永住者ビザ(永住許可)

1 永住者の在留資格について

永住者とは,入管法22条で認められている在留資格で,法務大臣から永住許可を受けることによって取得できます。

まず,永住者の在留資格は,在留資格の「変更」のみ認められます。日本に初めて入国しようとする方が,いきなり永住者となることはできないのです。

永住者の在留資格は,在留資格の期限や活動内容には制限がないため,最も安定した在留資格と言えますが,その分他の在留資格よりも審査は厳格に行われることになりますし,条件も厳しくなっています。

永住者の在留資格へ変更する場合には,法律に定められた条件に適合しなければなりません。永住者へ在留資格を変更するときの条件とは,

  1. 素行の善良性
  2. 独立生計維持能力
  3. 日本国の利益に合うこと

です。

永住者として認められるための条件は法務省が「永住許可に関するガイドライン(2019年5月31日改定)」を公表していますので,これらも参考にされるとよいでしょう。

http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/nyukan_nyukan50.html

なお,日本人,永住者,特別永住者の配偶者又は子であるについては,3つの条件のうち,①と②を満たす必要はないとされています。

 

2 ①素行の善良性について

素行が善良であるとは,法律を守っていて社会から非難されるようなことのない生活を営んでいること,とされています。外国人であるからと言って日本人よりも特別行儀良くしていなければならないわけではなく,日本人と同程度にやましいところなく生活していればよいのです。近所トラブルや仕事の内容等といった抽象的なことから判断されるものではありません。

具体的には,日本での前科や前歴がないこと,納税や社会保険を支払っていること,暴力団などの反社会的な勢力に加入していないこと,これまで入管での手続きをきちんと行ってきたこと等から,素行が評価されます。

前科については全くないのが望ましいですが,前科があったとしても判決が出てからの期間や判決の内容によっては,永住許可がなされる場合もあります。車を運転する方の場合,交通違反歴が見られることもありますが,反則金で済む軽微な違反であれば大きな問題にはならないでしょう。

納税については,「過去5年分」の資料が必要になります。手元に書類がない場合には,弁護士などの専門家に相談して代わりに調べてもらうこともできます。

入管の手続きについても,これまできちんと行っていることが望ましいですが,あえて嘘を申告することはやめましょう。むしろ,手続きを忘れていたことや,これまでできていなかったことを正直に申告して,これからはきちんと行うという姿勢を示す方がよいでしょう。

このような要素を基にして,法律を守っていて社会から非難されるようなことのない生活をしているかどうかを判断します。具体的な基準があるわけではありませんが,一つ一つの事情をきちんと積み重ねて,永住許可申請することが肝心です。

 

3 ②独立生計維持能力

独立生計能力とは,日本で独立して生活することができるだけの資産や技能があることを言います。ガイドラインでは,日常生活が公共の負担にならず,将来にわたって安定した生活が見込まれることとされています。永住許可とは,期限を決めないで日本に在留することを認めるものですから,自分の力で日本での生活できなければ長期間の在留を認められないということです。

この場合でも,日本人以上に収入があるとか特別な資格を持っているということまでは必要ありません。

資産や技能については,永住許可申請をしようとする人が日本に滞在している期間や仕事の内容,世帯や家族構成なども考慮しながら判断することになります。そのため,生活保護などを受給している場合には独立生計維持能力が低いとされますが,世帯の状況や仕事の内容によっては認められることがあります。

 

4 ③日本国の利益に合うこと

日本国の利益に合う,とは,日本人に比べて殊更優れていることや,日本の経済や文化に大きな利益をもたらしている,ということまでは必要とされていません。一方で,法律上は明確な基準がありません。

ガイドラインなどによると,

A原則として10年以上日本に在留していて,かつ,そのうち5年以上は就労ビザか居住権をもって在留していること

B罰金刑や懲役刑を受けておらず,公的な義務を果たしていること

C現時点の在留資格が,最長の期間認められていること

D公衆衛生上の観点から有害とならないこと

とされています。

このうち,Aの「10年」という条件には特例があり,日本人,永住者または特別永住者の配偶者又は子は,Aの在留年数がより短くても永住者として認められます。定住者の場合には,「5年」以上在留していることとされています。その他,外交,社会,経済,文化(芸術や研究,教育,スポーツを含む)などの分野で日本に貢献していると認められる場合には,「5年」以上在留していることとされています。

また,「高度専門職」の在留資格で在留している方は,そのポイント数に応じて永住権が認められる年数が短くなっています。

日本で行ってきた活動によって永住権が認められるかどうか,個々の事情で異なることがあります。永住権への変更申請を検討されている方は,弁護士などの専門家とも相談しながら申請の手続きを進めるとよいでしょう。

 

5 永住申請の手続きについて

最も安定した在留資格である一方,条件も厳しい永住の在留資格ですが,申請にあたって気を付けなければならない点があります。

審査に時間がかかる,という点です。

永住許可の審査は,通常でも6か月以上がかかります。永住許可申請をしている間に,元々の在留資格の期限を迎えてしまうことも考えられます。申請の時期と在留期間はよく確認しておきましょう。

手続に不安がある方は,弁護士を代理人として,手続の取次ぎを任せることもできます。

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