【事例】
Aさんは,永住資格を有するB国出身者です。
Aさんは,地元の花火大会でビールを飲み,酒に酔い,女性をナンパしていたところ,近くで見ていた男性Vから「嫌がってるだろ」と止められたため,「俺が女おとすのに何か文句あるのか」と怒り,男性を1度殴り,全治2週間のけがを与えてしまいました。
なお,Aさんには前科はありません。
このとき,
①Aさんが受ける刑事罰はどのようなものになるのか
②①の刑事罰により退去強制処分になるのか
以上の点について解説していきます。
このページの目次
(1)傷害罪の刑事罰
AさんはVを殴りけがをさせているため,刑法204条の「傷害」行為に該当します。
刑法204条の傷害罪の法定刑は,15年以下の懲役刑又は50万円以下の罰金です。
傷害罪の具体的な刑罰の重さを決める際には,①傷害の態様,②傷害行為によって生じた傷害の程度,③示談の有無などによって判断されます。
①については,殴った回数が多いなどの事情があれば,刑が重くなります。
②については,傷害行為によって発生したけがの程度が重ければ重いほど刑が重くなります。
③については,示談を行うなどして被害回復を行えば,罪を軽くする事情になります。
今回のAさんの事例ですと,殴った回数も一度と多数回殴っているというものではなく,傷害の程度も全治2週間のけがと比較的軽いけがです。
示談などの被害弁償については行っているか不明ですが,弁護士と契約して被害弁償を行うことができれば,Aさんにとって有利な事情になります。
そのため,Aさんの事件については,被害弁償が済んだ場合,不起訴で終わる可能性が高くなり,被害弁償が済んでいなくとも罰金で終わる可能性の高い事件であるということができます。
(2)退去強制になるのか
それでは,Aさんがこのような事件により退去強制になるのか検討していきます。
永住者の退去強制で主に問題になる条文は,入管法24条4号リの規定です。
入管法24条4号リには,「昭和26年11月1日以後に無期又は1年を超える懲役若しくは禁錮に処された者。ただし,刑の全部の執行猶予の言渡しを受けた者及び刑の一部の執行猶予の言渡しを受けた者であってそのうち執行が猶予されなかった部分の期間が一年以下のものを除く。」と規定されています。
これに該当する場合には,永住者であっても退去強制の対象になります。
しかし,今回の事件は,Aさんにとって,初犯であることから,悪くて執行猶予,罰金になることが予定される事件です。なので,すぐに退去強制になるという可能性は低いです。
在留期間更新の際には,前科が存在することについては不利益にみられるため,前科があることによって,在留期間更新の申請の際に困るということが考えられます。
(3)弁護活動
そのため,弁護活動としては,①Aさんと被害者との間で示談を行うこと,②Aさんの犯行態様が悪質ではなく,犯罪の結果も重大なものではないことから,不起訴処分を求めるということが考えられます。
①の弁護活動をしてもらいたい場合,弁護士をつけるとスムーズですし,相手も示談をする方向で態度を変えることがあります。
②の弁護活動をしてもらう場合でも,取調べに当たってのアドバイスを弁護士から受けることによって,取調べに適切に対処することができるようになり,より重い刑罰が下されることを阻止することができます。
また,このように,不起訴を得ると,永住権などの在留資格への悪影響も防止できますので,軽微な事件であっても弁護士をつけることをお勧めします。
永住者の方で刑事事件を起こしてしまい不安があるという方,ご心配な方は弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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