
日本で生活する外国人が刑事事件を起こしてしまった場合、刑事手続きと入管手続きが別々に進むことを理解することが大切です。刑事事件が不起訴や執行猶予となっても、入管法に基づく審査は別に行われます。
このコラムでは、永住者の方が詐欺罪に問われた場合を例に、在留資格への影響や強制送還の危険性、再び日本に滞在するためのポイントを分かりやすく解説します。
1.外国人が刑事事件を起こした場合に問題になる2つの手続
刑法は「日本国内で罪を犯したすべての者」に適用されると定め、外国人も日本人と同じ刑事手続きに服します。
しかし外国人の場合、刑事手続きとは別に入管法上の手続きが進む点が特徴です。退去強制は行政処分であり、不起訴や執行猶予が付いた場合でも在留資格の更新が難しくなることがあります。このため、事件の結果が入管手続きにどう影響するかを早い段階で確認することが重要です
2.強制送還(退去強制)とは何か
退去強制とは、法務大臣が外国人の在留を認めないと判断したときに日本国外へ退去させる行政手続きです。
入管法24条は、無期または一年を超える拘禁刑の実刑に処せられた者をなど退去強制事由と規定し、この条文では執行猶予を受けた者が除外されています。
しかし、入管法別表第一の在留資格に該当する者が窃盗罪や詐欺罪など一定の罪で有罪となった場合、刑の期間や執行猶予の有無にかかわらず退去強制の対象とされます。一方、退去強制後の再入国は禁止期間が設けられており、初回は5年、再度の退去や逃亡者は10年、出国命令で出国した場合は1年と定められています。
3.刑事処分別に見る在留資格への影響
刑事処分の内容によって在留資格への影響は大きく異なります。
不起訴処分になれば在留資格は直ちに失われないものが多いですが、次回の更新審査では嫌疑をかけられた事実が考慮され、審査が厳しくなることがあります。罰金刑はそれだけで退去強制の対象とされているわけではありませんが、詐欺罪には罰金刑が規定されておらず、法定刑は十年以下の拘禁刑のみです。執行猶予付き判決や1年以下の実刑判決の場合、永住者・日本人の配偶者等・永住者の配偶者等・定住者の在留資格では退去強制事由に該当しませんが、就労系や留学などの在留資格では多くの犯罪で退去強制事由となります。一方、1年を超える実刑判決を受けると、すべての在留資格で退去強制事由となります。
別表第一の在留資格者は執行猶予判決でも退去強制となる可能性が高いことを理解しておきましょう。
4.在留資格の種類ごとの注意点
日本の在留資格は、身分や地位に基づく「身分系」と就労や活動内容に基づく「就労系」などに分けられます。
身分系には永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者が含まれ、職種に制限がないため比較的安定しています。これらの資格を持つ場合は、1年以下の実刑や執行猶予付き判決では退去強制事由に該当せず、仮に有罪の判決を受けた場合であっても在留資格の更新が認められる余地があります。
一方、就労系の資格(技術・人文知識・国際業務、技能実習など)や留学・家族滞在などは活動内容を理由として在留を許可されているため、詐欺罪など別表第一で列挙された犯罪で有罪判決を受けると、刑の長さや執行猶予の有無にかかわらず退去強制となり得ます。
自分の在留資格がどの分類に当たるかを確認し、刑事処分の見通しと合わせて対応することが重要です。
5.退去強制を回避・軽減するために重要なポイント
退去強制を避けるためには、不起訴処分を得ることや刑を軽減すること、勾留期間内に在留更新手続きを済ませることが効果的です。
特に外国人事件では住居不定や逃亡の懸念から勾留が長期化しやすいため、早期に弁護士が介入して被害者との示談を成立させることが有効とされています。示談交渉では被害者へ謝罪文を準備し、必要に応じて母国語で用意した訳文を添えるなど配慮が必要です。詐欺罪のような財産犯では被害弁償の程度が処分に大きく影響するため、家族や友人の支援を得ながら早めに示談金を準備することが望まれます。
6.刑事事件後に在留資格は再取得できるのか
退去強制処分を受けると、原則として5年間は日本への再入国が認められず、再度の退去や逃亡歴がある場合は10年間に延長されます。出国命令制度を利用した場合は再入国禁止期間が1年に短縮されますが、犯罪歴や退去強制事由が他にある場合には適用されません。また、言い渡された刑期が1年以下の場合の再入国禁止期間は5年ですが、1年を超える場合や薬物事件では再入国禁止が無期限となる例もあります。
退去強制の対象者でも、法務大臣の裁量で在留を認める「在留特別許可」があります。許可の判断では、家族関係や生活基盤、犯罪歴、被害弁償の有無などが総合的に考慮されます。
家族が日本に住んでいる場合や日本で生活を続ける必要性が高い場合には、専門家と協力して在留特別許可や上陸拒否期間短縮の申請を検討することが重要です。
7.外国人事件に強い弁護士へ早期に相談すべき理由(事務所紹介)
刑事事件と入管手続きは別々の制度ですが、結果は相互に影響します。早期に刑事事件に強い弁護士に相談し、処分の軽減を目指すことが退去強制を避ける最善の方法です。弁護士は捜査段階から証拠収集や示談交渉を行い、勾留中でも在留更新の手続きを進めるなど入管対応を視野に入れた活動を行います。
また、在留特別許可や再入国申請には専門的な知識と経験が必要であり、手続きに不備があると取り返しのつかない結果を招きかねません。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件と入管手続きに精通した弁護士がそろっており、無料相談を行っています。永住者の方やそのご家族が不安を抱えたときは、早めに専門家へ相談し、適切な対応で将来の在留への影響を最小限に抑えましょう。

