永住者が背任事件に関与した場合の在留資格と退去強制リスク

空港絶望

刑事手続と入管手続は別に進む

外国籍の方が日本で犯罪に関与すると、二つの手続が問題となります。

一つは警察・検察官・裁判所が扱う「刑事手続」。
もう一つは出入国在留管理庁が扱う退去強制(強制送還)等の「入管手続」で、刑事とは別個の行政手続です。

重要なのは、刑事で「不起訴」になった、あるいは「無罪」だったとしても、入管側が別の観点(在留審査、再入国審査、素行評価など)で不利益判断をする余地が残る点です。

【手続の進行イメージ(概略)】

事件発生
├─ 刑事:警察の捜査 →(逮捕)→ 検察官への送致 →(勾留)→ 起訴(公判/略式)/不起訴 →判決・処分確定

└─ 入管:情報把握 → 退去強制事由の該当性検討 →(収容・仮放免)→ 審査/口頭審理/異議→ 退去強制 or 在留特別許可(例外的に在留を認める)

この「別レーン構造」を前提に、通常は先に進行する刑事手続において、後の入管対応も見据えた刑事弁護を受けることが重要です。

退去強制とは何か

退去強制(強制送還)は、「退去強制事由」に該当する外国人について、法定手続を経て日本からの退去を強制できる制度です。

退去強制事由の中には、日本に在留する外国籍の方が刑事罰を受けた場合に該当し得るものがあります。
背任刑法247条)は財産犯罪の一類型で、法定刑は「5年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金」です。同じ性質の事件でも、入管上の結論は「どの在留資格か」と「どの刑事処分か」で大きく変わります。

処分別にみる影響

下表は、背任事件で典型的に起こり得る処分ごとに、永住者を中心に入管リスクを整理したものです。
退去強制(入管法24条)、上陸拒否(入管法5条)、永住許可の要件としての「素行善良」(入管法22条)を軸に整理しています。

刑事上の結論 永住者の在留資格 就労系・留学等(別表第一)の在留資格 共通の注意点(将来の在留手続)
不起訴(嫌疑なし/嫌疑不十分/起訴猶予等) 「有罪判決」を前提とする退去強制ルートには直結しない。 同左。ただし更新・変更の審査で素行・経緯が問われ得る。 「不起訴=完全に影響なし」とは言い切れない(後に影響することがあり得る)。
罰金刑 罰金では入管法24条4号リ(無期・1年超)に該当せず、判決確定だけでは退去強制事由にはならない。 罰金では24条4号リや24条4号の2(拘禁刑)に該当せず、判決確定だけでは退去強制事由にならないが、更新・変更で不利評価の可能性。 前科は重い検討要素になり得る。
執行猶予付き判決(拘禁刑だが刑務所には行かない) 刑に執行猶予が付く場合、退去強制事由から除外される取扱いが明示されている(24条4号リ)。 別表第一の在留資格で、刑法の一定章(背任を含む章)の罪により拘禁刑の判決を言い渡され確定すると、刑期や執行猶予の有無を問わず退去強制事由となる(24条4号の2)。 罰金より重い前科として重い検討要素になり得る。
実刑(拘禁刑で服役) 無期または1年を超える実刑は退去強制事由となる(24条4号リ)。 同様(加えて、別表第一の在留資格は永住者より退去強制事由となる判決の範囲が広い)。 退去強制事由に該当し、後は「在留特別許可(例外的に在留を認める)」の問題となる。

背任は刑法上「第三十七章(詐欺及び恐喝の罪)」に位置付けられています。
この章の罪は、永住者など“身分系”か、就労など“活動系”かで、同じ執行猶予付き判決だったとしても、退去強制事由にあたるか否かが大きく変わる点が重要ポイントです。

