不法就労助長罪は,「事業活動に関し,外国人に不法就労活動をさせた」場合に成立する犯罪です。
出入国管理法73条の2第1号の違反となり,3年以下の懲役又は300万円以下の罰金が定められています。
この,①事業活動に「関して」外国人を働かせていたかどうか,また,②事業主が外国人に仕事を「させた」かどうかが争われた裁判例があります。
参照する裁判例は,東京高等裁判所が平成6年11月14日に判決を言い渡した不法就労助長罪の事件です。
この事件は,スナックを経営していた日本人がスナック店内で外国人に売春をさせていたという事件です。被告人は,あくまでスナック従業員として雇っていた外国人が勝手に売春をしていた,従業員に対して不法就労を命令していない,として無罪を主張していましたが,東京高等裁判所はこれを認めず,被告人を有罪とした一審判決を維持しました。
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①事業に「関して」いるかどうか
「事業に関し」とは,運営・従事している事業のために必要な活動でなければ犯罪にならないとされています。
そのため,実際に雇い主が営んでいる事業と関係しない活動を,外国人が行ったとしても不法就労助長罪にはなりません。裁判例の被告人も,あくまで事業は「スナック」であったことを,外国人を雇っていたのも「スナックの従業員として」であることを主張していたようです。
ですが,この裁判例のスナックでは,
①外国人がスナック従業員として勤務しつつ,客との間で売春の合意ができた時には売春の対価のうち一部をスナックに支払っていたこと,
②売春のために店の外に出る時には店の了解が必要で店に断りなく売春をした場合には罰金が徴収されることになっていたこと
等の事実が認定され,看板としては「スナック」として経営されていたとしても,その実態は「売春スナック」であったから,事業に関して外国人を雇っていると判断されました。
この裁判例が「本件スナックが,正規の営業目的いかんにかかわらず」と述べているように,外国人を働かせている名目よりも,実質的にどんな業務に従事していたのかが判断の対象になります。
不法就労助長にあたらないように名目だけ適法な事業をさせていたとしても,従事していた業務の実質が判断されることになるので,外国人の雇い入れ時には注意しましょう。
②不法就労を「させた」かどうか
不法就労を「させた」といえるには,外国人を監督下において働かせたことを言うとされています。
そのため,外国人が全くの自由な判断で仕事をした場合には,不法就労助長罪とはなりません。
「外国人が『勝手に』働いていたのでは給料も支払われないのだから,そんな事態になるのはあり得ないのでは?」と思われる方がいるかもしれません。
しかし,ある事業主の下で外国人が働き,事業主からは給料が支払われなくとも,客から直接報酬が支払われるという業務であれば,そのような事態もあり得るのです。
先の裁判例においては,被告人が経営していたスナックで,外国人が売春行為をしたときに,客からの売春対価の一部が店舗に,残りが外国人の手元に残る形となっていました。そして東京高等裁判所は,不法就労をした外国人に対して,不法就労をさせた人が直接対価を支払っていなくても,犯罪は成立するとしています。
報酬を支払っていなくても,不法就労助長罪は成立するのです。
また,外国人従業員に対して不法就労することを業務として指示はしていないとしても,雇い主と従業員という上下関係があり,不法就労にあたる行為についての指導をしていたと証拠上認められたことから,不法就労を「させたといえる」と判断されました。
裁判例でみるべきポイント
具体的な事案での結論はそれぞれ異なる可能性があるので,「売春スナックだと不法就労助長になる」というロジックは正確ではありません。
一番重要なのは,「どのような要素から不法就労助長に該当すると判断されているか」という点です。
この裁判例からいえることは,不法就労助長罪が成立するかの判断で
①外国人が行った業務が,事業主が実質的に営んでいる業務なのかどうか
②「外国人に報酬を払っていない」というだけでは無罪にはならない,外国人の業務をどこまで是認していたか
が重要であるということです。
特に②については,事業主として作業場の管理が徹底していれば起きえない問題です。
管理が徹底していても,それでも外国人が不法就労をしていたということなのであれば(それだけ外国人が,巧妙に隠れて働いていた),『不法就労助長罪は成立しない』と争いやすくもなります。
外国人の雇用と不法就労助長罪について不安のある方は是非一度ご相談ください。