技能実習生が死体遺棄事件を起こしてしまった場合

【事例】
Aさんは技能実習生として,日本に在留する外国人です。
Aさんは。Bさんと知り合い,恋愛関係になったことから,Bさんとの間の子Cを妊娠しました。
しかし,Aさんは,技能実習生の友人から妊娠したり,出産すると解雇され,日本にいられなくなると聞かされたため,適切な産婦人科などへの通院をせず,結果的に死産をしてしまいました。
Aさんは死産しても,雇用先に報告せず,家の床下に3か月隠し続けました。
しかし,床下から,異臭がしていたことから,知り合いにCの死体を発見され,警察に通報され,Aさんは逮捕されました。
このような場合に,①どのような刑事処分を受けるか,②退去強制処分になるかについて解説していきます。

(1)どのような刑事処分を受けるのかについて

死産した後,胎児の遺体を放置し続けると,刑法190条の死体遺棄罪が成立します。
確かに,最高裁令和5年3月24日判決のように,約1日と9時間死産した遺体を段ボールに入れ,ガムテープで封をした事件について死体遺棄罪の成立を認めなかった事例はありますが,この事件は,①適切に葬らなかった時間が1日と9時間と短時間であること,②死体の梱包及び設置の状況に照らすと,死体の埋葬と相いれない行為を行っているということができないとして,無罪となっています。そのため,長時間埋葬しないことや死体を土に埋めるなどの死体の埋葬と相いれない行為については,死体遺棄罪が成立することになります。

報道:死体遺棄罪に問われた技能実習生に対して最高裁判所が無罪判決を言い渡した事案

死体遺棄罪で逮捕 執行猶予を目指す弁護活動

参考 死体遺棄罪で逮捕された場合の弁護活動について

今回のAさんの事件については,床下に3か月隠し続けており,適切に埋葬する意思が無いと推認されてしまうことから,死体遺棄罪が成立することになります。

このような,死体遺棄罪の量刑傾向については,多くの事件が殺人後の死体遺棄であったりする関係から,死体遺棄罪単独の量刑傾向を調べることは難しいのですが,①遺棄した死体の人数,②死体遺棄を続けていた期間,③バラバラ死体にするなど,死者に対する社会の宗教感情を害する程度が大きくないかなどによって判断されます。
①については,遺棄した死体の数が多ければ多いほど重く見られます。
②については,息を続けていた期間が長ければ長いほど重く見られます。
③については,バラバラ死体にするなどの事情があれば,重く見られます。
量刑傾向としては,死体遺棄罪単独であれば,執行猶予付きの有罪判決となる例が多いです。
しかし,殺人を行っているなどの事情がある場合や,バラバラ死体にして長期間死体を発見させないようにしていたなどの事情がある場合,実刑になる可能性があります。
今回のようなAさんのような事件の場合,遺棄した死体も1人分で,床下に遺棄し続けていた期間も3か月であり,バラバラ死体にするなどもしていないことから,概ね執行猶予付きの有罪判決となることが予想されます。

(2)退去強制になるかについて

技能実習生が妊娠,出産したという理由で退去強制になったり,職場から解雇されることはありません。
このことについては,出入国在留管理庁がホームページで公開しています。また,技能実習生が妊娠,出産したという事情で解雇した場合には職場が行政処分の対象になり得ることがかかれています。
そのため,入管法上の退去強制処分になるのかということが重要になります。
入管法24条4号の2には,永住等以外の在留資格について,一定の犯罪の場合で執行猶予付きであれ懲役刑を受けた場合には,退去強制処分になることが規定されていますが,入管法24条4号の2には,死体遺棄罪が含まれていません。
次に,入管法24条4号リの規定によれば,懲役1年以上の実刑判決を受けた場合に退去強制となる規定が問題となります。
そのため,死体遺棄罪によって,1年以上の実刑判決になった場合に入管法24条4号リの規定に基づいて退去強制処分となり得るということが言えます。
今回のAさんの事件ですと,執行猶予付きの有罪判決が予想されることから,この入管法24条4号リの規定に基づいて退去強制処分になることは考えにくいです。

(3)弁護士として出来ること

このような処分が予想されることから,弁護士としては,①死体遺棄罪のみであり,他の犯罪は成立しないことを主張して,殺人罪などの他の犯罪について不起訴とするように活動すること,②殺人罪が成立しないことなどから,死体遺棄罪の事件であり,執行猶予付きの有罪判決を求める活動をしていくことになります。
特に,死体遺棄罪に該当する事件を起こした場合,同時に殺人罪や保護責任者遺棄致死罪などの重い罪を疑われ,裁判員裁判などの重大な手続を経て判決が出る関係から,弁護士をつけることが大事になります。
そのため,死体遺棄罪に該当する事件に関わることになった場合には,迅速に弁護士に依頼することをお勧めします。

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