※このページにおける数値は,令和2年4月末時点で明らかになっているものを参照しています。最新の情報も確認してください。
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1 日本で働く外国人は増えたのか
厚生労働省が発表した統計によると,2019年10月時点での外国人労働者数は,7年連続で増加(過去最多を更新)し,165万8804人だったと発表しています。
そのうち,全体の約30%の外国人の方は「身分に基づく在留資格」によって在留しています。この「身分に基づく在留資格」とは,日本人の配偶者等,永住者,永住者の配偶者等,定住者の在留資格のことを指し,就労にあたって制限がない在留資格です。
また,全体の約20%の方が外国人の方が「技能実習」の在留資格によって在留しています。技能実習には1号から3号までがあり,日本における技能や技術を開発途上国に広めることを目的として,日本でOJT実習をするために認められる在留資格です。特に農業,建築業,漁業の分野での受け入れが広がっています。
この二つの在留資格が,日本における外国人労働者の約半分を占めていることになります。
一方,特に人手が不足しがちな介護の分野でも,2017年から「介護」の在留資格が認められるようになりました。2018年末に介護の在留資格の外国人は185人でしたが,2019年末には592人に倍増しており,今後も介護の分野への外国人労働力の流入が増えていくと考えられます。
2019年4月からは,さらに入管法が改正され,製造業などの特定の分野の人材不足解消に向けた在留資格として,「特定技能」という新しい在留資格も認められるようになりました。特定技能の在留資格の詳細については「就労ビザその2」の項もご参照ください。特定技能での外国人の受け入れについて,政府は当初,最初の1年で最大4万人以上の外国人を特定技能の在留資格で日本に受け入れる想定でしたが,2019年12月末時点では,特定技能で日本に在留する外国人の数は1621人にとどまっています。
日本で働く外国人の数は増加の一途をたどっており,在留資格の幅も広がっていますが,必ずしも,新しい在留資格ができたから外国人労働者が増えたというわけではないようです。
2 技能実習は多くて,特定技能が少ないのはなぜか
技能実習と特定技能は,よく似た名前をしていますが,全く別の在留資格です。
技能実習は開発途上国への技術支援が目的ですが,特定技能は既に一定の技術がある外国人を即戦力として日本側が受け入れるというものです。
そのため,技能実習の在留資格を取得する条件に特別な技術・能力は必要ありませんが,特定技能の在留資格を得るためには特定の産業分野での技能試験と日本語能力試験に合格する必要があります。特定技能の在留資格は,取得するために一定のハードルがあるので,外国人労働者数で占める割合がまだまだ少ないといえます。
ただ,将来的には,特定技能が活用されていくように思われます。今の時点で技能実習の在留資格の人が,特定技能の在留資格を取得する例が増えると予想されるからです。
技能実習2号(2年目,3年目の技能実習のための在留)を良好に終えた外国人は,特定技能の在留資格取得のための試験が一部または全部が免除されます。そのため,技能実習の方は特定技能への在留資格の変更が他の方よりも比較的容易になっています。
また,これまで,技能実習として在留できるのは最長5年まででしたが,特定技能の在留資格が認められたことにより,技能実習を終えた外国人の方が,「引き続き日本に在留し続ける」,という選択肢が広がりました。
2019年末時点で,技能実習2号の在留資格で日本に在留している外国人は約21万人でした。この全員が特定技能へ移行するわけではありませんが,多くの方が特定技能へ移行することが予想されています。
3 事業主としては特定技能の外国人を雇うか
技能実習と特定技能の在留資格は制度の成り立ちに違いがあるため,利用している外国人の人数に違いが生じており,特定技能の在留資格に殊更問題点があるわけでもありません。
特定技能の在留資格は,人材不足が深刻な業界においては,積極的に活用することで事業の継続を図ることができる制度です。
特定技能の在留資格の最大の特徴として,即戦力となる外国人を募ることができます。技能実習の場合,外国人が技能を習得することが目的であったため,技能習得と関係のない業務を行わせることはできませんでした。しかし,特定技能の場合,全体の業務量の半分までは他の日本人労働者が行っているのと同様の業務を行うことができます。
一方,特定技能の外国人を雇う場合には一定の条件もあります。過去に労働基準法の違反がないことや外国人の受け入れ支援体制が整っていること等が条件とされています。一企業で外国人の受け入れ態勢を作るのが難しい場合には,登録支援機構に受け入れ支援の業務を委託することもできます。
生産人口の減少に伴い,事業主としても積極的に外国人労働力を受け入れるかどうかの判断が迫られています。ご自身の事業内容が外国人を受け入れられるものなのか,受け入れるにあたって気を付けるべき点は何か,弁護士や社労士などの専門家と相談してみるとよいでしょう。