上陸拒否されても日本に入国することができるか?上陸拒否の特例について解説

一度強制送還をされてしまうと,多くの場合には再入国を拒否されてしまいます。

再度日本へ入国することを希望する場合,どのような手続きがあるのでしょうか。

「上陸拒否の特例」について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事例

(架空の事例です)

Aさんは、小学校1年生の時に、南米にある日系移民が多く暮らす町から家族全員で日本に移住してきました。Aさんはおじいさんが日本人の日系3世です。Aさんは父母、弟、妹の5人家族で、Aさんが10歳の時にお父さん、お母さん、弟、妹とAさんの5人全員がA県に移住してきました。AさんはA県の公立高等学校を卒業して、A県にある自動車部品製造会社で、3交代で働いていました。

ある時知人から「この草をたばこのように紙に巻いて吸うと疲れが取れるよ。試してみないか」とすすめられ、興味本位で知人から大麻草0.5グラムを譲り受けました。

Aさんはこの草をインターネットで検索し大麻草であることを知りましたが、最近仕事でストレスがたまっていたこともあり、気分転換のつもりで吸ってもどうせばれないだろうと考え、夜勤明けに会社近くにある公園の駐車場で、紙たばこのようにして大麻草を吸っていたところ、公園を巡回していた警察官に見つかり現行犯逮捕されました。

その後Aさんは起訴され裁判所で懲役8月執行猶予3年の有罪判決を受けました。

この事件が原因で入管からこれまでの素行善良要件に問題があると判断され、Aさんは次の在留更新が不交付となって本国に帰ることになりました。本国に帰ったAさんには親しい知り合いが誰もおらず、小さいころから日本で生活しているため母国語もよくわからないため給料の高い仕事につけず毎日の生活が本当に大変です。なんとか日本に戻って安定した仕事を得て、日本にいる家族と一緒に生活したいAさんですが、入管からは無期限上陸拒否の処分がでているため、観光ビザでの入国すらも拒否されてしまいます。Aさんの大麻取締法違反の刑の執行猶予期間はとっくに経過しており、刑の言い渡しは効力を失っているにもかかわらず(刑法27条)、ほんの出来心でわずかな量の大麻を吸引して日本で罰を受けたAさんは、このままでは永久に日本に戻れません。

一体どうすればAさんは日本に戻ることができるのでしょうか?

Aさんが日本に入国するためには?入管法の規定はどうなっているのか?

入管法では上陸拒否について以下のように規定されています。

<関連条文>

入管法第5条1項

「次の各号のいずれかに該当する外国人は、本邦に入国することができない。」

入管法第5条1項では、上陸拒否に該当する事由を列挙しています。

入管法第5条第1項4号

「日本国又は日本国以外の国の法令に違反して、一年以上の懲役若しくは禁固又はこれらに相当する刑に処せられたことのある者。ただし、政治犯罪により刑に処せられた者は、この限りではない。」

一年以上の懲役若しくは禁固又はこれらに相当する刑に処せられた場合は、無期限上陸拒否となります。ここで注意しなければならないのは、この条文にある「相当する刑に処せられた」です。本来「執行猶予」期間が経過すると刑が失効するにも関わらず、「一年以上の懲役若しくは禁固又はこれらに相当する刑」に「執行猶予」も含めて運用されているため、日本では起訴=有罪がほぼ100%であることから、裁判所から有罪判決を受けたという事実だけで、ほぼ無期限の上陸拒否事由に該当してしまうことになります。

結果として該当者やその家族にとって極めて厳しい選択を強いられる結果となり、事件をおこした外国人だけでなく、その家族にとっても過酷な運用となっています。

例えば入管法第5条1項4号に該当する方の日本人配偶者の場合、家族が一緒に暮らすことを選択した場合は、日本人でありながら日本国内で家族一緒に暮らすことがかなわず、家族全員海外での暮らしを余儀なくされます。子供を日本の学校に通わせたい場合は海外と日本で家族が離れ離れとなり、普通の日本人家庭であればごく当たり前のことが当事者にとってはきわめて困難な選択となる恐れが生じます。

入管法五条一項は上陸拒否の該当事由を列挙していますが、この条文と対になる条文が入管法第五条の二(上陸特別拒否の特例)です。   

「法務大臣は、外国人について、前条第一項第四号、第五号、第七号、第九号又は第九号の二に該当する特定の事由がある場合であっても、当該外国人に第二六条第一項の規定により再入国の許可を与えた場合その他の法務省令で定める場合において、相当と認めるときは、法務省令で定めるところにより、当該事由のみによっては上陸を拒否しないとすることができる。」

仮に上陸拒否に該当する事由があったとしても、上陸を認める相当の理由があるときは、入管法五条に該当する事由のみをもって上陸を拒否しない、すなわち「相当の理由」があれば上陸を認める場合もあるということです。

では「相当の理由」とはどのような意味でしょうか?

法務大臣の裁決の特例としての上陸特別許可    

入管法第一二条第一、二、三項に該当する場合、入管法第七条一項四号で定める上陸の基準には適合しない場合でも上陸を特別に許可する場合があります。   

実務上多い類型として、入管法第十二条第三項の「その他法務大臣が特別に上陸を許可すべき事情があるとみとめるとき。」が挙げられます。

ここでの「特別に上陸を許可すべき事情」とは、家族の結合など、上陸を認めることが人道上の観点から配慮すべき場合です。

仮に無期限上陸拒否に該当する場合であっても、人道上特別な事情が認められれば、上陸(入国)が認められる余地はあるということです。

在留申請に人道上特別な事情があることを、在留資格認定証明書を通して入管に訴えていきます。

日本に滞在中に有罪判決を受けて日本への入国が拒否されている場合でも、特別に入国が認められることはあります。

 

上陸拒否を受けて日本への入国を拒否されている方や家族等、日本に入国できずに困っている方は、お一人で悩まずに弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の専用窓口(033-5989-0843)までご相談ください。

無料相談ご予約・お問い合わせ

 

 

ページの上部へ戻る

トップへ戻る

03-5989-0843電話番号リンク 問い合わせバナー