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永住者が無免許運転で逮捕されたら:刑事弁護専門家への相談を

ケース紹介:永住者Aさんの無免許運転事件
日本に永住者の在留資格で暮らす外国人のAさんは、トラックドライバーとして働いていました。かつては運転免許証を持っていましたが、8年前に飲酒運転が発覚して罰金刑を受けた際に免許取消処分となっています。ところが、その後も仕事でトラックの運転を続けてしまいました。
6年前、Aさんは一時停止違反をきっかけに警察に停止を求められ、このとき無免許運転が発覚しました。その結果、懲役1年4か月・執行猶予5年の有罪判決を受けています。にもかかわらずAさんは反省せず、更に無免許での運転を続行。そして今年になって高速道路で「もらい事故」に遭い、駆けつけた警察官から免許証の提示を求められたことで無免許運転が再び発覚し、現行犯逮捕されてしまいました。
無免許運転の刑事罰と量刑の見通し
無免許運転(無免許での自動車運転)は日本の法律で刑事罰の対象となる重大な違反行為です。道路交通法の規定では、無免許運転をした場合「3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金」という厳しい法定刑が定められています。初犯であっても見逃されることはなく、正式な刑事処分を受ける可能性があります。
実際に科される刑罰の重さ(量刑)は、事件の具体的事情によって変わります。特に次のような点が量刑判断で考慮されます
• 運転の頻度: 無免許でどれだけ頻繁に車を運転していたか
頻繁で常習的であるほど悪質と判断され、刑が重くなりがちです
• 運転を続けていた期間: 免許を失ってからどれくらい長期間にわたり無免許運転をしていたか
期間が長いほど反省がないとみられ、不利になります。
• 同種の前科の有無: 過去に無免許運転や飲酒運転など類似の違反で処罰された前科があるか
前科がある場合、処分は回を重ねるごとに重くなるのが通常です。特に前回執行猶予だった場合、再犯時には実刑となる可能性が高まります。
• 反省・謝罪の行動: 被害者の有無にかかわらず、反省の意思を示す行動を取っているか。
例えば、無事故でも交通安全に関する団体へ寄付を行うなど謝罪・贖罪の意思表示があれば、多少は有利な情状として考慮される場合があります。
量刑の傾向として、前科のない初犯の無免許運転なら罰金刑で済むことが多いですが、繰り返している場合は執行猶予付き判決、さらに重なると実刑(刑務所での服役)が選択される傾向があります。
実際、Aさんのように過去に2度の前科(飲酒運転による罰金刑と、無免許運転による執行猶予付き判決)があるケースでは、今回3度目の発覚では処分は一層重くなるでしょう。前回の執行猶予期間自体は既に経過していますが、それでも今回は執行猶予の付かない実刑判決が下される可能性が高いと考えられます。予想される刑期は、同種事例の傾向から見て、適切な弁護活動を行えば、6か月から10か月程度の拘禁刑になる見通しです。実刑となれば刑務所で服役しなければならず、Aさんは長期間にわたり社会から隔離されることになります。
強制送還(退去強制)される可能性はあるか?
外国人の方が刑事事件で有罪判決を受けた場合、「退去強制処分(いわゆる強制送還)」になるかどうかも大きな懸念点です。とくに永住者であっても、一定の重大な犯罪で有罪となれば日本からの退去を強制される可能性があります。
入管法(出入国管理及び難民認定法)24条4号リの規定では、「無期もしくは1年を超える拘禁刑の実刑判決」を受けた場合に退去強制事由に該当すると定められています。簡単に言えば、「実刑で1年を超える刑」が確定すると原則として強制送還対象になるということです。ただし執行猶予付き判決(刑が全部猶予)であれば直ちに強制送還とはなりません(一部執行猶予の場合も、猶予されず服役する部分が1年以下であれば強制送還の対象外です)。
今回のAさんのケースでは、適切な弁護活動を行えば、前述のとおり見込まれる刑期は1年未満(6~10か月程度)です。そのため入管法上の強制退去事由には該当しないと考えられます。つまり、有罪判決を受けてもその刑罰だけで直ちに強制送還になる可能性は低いでしょう。永住者という在留資格は期限の定めがなく更新の必要もありませんから、刑期が終わった後もAさんは引き続き日本に在留できる見込みです。
なお、今回の無免許運転が前回の執行猶予期間中に行われていた場合については、注意が必要です。
この場合、新たな無免許運転について有罪判決を受けると、前回の執行猶予が取り消され、猶予されていた刑の執行が開始される可能性があります。
ここで重要なのは、入管法上の退去強制事由の判断方法です。