永住者が入管手続において被る不利益

有罪判決の確定により被る不利益についてですが、永住者は「在留期間の更新」が前提ではないため、一般の就労ビザなどのように“更新審査で落ちる”形では表に出にくい一方で、次の局面でリスクがあります。
第一に、退去強制手続に入るかどうか(入管法24条該当性)。
第二に、出国後に日本へ戻れるか(上陸拒否:同法5条)。

上陸拒否は「日本国又は日本国以外の国の法令に違反して、1年以上の拘禁刑又はこれに相当する刑に処せられたことのある者」(入管法5条1項4号)も対象にしており、この条文上は執行猶予の有無は関係ありません。
出国にあたって、在留期間満了前に日本に再入国するという前提で再入国の許可を得られた場合など、特例としてこの上陸拒否事由だけでは上陸を拒否されないこともありますが、再入国の許可を必ず取れるという保証はありませんし、他の事情も併せた総合考慮で上陸を拒否されることもあり得ます。

つまり、永住者が日本国内で退去強制に至らず在留を継続できたとしても、出国を伴う場面(仕事の海外出張、親族の葬儀など)で、再上陸がの可否が問題となる可能性があります。

退去強制を避ける・リスクを軽減するための実務ポイント

退去強制は「原則は退去、例外として在留特別許可」という構造で説明されることが多く、例外を狙うわけですから、在留特別許可を得るための積極要素を十分に主張立証するとともに、消極要素を過大に扱われないための主張立証もしっかりとすることが重要です。

背任事件では、刑事手続で重視されやすいのが「犯情(動機・経緯、行為の悪質性、被害結果)」と「被害の回復(示談等)」です。
こういった要素は、刑事手続だけでなく、在留特別許可の場面でも判断材料となり得ます。

また、在留特別許可の場面では「家族関係」「在留期間」「在留の必要性」「素行」「退去強制事由の内容」等が総合考慮され得ることが、ガイドラインで整理されています。
裁判例でも、在留特別許可は考慮要素の一つとして婚姻等が扱われるにとどまり、個別事情の積み上げが不可欠だと読み取れるものがあります。

退去強制後の再入国の壁

退去強制でいったん出国させられると、その後は「上陸拒否期間」との闘いになります。
たとえば退去強制歴がある場合、類型により「5年」「10年」といった上陸拒否期間が定められています。
また、出国命令(退去強制より軽い制度)で出国した場合は「1年」とされます。
ただし、これらの“年限”とは別に、「1年以上の拘禁刑に処せられたことがある」こと自体も上陸拒否事由になり得るため、単純に年数経過で簡単に日本に戻れると考えるのは危険です。

実際は、上陸拒否の特例(上陸拒否事由があっても、一定の場合に“その事由のみでは拒否しない”枠組み)が適用されることがありますが、この特例は法務大臣の裁量の範疇なので、上陸できるかの結果は読めないことも多いです。

早期に外国人事件に強い弁護士へ相談すべき理由

背任事件では、刑事手続においては、会社・取引先との関係、会計資料、職務権限の範囲など、争点が複雑化しやすいという難しさがあり、入管手続においては、刑事処分の結果と「どの在留資格か」によって退去強制事由にあたるかが変わります。

また、刑事弁護の“勝ち筋”(不起訴、略式罰金、執行猶予など)を狙う過程で、将来の在留・再入国に不利な事実認定や説明(供述調書、謝罪文の記載、弁償の形式など)を残してしまうと、後から修正が困難になることがあります。
とりわけ、就労などの別表第1の在留資格では「背任で執行猶予」でも退去強制に結び付く可能性があるため、早い段階から入管手続を見込んだ弁護方針が不可欠です。
永住者でも、国内で退去強制に至らなくても“出国後に戻れない”という形で生活基盤が揺らぐこともあり得ます。

「今後の在留については刑事が落ち着いたら考える」では遅い場面があります。

※本稿は2026年2月4日時点の公開資料に基づく一般的解説で、個別事案の結論を断定するものではありません。

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