための準備をしなければならないため,迅速な準備活動が必要です。後出しで主張や証拠を出しても,手遅れになってしまうこともあります。
入管に収容されてしまった場合,その後の方針によって弁護方針にも違いがあります。もちろん,唯一絶対の正解があるわけではないため,いくつかの手段を併用することもあります(在留特別許可を求めつつ仮放免を申請する等)。
どのような方針で行くのか,何を一番の優先順位とするのか,手続に精通した弁護士などの専門家と早期に相談しておくのが良いでしょう。