入管法24条4号リが定める「無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者」に該当するかどうかは、事件ごとに宣告された刑の内容によって判断されるのであり、執行猶予が取り消された結果、複数の刑期を合算して1年を超えるかどうかで判断されるものではありません。
したがって、仮に前回の執行猶予が取り消され、
• 前の事件について、懲役刑1年4か月が課され
• 今回の事件について、例えば拘禁刑8か月の実刑が言い渡された
という場合、服役期間は「2年2か月」と「1年を超える」ことになりますが、今回の事件における宣告刑が「8か月」、即ち「1年以下」である限り、入管法24条4号リの退去強制事由に該当することにはなりません。
もっとも、前回の事件について宣告された刑自体が、結果として「1年を超える実刑」となった以上、その前回判決の確定時点で既に退去強制事由に該当し得る立場にあったこと、また、同種の犯罪を重ねているという事実が入管実務上きわめて不利に評価されることには注意が必要です。
実際には、退去強制該当性の有無とは別に、在留資格更新の可否などに重大な悪影響を及ぼす可能性が高いといえます。
いずれにせよ、執行猶予中の再犯や、複数回にわたる無免許運転は、刑事面・入管面の双方で極めてリスクが高い状況を招きます。刑事責任の見通しだけでなく、在留資格への影響を正確に見据えたうえで、早期に専門家へ相談することが不可欠です。
刑事弁護の専門家に依頼することの重要性
以上のように、無免許運転を繰り返したAさんは実刑の危機に直面しており、場合によっては1年以上の実刑判決を受けるなど、在留資格にも重大な影響が及ぶ可能性があります。このような状況では、できるだけ早期に刑事弁護に詳しい弁護士(刑事弁護人)に相談・依頼することが極めて重要です。
経験豊富な弁護士であれば、まず適切な情状弁護活動を通じて少しでも刑を軽くできるよう尽力してくれます。具体的には、取調べに対するアドバイスや、反省を示すための措置について提案してくれるでしょう。
例えばAさんの場合、繰り返し無免許運転をしていた点は不利ですが、弁護士の助言に従い二度と運転しない誓いを立てて職を転換することや、交通違反防止活動への寄付を行うことなど、反省の姿勢を示す行動を取れば裁判所の心証が幾分か良くなる可能性があります。弁護士はこうした有利な事情を的確に裁判所へ伝え、執行猶予付き判決の獲得や刑期の減軽を目指して働きかけてくれます。
また、Aさんのように逮捕・勾留されてしまった場合には、身柄解放に向けた働きかけも弁護士の重要な役割です。弁護士は検察や裁判所に対して「逃亡や証拠隠滅のおそれが低い」ことを主張し、勾留を認めないよう求めたり、早期に保釈を請求したりできます。実際、今回の事例では無免許である事実関係は争いようがなく証拠隠滅の心配は小さいと思われます。弁護士が付けば、勾留の必要性が低いことを説得的に示し、一日も早くAさんが身柄の拘束から解放されるよう手続きを取ってくれるでしょう。
さらに、仮に刑事裁判の結果によって入管法上の強制退去手続きが問題となる場合(例えば実刑が1年を超えてしまった場合など)には、弁護士は在留特別許可の取得に向けた対応についてもアドバイスできます。在留特別許可とは、強制送還事由に該当する外国人であっても情状しだいで法務大臣の裁量により日本に残留を認めてもらう制度です。永住者として日本に長年住み、家族も日本にいるような場合にはこの許可が下りる余地を探ることになりますが、そのためには刑事手続と並行して入管当局への働きかけや資料準備が必要です。刑事弁護に強い弁護士であれば、こうした入管手続きにも精通した専門家と連携し、できる限りの手を尽くしてくれるはずです。
外国人の方が日本で刑事事件を起こしてしまった場合、自分だけで事態に対応するのは非常に困難です。言葉の問題や法制度への不案内もあり、不利な状況を招きかねません。Aさんのように前科があるケースであればなおさら一刻を争います。早期に専門の弁護士に相談し、適切な対策を講じることで、刑事処分の軽減や在留資格への影響最小化を目指すことができます。ご本人が日本語での対応に不安がある場合は、周囲のご家族やご友人がサポートして速やかに弁護士に連絡を取ることも検討してください。状況が深刻化する前にプロの力を借りることで、将来への悪影響を可能な限り減らすことができるでしょう。
結論として、無免許運転のような刑事事件を起こしてしまった永住者の外国人の方は、一日でも早く刑事弁護の専門家へ相談されることを強くお勧めいたします。専門家のサポートを受けることで、有利な事情を最大限に汲み取った弁護活動がなされ、処分の軽減や日本での生活の保全につながる可能性が高まります。困ったときこそ一人で悩まず、ぜひ専門家に頼ってください。安心して再出発を図るためにも、迅速な行動が肝心です。

