永住者の不同意わいせつ事件と退去強制の可能性

(事例)
両親が外国籍であるものの、日本で生まれ育ったAさんは、永住権を保有した状態で日本国内で生活していました。
ある日おAさんは、通行中の女性の背後から忍び寄り、押し倒して胸を触るなどのわいせつ行為をしました。この件で、後日Aさんが逮捕されてしまいました。

このとき,
①Aさんが受ける刑事罰はどのようなものになるか
②①の刑事罰により、Aさんは退去強制処分となるか
以上の点について解説していきたいと思います。

⑴不同意わいせつの刑事罰

Aさんは、通行中の女性に対してわいせつな行為をしています。
このような場合には怪我などが無ければ不同意わいせつ罪が成立します。

参考;不同意わいせつ罪が成立する場合

不同意わいせつ罪の法定刑は、6月以上10年以下の懲役と極めて重い罪となっています。
これほど重い罪の不同意わいせつ罪ですが、具体的な刑期は、行為態様、被害の程度や被害者の処罰感情などを元に決定します。
Aさんの場合、一般的な不同意わいせつではありますが、そもそもが重い罪ですから、少なくとも公判請求をされ、何らかの刑罰を受けることが予想されます。

⑵退去強制となるか

永住者の資格は、入管法の別表第2に記載されている資格です。そのため、入管法24条4号の2の適用はありませんから、執行猶予でも直ちに退去強制となるわけではありません。
しかし、別表第2に記載された資格であっても、入管法24条4号リの適用はありますから、無期又は1年以上の懲役(実刑判決)に処せられた場合には退去強制となります。

退去強制(強制送還)について

先程述べた通り、不同意わいせつは極めて重い罪ですから、1年以上の懲役の判決を受ける可能性はあります。
ですので、このままいけばAさんは退去強制となる可能性もあります。

⑶弁護活動

さて、先述の通り、不同意わいせつ罪で刑事罰を受けてしまうと、退去強制となり、日本国内に留まれない可能性高いことを指摘しました。
このような場合、何とか日本国内に留まりたいというようなときは、被害者の方と示談を行うことが考えられます。
検察庁は、全ての刑事事件について起訴をし、刑事処分を求めるのではなく、被害者の意向等の事情を踏まえ、一定の事件を起訴猶予(不起訴)としています。
最終的な処分を決定する際、被害者の方がどの程度処罰意向を持っておられるか、被害回復がなされたかどうかは大きな考慮要素となります。
出来る限り刑事処分を軽減するためにも、被害者の方との示談交渉は不可欠です。

いずれにしても、不同意わいせつ事件が発生した場合、警察はほぼ確実に犯人を逮捕します。
逮捕されると、引き続いて勾留となりますが、逮捕・勾留期間を併せても最大23日間しか捜査期間はありません。
そして、勾留期限の最終日に検察官は起訴不起訴を決定しますから、どのような弁護活動を行うとしてもそれほど時間はありません。

在留資格をお持ちの方が強盗致傷で逮捕された場合には、速やかに弁護士に依頼をし、適切な弁護活動を受ける必要があります。

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