Aさんの息子は、家族滞在の資格で日本に滞在し、現在高校2年生です。お子さんは、バイク通学中、歩行者との間で交通事故を起こしてしまいました。
すぐに119番をし、救急搬送されたのですが、幸い被害者の方は全治1週間程度の軽いけがとのことでした。
このことで息子さんは何度か取り調べを受けています。
以上を前提として,
①息子さんが受ける手続きはどのようなものになるか
②①によって退去強制となることがあるか
以上の点について解説していきたいと思います。
このページの目次
⑴少年事件手続き
日本の刑事手続きにおいては、まずは20歳以上と20歳未満でその手続きが区別されます。
20歳以上は大人の手続きとなり罰を受けるのに対し、20歳未満の場合にはいったん少年手続きに進みます。
20歳未満の人が刑事事件を起こした場合には、全ての事件が家庭裁判所に送られることになっています。
この家庭裁判所の手続きでは、18歳、19歳の「特定少年」と、18歳未満の少年で再び区別されることになっています
特定少年でも、それ以外の少年でも、家庭裁判所で「検察官送致決定」というものを受けると、大人と同じ手続きに戻り、刑事罰を受けることになります。
これに対し、少年院送致、保護観察、児童自立支援施設送致、不処分等の決定は、いずれも刑事罰ではなく少年特有の保護処分という扱いとなります。
今回の息子さんの場合、高校2年生の年齢であれば、通常通り家庭裁判所に事件が送致されます。また、特定少年ではないと予想されるため、おそらく保護処分となることが予想されますが、
その程度は、これまでの前歴や、家庭環境、補導歴といった、事件以外の要素も考慮して決定されることとなっています。
交通事故の場合、18,19歳等であれば検察官送致されることも珍しくありません。
それは、「過失」という態様が、少年特有の問題を有していないケースが多いからです。
ただ、それ以下の年齢の場合や、過失の態様の中で要保護性をうかがわせるような事情がある場合には、通常通り,保護処分となると思われます。
⑵退去強制となるか
それでは、家庭裁判所の処分により退去強制となるかについて検討します。
入管法で、少年の退去強制事由を定めているのは、24条4号のトです。
同号は「少年法(昭和二十三年法律第百六十八号)に規定する少年で昭和二十六年十一月一日以後に長期三年を超える懲役又は禁錮に処せられたもの」と定められています。
長期3年を超える場合、執行猶予付きの判決とすることができませんので、3年を超える実刑判決を受けた場合ということになります。大人の場合には、1年以上の実刑(同号リ)で退去強制となるとされていることから比べると少年の方が退去強制とするための要件が厳しいと言えます。
いずれにしても、保護処分の場合、刑事罰ではありませんから、仮に3年以上少年院送致をされるようなことがあったとしても、これは退去強制事由には当たらないということになります。
ですので、この方の事件の場合には、退去強制となることは通常考えられないと判断してよいように思われます。
しかし、18歳や19歳でより悪質な態様で事故を起こし、被害者を死亡させてしまった場合には、危険運転致死罪が適用され、3年を超える実刑判決となる可能性があります。
ですので、交通事故だからといってすべての場合で退去強制とならないというわけではありません。
⑶弁護活動
交通事故は、大人であってもなんらかの刑罰が科される可能性のある犯罪です。また、事故に付随して他の違反(無免許や飲酒)があればより重い処分となります。
被害者への被害弁償はもちろん必要ですが、それだけではなく将来の在留資格更新を行ったり、お子さんの更生のためにも、専門の弁護士にご依頼ください。
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