「永住者の配偶者等」のビザで傷害事件を起こしてしまった場合

Aさんは,永住資格を持つBさんと,永住資格を持つCさんとの間に生まれた子であることから,永住者の配偶者等の在留資格で日本に在留していました。
大学を卒業するあたりで永住資格への変更をしようと考えている状況にあります。

Aさんが大学に行く途中,迷惑系ユーチューバーVに絡まれ,「○○大学の学生に,学歴コンプレックスについてきています,××大学に入れなかったことをどう思いますか?」と言われながらカメラを向けられたことから,「撮るんじゃない」と言い,カメラを持つ手を一回払いのけたところ,Vの腕を怪我させてしまいました(全治1週間のけが)。

以上を前提として,
①Aさんが受ける刑事罰はどのような物か,
②①の刑事罰によってAさんには在留資格に関してどのような不利益が生じるか
以上の点について解説していきたいと思います。

傷害罪の刑事罰

Aさんが,Vの腕を払いのけ,ケガさせたとすると,人の身体を傷害したとして,傷害罪が成立します。
刑法204条には,傷害罪の法定刑として,15年以下の懲役,又は50万円以下の罰金が規定されています。

傷害罪の具体的な刑罰を決める際には,①けがの程度,②執拗な態様のものであったのか,③そのような行為に出るやむを得ないような事情があるのか,④示談が成立したかということが大きな考慮要素となります。

①けがの程度については,ケガが大きければ大きいほど,重く見られます。
②障害行為に及ぶ態様が執拗であれば執拗であるほど重く見られます。
③正当防衛状況などではないにしても,何かを守る目的があるとか,何らかの暴行に及ぶことがやむを得ないと見られるような状況であると判断される場合,軽く見られます。
④示談が成立し,被害届の取下げ等が行われた場合には,軽く見られます。
今回のAさんの事例ですと,ケガの程度も全治1週間と軽く,態様も一回腕を払いのけるもので執拗なものではありません。また,動画の撮影をやめさせるために行っていることから,なんらかの暴行に及ぶことはやむを得ないと言えるような状況にあります。
示談は成立していない状況ですが,示談をすることも考えられます。
このような事情があることから,仮に起訴されるとしても,傷害罪の中でも軽い部類に属する事件として扱われ,罰金での起訴が予想されるという状況にあると考えられます。
そのため,示談などが成立することにより,不起訴をねらったり,行為態様が悪いとはいえないことを主張して,起訴猶予による不起訴をねらうことも考えられます。

在留資格への影響はあるか

まず,退去強制になる可能性ですが,永住者の配偶者等の在留資格は,入管法24条4号の2の対象でないこと,入管法24条4号リの1年以上の実刑になる可能性が低いことから,退去強制となる可能性は低いです。

永住者の配偶者の資格から,永住者への切り替えをする場合,入管法22条2項但書により,素行不良要件はありません。しかし,現実的には,刑罰を受けたことは無いかが考慮されるため,永住者への切り替えには,支障が生じます。
そのため,傷害罪による前科は無い方が望ましいです。

弁護活動

傷害罪によって前科が付いてしまった場合,後々の手続き上も不利益が予定されていることから,弁護士としては,退去強制のおそれを除去するために,不起訴をねらっていくことが求められます。
不起訴をねらう弁護活動として出来ることとしては,①示談を成立させて,起訴猶予による不起訴をねらう,②事件が軽微であることを主張して不起訴をねらうことが考えられます。

①の示談を成立させるというのは,個人で行うのは困難ですので,弁護士に依頼しなければなりません。弁護士が代理人となって事件の相手方を示談交渉を行います。
これによって,不起訴をねらい,入管との関係でも不利益にならないよう手助けを行うことができます。

②仮に示談交渉がうまくいかず,不成立に終わってしまったとしても,前科が無い,暴行に及ぶ何らかのやむを得ないような事情がある等といった点から,事案が軽微であり,起訴する必要が無いことを主張して,検察官と交渉し,不起訴処分を得られる可能性があります。
但し,このように,示談をせずに不起訴処分を得ることを目指すとしても,取調べにおけるアドバイスや,検察官との交渉をする必要があることから,弁護士をつけ,アドバイスや,交渉を行ってもらうべきです。

外国人の方で刑事事件でお困りの方,家族や友人が逮捕・勾留されてしまったという方は,速やかにご相談ください。

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